陸上・駅伝

特集:ACN エキスポ駅伝 2025

ACN エキスポ駅伝で國學院大は、ハーフ60分台の4人が軸「来年度も強いんだぞ」

左から國學院大の上原琉翔、青木瑠郁、野中恒亨、辻原輝(撮影・藤井みさ)

大学と実業団のトップチームが競い合う「大阪・関西万博開催記念 ACN EXPO EKIDEN 2025」(ACN エキスポ駅伝)が3月16日、万博記念公園から夢洲の7区間、54.5kmで開かれる。大学の注目校の一つが、國學院大學だ。2月に香川県丸亀市で行われた日本学生ハーフマラソン選手権大会では、4人が1時間0分台の好記録をマークした。それでも、選手たちに浮かれた様子はない。上級生の背中に下級生が食らいつき、下級生からの突き上げに上級生が奮起する――。そんな好循環が生まれているようだ。

辻原輝「0分台にまとめられた」

学生ハーフで1時間0分54秒をマークした野中恒亨(2年、浜松工業)は、レースを振り返って言う。「僕はこのタイムがすごく強いとは思っていないです。もっといけたんじゃないかという悔しさもあるし、まだまだです」。併催された香川丸亀国際ハーフマラソンで、実業団の選手らが従来の日本記録(1時間0分00秒)切りを目指していることを聞いた野中は「学生ハーフは自分が荒らしてやる」と、スタート直後から果敢に前方でレースを進めた。

「(実業団選手がいる中で)学生が(先頭に)行っちゃったら、面白いと思ってもらえるかなって」。最初の10kmを28分08秒で通過した。ただ、15~20kmのラップタイムは14分56秒と粘りきれなかった。「後半の失速がひどかったので、まだまだ伸びなきゃいけない」

「学生ハーフは自分が荒らしてやる」と丸亀でのレースを振り返った野中

1時間0分51秒だった辻原輝(2年、藤沢翔陵)も、決してこのタイムには満足していないようだ。「正直状態が良くなかった中でのレースで、『0分台が出せた』というよりは『0分台にまとめられた』というレースだったかなと思います」

2人には「壁」になってくれる憧れの先輩がいる。新主将の上原琉翔(3年、北山)と副主将の青木瑠郁(3年、健大高崎)だ。学生ハーフでは上原が1時間0分30秒、青木が1時間0分47秒と、後輩にきっちりと意地を示した。

野中は、上原についてこう語る。「何本も一緒にレースを走らせてもらって、『勝てるかな』って思いつつ、あとちょっとのところで勝てないっていうレースがほぼ全部。そんな中でも、すべての後輩に優しく接してくれますし、『俺がやるからついて来いよ』みたいな感じで引っ張ってくれるので安心してついていける理想のキャプテン」。一方、辻原は青木への対抗心を隠さない。「瑠郁さんとは1年生の時からレースがかぶることが多いんですけど、まだ1回も勝ったことがない。ずっと瑠郁さんに勝ちたいと思っていて、早くしないと卒業しちゃうので今年は絶対勝ちたいと思って頑張っています」

辻原は1時間0分台の好タイムにも、決して満足はしていない

上級生と下級生が切磋琢磨する伝統

そんな後輩たちの姿に、先輩も誇らしげだ。上原は「本当にいい刺激、プレッシャーを与えてくれているので、自分も瑠郁も負けていられないですし、本当に頼もしいっていう言葉だけです」と感謝する。青木も「『また負けちゃいました』みたいな感じで言ってくるんですけど、いつもギリギリで……。毎回レース前はハラハラしてるんですけど、なんとか卒業するまで勝ちたいとは思っています」と笑う。

主将として新年度のチームを引っ張る上原

青木自身も、「先輩の壁」が成長の原動力だった。「平林さんから、『後輩が倒したいと思ってくれるから強くなれた』と言ってもらったことがあるんです。僕は『平林さんを倒すんだ』と思って強くなってきた。だから、そういう背中を見せられるような先輩であり続けたいと思っています」

青木が憧れ続けてきた大エース、平林清澄(4年、美方)はこの春で卒業する。ACN エキスポ駅伝のエントリーメンバーには名を連ねているが、2月に別府大分毎日マラソンを走ったダメージもあり、出走の可能性は未知数。ただ、上級生と下級生が切磋琢磨(せっさたくま)する良き伝統は、しっかりと継承されている。

前田康弘監督は、大黒柱の平林が抜けることで「むしろチームが強くなる」と予想している。「これは学生スポーツの良いところかもしれないですけど、やっぱり(3年生以下は)『平林がいたから強かった』って言われたくないんですよ。だから、上原たちは今すごく頑張って、学年(としての力)がグッと上がってきている」

「平林さんを倒すんだ、と思って強くなってきた」と語る青木

前田康弘監督「今年は國學院にとって大事な年」

前田監督が引き合いに出すのは、駒澤大学の選手時代の経験だ。1学年上には、当時の学生長距離界のエース、藤田敦史さん(現・駒澤大監督)がいた。前田監督が3年生の時、ラストイヤーだった藤田さんを擁して出雲駅伝と全日本大学駅伝を制したが、箱根駅伝の初優勝には届かなかった。翌年、最上級生として主将になったのが前田監督だった。「やっぱり、僕らも藤田さんが抜けたから弱くなったって言われたくないので、必死こいてやって、箱根駅伝で初優勝したんですよ。だから、そういう意味でも、今年はすごく國學院大にとって大事な年なんです」

青木も言う。「平林さんの代から自分たちの代に変わって『弱くなるんじゃないか』と言われることになるとは思うんです。でも、『そんなことないんだぞ』ということを見せられるのが、今回のエキスポ駅伝の場だと思っています。この駅伝で自分たち4人が好走することで、『来年度の國學院もやっぱり強いんだぞ』と見せたいですし、それを原動力にみんながエキスポ駅伝に向かって調子を上げているんじゃないかなと思います」

丸亀で残した好結果をエキスポ駅伝につなげていく(撮影・井上翔太)

学生ハーフで1時間0分台を出した4人は、順調ならいずれもACN エキスポ駅伝に出走する見込みで、「本気度」も高い。正月の箱根駅伝で後塵(こうじん)を拝した青山学院大学と駒澤大への雪辱はもちろん、実業団チームをも上回るポテンシャルを秘めた新生・國學院大の継走が楽しみだ。

【ACN エキスポ駅伝チームエントリー】大学編 國學院大・平林清澄、青山学院大・鶴川正也
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