明治大・田島貫太郎 4年で開花した重戦車の要 197cmの長身で空中戦を支配する
今季もいよいよラグビーの大学選手権が本格的に始まった。12月21日、22日はシード校も出場する準々決勝4試合が行われる。関東大学対抗戦で昨季王者の帝京大学(28-48)、早稲田大学(24-27)に連敗して3位となった、昨季大学選手権準優勝の明治大学ラグビー部は、「奪還」のスローガンを掲げて、今季最後の大会に臨んでいる。負けたら終わりの3回戦で難敵・東海大学(関東リーグ戦3位)と激突したチームを、いつもより大きな声で引っ張ったのが、LO田島貫太郎(4年、東福岡)だ。
リーダー陣欠いた東海大戦で奮闘
キャプテンのNO8木戸大士郎(常翔学園)、副将のCTB秋濱悠太(桐蔭学園)、寮長のLO佐藤大地(國學院栃木)ら4年生のリーダー陣を脳振盪(しんとう)などの影響で欠き、先発15人中4年生は4人だけだったが、1、2年生中心の若きBK陣が躍動して50-17で快勝。天理大学(関西1位)の待つ準々決勝へ駒を進めた。
LO田島は快勝にも表情を崩すことなく、「結果的に勝ったことは良かったが、ラインアウトで競られたり、スローイングのミスもあったりした。これからは一つのミスが勝敗のキーとなる。細かいところを天理大戦までに修正したい。そして結果良ければすべて良しなので、大学生活の最後で勝てるものなら勝って優勝したい」と先を見据えた。
身長197cmの長身を生かしたラインアウトなど空中戦が最大の武器だ。ラインアウトのコーラー(サインを出す選手)を務める田島について、神鳥裕之監督は「大学はけがで1年出遅れて体作りに時間がかかったが、ようやく昨季くらいから大学ラグビーで戦える体になった。ラインアウトの要なので、最後までFWを引っ張っていってほしい」と期待を寄せた。
小学生ではBK、東福岡3年でLOのレギュラー
福岡市出身。父・幸太(ゆきひろ)さんは小倉東高、福岡大学、サニックスで活躍したLOで、現在も福岡大学ラグビー部でFWコーチを務めている。ただ、父からラグビーを強制されたことはなく、小学校3年のとき、同級生から誘われて春日リトルラガーズで競技を始めた。当初はCTBやFBなどBKでプレーしていた。
小学生のときは、当時サニックスに在籍した元オールブラックスのLOブラッド・ソーンが好きで、サインをもらったり写真を撮ってもらったりしたことで、よりラグビーが好きになった。中学生になるとFWへ転向、そのままスクールで競技を続けたが、目立った成績は残せなかった。
高校は「つながりや縁があって」父の福岡大学の後輩である藤田雄一郎監督が指揮を執る全国的強豪の東福岡に進学した。身長は170cmに満たなかったが、最初からLOだったという。
高校入学前後から身長は一気に伸びた。ただ1、2年時はレギュラーになることはかなわず、190cmを超えた3年時にやっと先発の座をつかんだ。「花園」こと全国高校ラグビー大会は、準決勝で京都成章(京都)に負けた。
今でもラインアウトは父にアドバイスをもらうこともあるという。「高校時代、僕が一番身長は高かったので、自分がなんとかしなきゃいけないという気持ちがあり、ラインアウトに関しての意欲、関心が上がりましたね」
大学ではけがで出遅れ 4年で先発に定着
大学は、高校1年のころ、SH福田健太(現・東京サントリーサンゴリアス)がキャプテンを務めた明治大が日本一になった姿を見たこと、そしてジャージーがスクールと同じ紺白の段柄だったことから明治大を志望した。ただ花園で負傷した左肩を手術したことなどにより、半年間ほどはリハビリ生活を余儀なくされ、大学1年時はCチームの試合に出るのがやっとだった。
2年時の春の「早明戦」でやっと、控えから紫紺デビューを飾った。その年の対抗戦は19番をつけて4試合に出場した。3年時は、誕生日が2月と早生まれだったことから、U20日本代表として世界の強豪と対戦し経験を積むことができたが、対抗戦では先発として出場することはかなわなかった。
4年になってやっと春からコンスタントに「4」番を背負うことができるようになり、対抗戦2戦目から大学選手権初戦の3回戦まで7試合連続で先発し、チームには欠くことができない存在となっている。
エディー・ジョーンズHCから「田島、もっと太れ!」
高校時代、ベンチプレスは100kgを挙げることができなかったが、現在は130kgほど挙げられるようになった。体重も15kgほど増えて100kgを超えている。今年4月に将来の日本代表を育成する「ジャパンタレントスコッド」合宿に招聘(しょうへい)され、5月末には日本代表候補合宿にも参加。日本代表を率いるエディー・ジョーンズHCに「田島、もっと太れ!」と言われた。
試合に出るとどうしても毎回3~4kgほど体重が落ちてしまい、シーズン中はそれを戻すのがやっとだという。田島は「今も体重を増やすことが第一優先ですが、ある程度試合に出ることができるようになり、いろんな積み重ねがあって、ちょっとずつ自信がついてきたかな」と振り返った。
メンバーが大きく替わった今季、チームとして大きな転機となったのは8月の夏合宿で筑波大学(31-35)、天理大学(28-29)に敗戦したことだった。「僕だけじゃなくみんな気づいたと思うんですが、(今季の明治大は)弱いんだって、もっとやらないといけないって」
そこからコーチ陣と選手が話し合いながら、トライアンドエラーで調子を上げていき、早稲田大戦、東海大戦のパフォーマンスにつながったというわけだ。田島も「試合ごとに課題が出るので、次の週に修正し、毎試合、本当に良くなってきているので自信になっている」と胸を張った。
今季負けた3校と3連戦の可能性 リベンジ狙う
田島は、卒業後はリーグワン・ディビジョン1の強豪チームで競技を続ける。リラックス方法は映画やドラマを見ること。好きな言葉は、所属したスクールのモットーでもある「前進」だ。
田島をはじめとした4年生は、残りは多くても3試合となった。12月22日に夏の合宿で逆転負けした天理大に勝つと、準決勝、決勝と対抗戦で敗れた帝京大、早稲田大と対戦する可能性があり、チーム内では「良いリベンジになる!」とモチベーションは高まっている。
大学生の最後の大会に向けて、LO田島は「今季の明治大のFWは弱いと言われているんですが、やっぱりFWが前に出ないとBKが前に出られない。FWが前に出てBKがトライを取るところを見てほしい。個人としてはラインアウトで相手に嫌だなと思わせたい」と腕をぶした。
昨季は大学選手権決勝への出場がかなわなかった田島だが、今季はFWの大黒柱の一人として大きく成長を遂げた。ラインアウト、そしてモールの中軸として、決勝の舞台に紫紺の「4」番を背負って立ち、「奪還」を成し遂げたい。