早稲田大・佐藤健次主将 「強い早稲田を取り戻そう」チームに生まれた勝利への貪欲さ
早稲田大学ラグビー蹴球部の第107代主将、佐藤健次(4年、桐蔭学園)。高校時代には常勝軍団を率い全国大会2連覇を達成し、世代を代表する選手として注目を集めてきた。早大に進学後も、その期待を背負いながら最前線で活躍してきたが、日本一の夢にはあと一歩届かない3年間を過ごしてきた。迎えたラストシーズン。日本一達成のため絶対に負けることのできない早明戦に挑む。名門を率いる主将として、全てを懸ける宿敵との一戦の先に、佐藤が見据える頂点とは。
「主将として、芯をぶらさないことを意識した」
―主将就任が決まった時に率直に感じたことを教えてください。
キャプテンになる前からこのチームをプレー面とかで引っ張っていくのは僕とまあ(宮尾昌典副将、4年、京都成章)だなと思っていたので、特別なことは思わなかったです。僕は伊藤大祐さん(前主将、現・コベルコ神戸スティーラーズ)とすごく仲良くさせてもらってて、大祐さんを優勝させられなかったことの方がメンタル的につらくて、自分たちは絶対優勝してやろうっていう気持ちは強かったです。
―主将就任時に、今の早大に必要なものはなんだと考えていましたか?
自信とプライドです。今までも帝京とか明治とかと比べても遜色ないポテンシャルを持っている選手はいたんですけど、その選手たちがいざ対戦するってなった時に急に自分のプレーをできなくなって、相手にのまれてしまうみたいな、そういうのがすごい顕著に表れていました。それはあんまり良くないチームの傾向だと思っていたので、まずそこを取り戻すために「強い早稲田を取り戻そう」っていうのをずっとシーズンの最初の方から言っていました。
―それを踏まえて、主将として意識していることはありますか?
僕が芯をぶらさないことです。早稲田はラグビーに対する違う考え方を持っている人間がたくさんいるので、自分の芯をぶらさずにやっていこうというのは、キャプテン始めてからずっと思ったことなので、そこだけはぶらさないようにしています。
―主将として佐藤選手にできることはなんだと思いますか?
とりあえず頑張ることしかできないなと思ってました。すごく抽象的ですけど、もう自分が一番頑張って、自分が一番試合でも体を張って、練習でも一番最後まで練習して、とりあえず頑張ろうっていうのはずっと思ってました。
―高校時代も主将を務めていましたが、違う部分はありますか?
チームの環境も違いますね。高校時代はチームをまとめるのもどちらかといえば簡単で、全員がラグビーにフルコミットしてやっていたので、僕は特に何もしなくても、チームとしてうまくいってたのかなと思います。早稲田という他の大学とはちょっと違った環境の中で、キャプテンの立場から言うと少し難しいなって思うこともあります。
ただ高校時代は結構頑張ろうとしちゃって、一人で抱えてしまったりとかも多かったんですが、大学はうまくできてるかなと思います。高校時代に失敗した反省がうまく生かせてると思います。
「歴代主将と比べると、自分は明るさが強み」
―佐藤選手が思う早稲田の主将というのはどんな存在ですか?
威厳があって、チームで一番頑張ってて、ちょっと堅苦しいイメージがありますね。
―ご自身の主将としてのイメージはいかがですか?
僕はあんまり早稲田のキャプテンっぽくないです。僕の中の早稲田の主将ってやっぱりすごい人たちで、直接見てきた人で言うと、長田さん(智希、現・埼玉パナソニックワイルドナイツ)から大祐さんなんですけど、やっぱみんな本当に素晴らしいプレーヤーだし、すごく優しさもあるけど、厳しさをしっかり持っていて、人としてしっかりしていて、そういうイメージが強いです。僕は多分そうはなれないですが、自分なりに頑張っていこうかなと思ってます。
―歴代の主将たちと比べて自分にしかない強みは何だと思いますか?
多分バカみたいに明るいです。ラグビーを単純にすごく楽しんでるので。いいのか悪いのかわからないですが、コミュニケーションは取りやすいかなと思います。
―主将としてチームを引っ張っていく意識や、自覚はありますか?
あんまりないかもしれないです。今も。チーム引っ張ってるっていう感覚はあまりないですね。結構リーダーシップがあると言われるんですが、全くそんなことなくて、いろんな人に助けてもらいながら、精いっぱい頑張ってます。仕切ってるっていうよりか、ただ一生懸命自分のこと頑張ってるみたいなイメージの方が強いかもしれないです。
―主将を務めたことによってご自身の中で変わった部分や成長したと感じるところはありますか?
結構いろんなところを見れるようになったのかなと思います。いろんな考えを持っている選手がいて、僕は今まで我が道を行くスタイルでしたが、ちょっとずつ周りは見れるようになってきたのかなと思います。それはこれからの選手活動でも生かせるものだと思います。
「全員が優勝を信じ、今を全力で頑張れば、日本一が取れる」
―過去3年間と今年のチームはどのようなところが違いますか?
主体的に自分たちで取り組んでるのはすごくあると思うので、その点が違いかなと思います。
―下のカテゴリーを含めて、現在のチーム全体に対する印象はいかがですか?
「勝つのが当たり前な雰囲気」になりつつあります。勝ち癖ってすごくあると思うんですよ。僕は。やっぱり勝負ってそんな甘くなくて、春シーズンからずっとしんどいゲームも勝ちにこだわり続けてきたチームだからこそ、いざ本当にしんどい試合になった時に今まで通りの、自分のプレーができると僕は思っているので、それを春シーズンにずっと意識した結果、秋もジュニアはすごくいい結果を残していると思うし、全員に勝ちに対する貪欲(どんよく)さ、負けちゃいけないという意識が浸透して、それがいい方向に進んでるのかなと思います。
―「勝つのが当たり前の雰囲気」というのは、やはり桐蔭学園時代に経験したものですか?
そうですね。僕が目指しているのは桐蔭時代の感覚で。あの時は花園でも、自分たちにすごい自信があって、それは自分たちがおごってるわけじゃなくて、今までやってきたことに対する自信がすごくあったので、決勝で自分たちがその状態になっていたいと思います。
―そういった雰囲気にかなり近づいていますか?
まだまだですね。まだ詰めが甘いところがあるので。まだまだ成長できるところはありますけど、まあどんどん近づいてきているとは思います。
―今の早稲田が日本一を取るために必要なものは何ですか?
全員が本当に優勝できると思い続けることと、優勝するために今をもっともっと全力で頑張ることですかね。やっぱまだ甘いところがある選手がいたり、真剣になりきれてない選手がいるので。
―現時点ではご自身の中で日本一への自信はお持ちですか?
リーダーが思ってないと多分誰も思えないので、僕は言い続けてます。「優勝できる」と。あとなにかわからない自信と言うのもあると思います。僕は個人的にずっと優勝できるなと思っています。
「応援して下さった方々のため、いい形で終わりたい」
―最後に残りのシーズンへの意気込みとファンの皆さんへメッセージをお願いします。
早稲田のファンの方の前でプレーできる機会も少なくなってきた中で、今まで応援していただいた期待とか思いとかに対して、ラストワンシーズンに、プレーとして全部出せればいいなと思います。また強い早稲田を取り戻すうえで、やっぱりファンの方々の応援というのは僕らにもすごく力になりますし、今まで3年間、しんどいシーズンも見届けて応援してくださった方々に、最後いい形で終われればいいなと思います。
―ありがとうございました!