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特集:New Leaders2025

明治大学・平翔太主将 7年ぶり日本一へ守備重視 最後まで隙を見せず「完遂」めざす

明治大学の102代目主将となったCTB平翔太。突破力とプレースキックが武器だ(すべて撮影・斉藤健仁)

大学選手権で常に上位に進出しながら2018年度を最後に日本一から遠ざかっているのが、紫紺のジャージーで名高い明治大学ラグビー部だ。今季こそ王座奪還を目指すチームにあって、102代目の主将を任されたのが、突破力が武器でプレースキックも正確なCTB平翔太(4年、東福岡)だ。

「日本一にふさわしいチームを全員で創る」

大学選手権で優勝した帝京大学に1月2日の準決勝で26-34と敗れた明治大。2月、新チームが始動し、新4年生の話し合いの末に、今季の主将にCTB平が推された。この代には、もともと「こいつがキャプテンだ」という選手がいなかったという。4年生全員で話し合う中で、平は「自分の番が回ってくる前に、僕の名前が結構、出ていました」と振り返った。

小中高とキャプテン経験はなかったが、大学2年からAチームで主力として試合に出続けていた平は、いずれかのリーダーになる覚悟はできた上で、同期とのミーティングに臨んでいた。そして、「チームメートに『やってほしい』と言われたので、僕がやります」という感じで同期に伝えた。

副将も、やはり話し合いの末に、主将候補に名前が挙がっていたFL楠田知己(4年、東海大大阪仰星)とFL利川桐生(4年、大阪桐蔭)の2人が就いた。

小中高とキャプテン経験はなかったが、新4年生の話し合いの結果、主将に就任した

就任5年目を迎える神鳥裕之監督は、平が主将に就いたことに驚きはなかったという。「3年生の中盤からラグビーだけでなく、チームをまとめる発言などが目立ってきて成長してきた。思いのほかしっかりしゃべることができますし、まずはしっかりラグビーでパフォーマンスを出して引っ張ってほしい」と期待を寄せた。

平主将本人に目指すキャプテン像を聞くと、「今までのキャプテンも話し上手というより、プレー面で引っ張ってきた選手が多かったので、僕も常に試合に出続けたい。そして、日本一にふさわしいチームを全員で創るために、責任と覚悟を持ってチームの先頭に立ち続けたい」と意気込んだ。

東福岡で花園3年連続ベスト4

福岡市出身の平。姉と2人きょうだいだが、両親も含めて誰もラグビーはやっていなかったという。保育園時代の友人の父の勧めで、小学校1年から福岡・笹丘ラグビークラブで競技を始めた。3歳から水泳をやっていたほか、小学校6年間は学校のチームでサッカーもやっていたが、小学校3年ごろには「ぶつかるのが楽しかった」と、ほぼラグビーに専念していた。

中学からは筑紫丘ラグビークラブジュニアスクールに移った。ずっとSOをやっていたというが、中学3年時にスクールの福岡県代表に選ばれた際、SOに、後に東福岡でチームメートとなる楢本幹志朗(現・筑波大学、4年)がいたことで、平はCTBに回った。なお、福岡県代表は全国ジュニアラグビー大会・第1ブロックで優勝し、平は優秀選手にも選出された。

高校は、「小学生の頃から行きたいとずっと言っていました」という東福岡に進学した。ラグビーを始めたときから花園3連覇を達成するなど強豪だったモスグリーンのジャージーに「めちゃくちゃ憧れていました!」。

花園でトライを挙げた平。3年連続でベスト4となった

東福岡では1年から控え選手として「花園」こと全国高校ラグビー大会に出場し、2年、3年は楢本とともに中軸として躍動した。春の選抜大会こそ優勝したが、花園では3年連続ベスト4止まりで、惜しくも日本一になることはかなわなかった。

大学は、「中学3年の時に日本一になった姿を見て『格好いいな!』と思った」という明治大に進学を決めた。また、プレースタイルが似ていると感じていた、スクール・東福岡の先輩で、明治大でプレーしていたCTB/WTB森勇登(現・ブレイブルーパス東芝)への憧れもあったという。

伸び悩んだ大学1年 U20代表での海外遠征で覚醒

2022年に上京して入学したが、出だしでつまずいてしまう。フィジカルの差や、周りの選手のコミュニケーション能力の高さなどにすぐに適応することはできなかった。また、コロナ禍の影響も大きく、入寮は遅れ、夏休みには実家に戻った時期もあった。「1年時はずっとルビコン(C、Dチーム)で、C戦のリザーブとかでしか出場できなかった」

秋になると、ルビコンで淡々と練習していたが右足首をケガしてしまい、練習に参加できない時期も。高校までずっと主力として試合に出ていた平は、メンタル的に下がってしまい、夜、独りでグラウンドに行って泣いた日もあった。

大学1年では出だしでつまづき、メンタル的に下がった時期もあった

しかし、そんな平の大学ラグビー生活を一転させたできごとがあった。大学のAチームの公式戦に出場していなかったにもかかわらず、U20日本代表候補に選出されたのだ。高校時代からずっと平に注目していた栗原徹コーチ(元・慶應義塾大学ヘッドコーチ、現・浦安D-Rocksコーチ)に見いだされたという。

「U20日本代表候補に選ばれたことは、だいぶ(メンタル的に)持ち直すきっかけになりました」。候補合宿を経て、大学2年の5月にはU20日本代表を中心としたジュニア・ジャパンの一員としてサモア遠征に参加。さらに6月からU20日本代表として南アフリカで開催されたU20年代の世界大会にも出場。1勝もできなかったものの、平は中心選手の一人としてU20ニュージーランド代表などの強豪とも対戦した。

「海外遠征を通して、U20日本代表で良い経験ができたことが、明治大でも生かせる部分もあった。本当に栗原さんには感謝しています」

昨年12月の早明戦で入場する平

状況判断力向上・U23選出「将来は日本代表めざす」

U20日本代表から明治大に戻るとペガサス(A・Bチーム)の練習に参加できるようになり、CTBのレギュラーとして試合に出場。3年となった昨季はラインブレーカー、プレースキッカーとしてBKの中軸となり、得点ランキングでは2位に入るなど飛躍の時期を迎えた。

なぜ昨季、ラインブレークの数が増えたのか。平に聞くと「経験だと思いますが、例えば一つ前のプレーでゲインしたら、次の場面でどこにゲインしたら良いかとか、ちょっとわかるようになってきた」と、状況判断、予測する力がついたことを理由に挙げた。

3年となった昨季はプレースキッカーとなった。関東対抗戦の得点ランキングでは2位に

さらに今年、日本代表のエディー・ジョーンズHCが肝いりで始めたJTS(ジャパン・タレント・スコッド)プログラム合宿のメンバーにも選出され、4月にはU23日本代表として豪州遠征に参加する。エディーさんにはよく個人的に話しかけられ、「昨季のプレースキックの成功率は80%くらいだったから、85%にしないとダメだよ」「スペースを見つける能力にたけているが、しっかりスクエアになってパスをもらわないと」などとアドバイスをもらっている。

もちろん平は、「U20日本代表、そして今回U23日本代表に選ばれたので、その上のカテゴリーである日本代表を次の目標として目指していきたい」と、さらに先を見据えている。

JTS合宿に参加した平。U23代表に選ばれ、「日本代表を次の目標として目指していきたい」

ライバルは早稲田の野中健吾主将

平が特別に意識している選手がいる。それは早稲田大のキャプテンに就いたCTB野中健吾(4年、東海大大阪仰星)だ。中学3年時の全国大会も福岡代表対大阪府スクール選抜で対面(トイメン)として対戦し、高校進学後、花園でも2年時の準々決勝、3年時の準決勝で対面として相対して、昨年の早明戦でも対面で競い合った仲だ。

「中学3年生の頃からずっと対面で対戦しています。U20日本代表もいっしょに選ばれたので、仲が良いです。今季、早稲田と明治でキャプテン同士になったのですが、昨季は(野中)健吾に(対抗戦の)得点王を取られたので、今季はずば抜けて得点王を狙いに行きたい」

平の座右の銘は、「報われるまで努力しろ」。サッカーのアルゼンチン代表の名FWリオネル・メッシの言葉だという。趣味は筋肉トレーニングだ。現在ベンチプレスは120kgを連続で6回上げることができる。体重は90kgと、ラーメンを気にせず食べていた高校時代とさほど変わっていないが、筋肉量が増えて、体脂肪率は13%へと大きく減少し、着ているもののサイズも大きく変わった。

座右の銘は、メッシの言葉「報われるまで努力しろ」。メッシのように、今季はずば抜けた得点王を狙う

日本一へ「ラグビーをみんなで探求していく」

今季の明治大ラグビー部のスローガンは、4年生で話し合って「完遂」と掲げた。「ラグビー面では一つひとつのプレーに最後まで隙を見せずやりきる。生活では寮生活の徹底というのを目指しています。チームでも個人でもやり切るというメンタリティーがつくと思って『完遂』にしました」

今季の明治大はどういったラグビーを目指すのか。平主将は「一昨季、昨季と、私生活の面ですこしだらしない部分があった。そういう部分を変えないと日本一は取れないかな。アタック力はみんな持っていますが、どんなに点を取っても相手に取られたら変わらないので、相手よりも1点でも多く上回るために、ディフェンスメインで春からやっていきたい」と語気を強めた。

ファンにメッセージをお願いすると、平主将は「もちろん、目標は日本一です。ずっと、準優勝、ベスト4など優勝圏内にいると思いますが、7年間、日本一から遠ざかっている。オフザボールなど、ちょっとしたことが足りないと思うのでそこを4年生中心になって追求しながら、ラグビーをみんなで探求していきたい」とまっすぐ前を向いた。

平がキャプテンとして、紫紺のジャージーをパフォーマンスで引っ張り、対抗戦の得点王に輝いた先にはきっと日本一が待っている。

今年の部のスローガンは「完遂」。「チームでも個人でもやり切るというメンタリティーがつくと思って」

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