ラグビー

特集:縦と横のコントラスト 第100回早明戦

明治大学副将・秋濱悠太 日本一『奪還』へまず明早戦 アタックの形に成長の手応え

明治大副将のCTB秋濱。神鳥監督は「秋濱は特別。当たり前のことが徹底でき、一貫性があるのが長所」と評価する(すべて撮影・斉藤健仁)

いよいよ12月1日、東京・国立競技場にて関東大学ラグビー対抗戦の伝統の一戦、100回目の「早明戦」を迎える。そこで臙脂(えんじ)、紫紺の両チームの副キャプテンに話を聞いた。11月17日、王者・帝京大学との対戦に28-48で敗れ5勝1敗となった明治大学。開幕から6連勝の勝ち点36で首位に立つ早稲田大学との早明戦に快勝する以外、優勝の可能性はなくなったが、何としても白星を挙げてライバルに意地を見せたいところだ。

縦と横のコントラスト 第100回早明戦

木戸主将を補佐 タレントそろうBK陣を統率

明治大の副将は、1年時からスキルと状況判断にたけたBKとして活躍するCTB秋濱悠太(4年、桐蔭学園)が務めている。身長174cm、体重84kg。帝京大に負けはしたが、夏合宿から1試合1試合チームは成長を続けており、秋濱は「対抗戦に入ってから、チーム全員で、自分たちのアタックの形が見えてきている」と手応えを口にした。

神鳥裕之監督は「明治大は良いBKがたくさんいるよねと言われますが、秋濱は特別で、タレントのそろうBK陣を引っ張ってくれている。スペシャルな能力ではなく、当たり前のことが徹底できる、パフォーマンスに一貫性があるのが長所です」と信頼を置いている。

筑波大戦での秋濱。WTB・FBだったが、3年になった昨年からアウトサイドCTBでプレーしている

秋濱は大学2年まではWTB、FBのバックスリーが主戦場だった。創部100周年だった昨季は、惜しくも大学選手権準優勝だったが、秋濱はアウトサイドCTBでプレーするようになった。「昨季は10番、12番、15番がスキルフルな選手だったので、自由にアタックさせてもらって慣れることができた。ただ(昨季の)決勝は少し形にこだわり過ぎて、天候や相手のディフェンスに対応できなかった」と悔しそうな表情で振り返った。

新チームになり、4年生の話し合いですぐにリーダー陣が決まったという。副将となった秋濱は、「キャプテンの大士郎(木戸、4年、常翔学園)が結構、しっかりと言葉で伝えるタイプなので、そこをカバーするために、いろんなところに気を使って全体的に見ることを意識しています。また声でチームを引っ張れない分、愚直にプレーしていこうかなと思ってやってきました」と力を込めた。

木戸主将(左)と。主将を補佐し、全体的に見ることや愚直なプレーを意識している

早慶帝の現主将らとともに「高校3冠」を達成

秋濱の父は日体大、オンワードで活躍したアメリカンフットボール選手だったという。後に保善高校でプレーした兄が先に東京・練馬ラグビースクールで競技を始めており、その影響で4歳ごろから楕円(だえん)球の道へと進んだ。

中学時代は部活動で週5回、バスケットボールに熱中したが、親から「ラグビーを優先しろ」と言われて、週1回はラグビーを続けた。後に桐蔭学園高校で同級生となるSH伊藤光希、SO中優人(ともに4年、立教大)、WTB榎本拓真(4年、青山学院大)らと東京都スクール選抜でも活躍した。

高校進学時、「花園には行きたかった」ため、東京の私立の強豪へ進学しようと考えていたが、チームメートや、関東大会の決勝で対戦した神奈川スクール選抜の選手たちと相談する中で、「誰かが桐蔭学園に決めて、みんなで行こうという感じになりました」。秋濱も家から少し遠かったが、神奈川の強豪・桐蔭学園に進学を決めた。

花園の準決勝。右を走るのは慶應の中山主将

桐蔭学園では1年からAチームで活動していたが、けがもあり、高校1年時は花園出場はかなわなかった。2年時は主にバックスリーでレギュラーとなり、NO8佐藤健次(4年、早稲田大学主将)、LO/FB青木恵斗(4年、帝京大学主将)、HO中山大暉(4年、慶應義塾大学主将)らとともに、「高校3冠」を達成した。

さらにコロナ禍だった高校3年時も副キャプテンとして、花園連覇に貢献した。「高校時代はバックスリーのキックやキック処理など基礎的な部分が伸びたと思いますし、パスのタイミングなどCTBをやっている今にも生きている。高3の花園は大会に入ってからチームがグッと伸びたので、思い出に残っています」と目を細めた。

大学は、唯一練習に参加したことがあり、中学時代からワセダクラブのアカデミーで仲が良かった高校の先輩CTB石塚勝己(現・クリタウォーターガッシュ昭島)らが進学していた明治大を選んだ。

花園の表彰式後の写真撮影。中央に秋濱と佐藤(早大主将)。矢崎、粟飯原(ともに早大)、小山田(法大)の姿も

日本代表候補合宿に参加、さらなる成長

明治大では大学1、2年時はWTB・FB、そして昨シーズンからCTBとして躍動を続け、新チームで副将となった秋濱は、オフシーズンから忙しい日々を送ることになった。

まず2月には、大学生ながら日本代表候補合宿に参加した。「副将としてチームから離れる不安もありましたが、神鳥監督から絶対プラスになるから行ってこいと言われました」。FLリーチ・マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)、NO8姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)ら、日本を代表する選手といっしょに練習した。

4月には、U20日本代表選手とジュニア・ジャパンの一員として「パシフィックチャレンジ」に参戦し、優勝に寄与した。5月末には再び日本代表候補合宿に参加し、ワールドカップに出場した日本代表選手やリーグワンの主力の外国人選手といっしょに汗を流した。

「(日本代表の)エディー(・ジョーンズHC)さんは、昨季の大学選手権の準決勝や決勝を見て呼んでくれたのかな。アタックは良いから、ディフェンスやキックオプションなどを見たいと言われました。(代表活動に参加して)良い刺激になりましたし、絶対、関わらないだろう選手と仲良くなれました。強度の高い試合や練習をさせていただいて、プレーする判断の余裕が出てきた」

U20の合宿に参加したたオーバーエイジの4人。中央左が秋濱

帝京大戦の敗戦を踏まえ、100戦目の明早戦へ

今季、夏合宿でけがをして開幕戦こそ出場できなかったが、その後の5試合は13番としての出場を続けている。秋濱に自身の強みを聞くと「これといった強みがないと思っているが、いろんなポジションでプレーすることができること、一貫性があることは強みだと思っています。仲間を生かすプレーや自分がキャリーする判断は、これからの試合でも出していきたい」と話した。好きな言葉は「何事も楽しむ」。来春からはリーグワンでラグビーを続ける予定だ。

100回目の明早戦に向けて、「自分たちのラグビーを信じてやれば、結果はついてくる。早稲田大との試合は100回目ですが、あくまでも日本一が目標で、それにつながる1試合だと思っています。今季、本当に毎試合、毎試合、成長できていると思うので、帝京大戦の反省を踏まえて早稲田大に挑みたい」とキッパリと言った。

最後に、明治大のファンにどんなところを見てほしいかと聞くと、秋濱副将は「BKに若い選手が多いですが、一人ひとりがユーティリティーでスキルが高いので、そういったところを生かした多彩なアタックを見てほしい。また『奪還』という目標を自分たちで決めたので、残り少ない試合で1試合1試合成長して、勝ち切ることも大事だが、しっかり楽しんでやっていきたい」と笑顔を見せた。

今季、日本代表候補に選ばれ、成長の跡を見せている副将のCTB秋濱。紫紺のBK陣をしっかりリードして、ライバルとの100回目の対戦で勝利し、日本一「奪還」へ大きな弾みをつけたい。

秋濱副将は「残り少ない試合で1試合1試合成長して、しっかり楽しんでやっていきたい」と話す

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