今季は大舞台で力を発揮されている城西大学女子駅伝部 チームワークで駅伝表彰台を!
今週の「M高史の陸上まるかじり」は城西大学女子駅伝部さんのお話です。
昨年度は全日本大学女子駅伝4位入賞、富士山女子駅伝6位入賞。今年の関東インカレでは10000mで出場した3人が全員入賞、5000mで2人入賞と勢いがあります。「今年は駅伝で表彰台を!」と意気込む城西大学の皆さんに取材させていただきました。
選手との対話を重視する赤羽周平監督
城西大学女子駅伝部は1989年に創部しました。全日本大学女子駅伝では過去に優勝2回(1998年、2000年)、準優勝3回を含む29年連続で出場中。富士山女子駅伝の正式名称である全日本大学女子選抜駅伝は、富士山開催よりも前の第1回大会から連続出場しており、大学女子駅伝界で常に挑戦を続けてきたチームです。
2018年に城西大学の卒業生である赤羽周平監督、赤羽有紀子コーチが就任。夫婦二人三脚で監督、コーチというスタイルは珍しいですよね。現役時代からタッグを組まれていたお二人。赤羽有紀子コーチは現役時代に北京オリンピック日本代表、大邱世界陸上マラソン5位入賞など、世界を舞台に活躍されてきました。5000m15分27秒89(1999年に樹立)は城西大学記録です。「早く更新してほしいですね」と選手に期待を込めて笑顔でお話しされていました。
全日本大学女子駅伝、富士山女子駅伝では5年連続入賞中。今年は3月の日本学生女子ハーフマラソンで金子陽向選手(3年、川崎市立橘)が7位入賞を果たすと、5月の関東インカレでは10000mで髙橋葵選手(3年、日体大柏)が2位(33分29秒22)、白木ひなの選手(2年、山田)が5位(33分34秒01)、金子選手が6位(33分34秒79)と3人全員が入賞。5000mでも本澤美桜選手(1年、日体大柏)が5位(16分01秒13)、石川苺選手(2年、旭川龍谷)が7位(16分02秒65)入賞。9位の兼子心晴選手(3年、浜松市立)も入賞まであと一歩というところまで迫りました。
続く、6月の日本学生個人選手権では石川選手が5000mで7位入賞。U20日本選手権女子5000mでは本澤選手が5位に入賞しました。今シーズン、城西大学の選手の皆さんは大舞台で力を発揮している選手が目立ちます。
監督就任7年目の赤羽周平監督は選手との対話を重視しています。「毎日必ず一人ずつ話を聞いて、しっかり話をするので時間がかかってしまうんですよ(笑)」と笑いますが、ご自身がマネージャー出身ということもあってか、きめ細かいコミュニケーションを大切にされていました。
それとともに大切にしているのが日々のコンディショニングです。パルスオキシメーターというSPO2(酸素飽和度)や脈を測定できる機械で、日々数値を記録し、グラフにしていきます。グラフだと、コンディションの変化などがわかりやすいそうです。選手の皆さんはアスリートとしての感覚的なものに加えて、科学的な根拠も大切にし、毎日のコンディションに努めているんですね。
補強・ポイント練習・パワーマックスに参加!
練習にも参加させていただきました。今回は試合が近いメンバーもいて1グループ。通常は細かくグループを分けて行うことが多く、1グループでの練習は珍しいそうです。「できる限り選手の練習をしっかり見たいので、時間をずらして行います。そのためずっとグラウンドにいることが多いですね」と赤羽監督。
事前にポイント練習と伺っていましたので、M高史も練習に向けて意気込んでいたところ、まずは走る前の補強トレーニングから始まりました。ポイント練習前ということで普段より軽めとのことですが……。開始早々、僕は悶絶(もんぜつ)しておりました。選手の皆さんがマネージャーさんのカウントに合わせて淡々とこなしていく姿を横目に、どうにかこうにか回数を重ねました。
ジョグの日はもっとみっちり補強をされるそうです。城西大学女子駅伝部では補強が全部で80種目もあり、練習メニューや選手それぞれの課題などに合わせて取り組んでいます。
入ったばかりの1年生はなかなかできない選手が多いそうです。それでも継続して体作りをしていくことで、補強もこなせるようになり、走りも変わっていくようですね!
補強を終えた時点ですでに汗も噴き出し、呼吸も上がっていたのですが……ここからが本練習です。ウォーミングアップはスタート時間に合わせて各自で行います。補強からすでにキツかったのもあって、1km5分ペースくらいでのんびりアップしようと思って走り始めました。すると、走り始めて1kmで時計を確認したら4分20秒ほどのペース。「あれ、思ったよりも動く!」と実感しました。さらに次の1kmは4分ペースまで上がっていました。上げようと思ったというよりも「自然とペースが上がっちゃった」という感じです。練習前の補強で、走るスイッチが入ったような感覚でした。
キツかった補強から一転、良い感覚でのウォーミングアップを終えて、いよいよお待ちかねのポイント練習です。この日は300m×10本という練習でした。300mを疾走し、100mをジョグでつなぐ練習です。ペースやトラックレースの感覚をつかみやすい練習ですね。
同じグラウンドでは箱根駅伝で総合3位になった男子駅伝部や短距離、フィールド種目の選手たちもトレーニングをしていて活気があります。各ブロックがそれぞれ切磋琢磨(せっさたくま)していることが伝わってきます。
インターバルがスタートしました。赤羽監督が自転車で伴走しながらラップを読み、細かくアドバイス。選手の皆さんは心地よいリズムで、軽快な足音を刻んでいきます。
本数を重ねるにつれて、リカバリーの100mジョグがあっという間に感じます。交代で先頭を引っ張りながら300mを10本こなしていきました。
そして10本終わってから、追加で200mを1本。皆さん、短距離ダッシュのような勢いです! 僕も必死に走らせていただきました。レースでのラスト勝負や駅伝で襷(たすき)を外してから中継所まで駆け込むようなイメージですかね。こういった日々の積み重ねが大事なんだなと、体を張って体感させていただきました。
さらに芝生へ移動して、30mの変形ダッシュを3本。ビーチフラッグスのように寝転んだ状態から、合図を聞いたと同時に起き上がりダッシュします。長い時間や距離を走り続ける練習が多い長距離選手にとって最も苦手としそうなメニューですね。スタートの位置取りや一瞬の切り替え、スパートにも効いてきそうな練習でした。
グラウンドでの練習を終え「補強もポイント練習も無事にできて、良い練習ができたぁ!」と満足していたら、選手の皆さんから「パワーマックスやりませんか?」と声をかけられました。
しっかり追い込んだ後に、室内に移動してバイクトレーニングです。休息を挟みながらバイクを全力でこぐトレーニング。こういう絞り出しが、キツいところで効いてくるんですね!
そして、選手の皆さんとダウンジョグ。ペースはゆっくりですが、4kmほど走りました。出し切って疲れている中でも、じっくりと丁寧にジョグをして、心と体を整えるとともに、地道なスタミナ強化にもなっていると感じて練習を終えました。
食事の献立を考える上で、大切なこととは
皆さんとたっぷり現状打破させていただいた後は、夕食をおいしくいただきました。
寮で食事を作っていらっしゃる管理栄養士の佐光菜々子さんには以前、4years.で取材させていただきました。
城西大学女子駅伝部OGの佐光さん。自らも駅伝メンバーとして全国の舞台を駆け抜けてきました。管理栄養士の資格を取得し、女子駅伝部の皆さんの献立作成から食事作りまで、切り盛りされています。朝と夕の食事だけでなく、お昼は選手のお弁当も作られています。公認スポーツ栄養士の資格を取得され、今でも勉強し続けています。
佐光さん自身も選手だった経験を生かして、練習内容に合わせ、選手に寄り添った献立となっています。取材に伺った日のメニューは「ごはん、サケと野菜の甘酢あん、ブロッコリーとにんじんの白あえ、チンゲン菜の干しエビナムル、もち麦ときのこのもち麦スープ、すいか」。栄養バランスはもちろん、彩りも素敵。練習で疲れた後でも食欲をそそります。
以前、取材させていただいた時に「栄養学はあくまでも平均的な一般論。現場では教科書通りにいかないことも多く、今その選手に何が必要なのか(把握すること)が大切です。そして栄養のバランスはもちろん、おいしくてわくわくする食事を提供することです」とお話しされていた佐光さん。
食卓を囲む選手の皆さんの笑顔を見ていると、体だけではなく心の栄養にもなっているのを感じました。「木曜日の朝はパンの日」ということで、取材日の翌日の朝食を楽しみにしている選手もいました(笑)。
ちなみに佐光さんは、日々の食事作りの合間に今でも趣味で走っています。マラソン大会やトレイルの大会に出場して、上位に入ることもあるそうです。
「今年の駅伝で表彰台、来年は日本一を!」
食事をいただいた後、選手やマネージャーさんにお話を伺いました。
主将・田代なのは選手(4年、東海大静岡翔洋)
「走りで引っ張るというよりも普段の生活、日常の中でも親しみのある存在、そういうキャプテンになりたいと思っています。チームの魅力は仲の良さです。後輩のみんなも後輩というより妹という感覚に近いかもしれないです。チームの目標は駅伝で表彰台に上ることです。個人としては今年で陸上を引退するので、やっぱり最後は自分が駅伝を走って終わりたいです。本当に周りの人たちに支えられて、自分もチームも走らせてもらっています。こういう環境が当たり前ではないことをすごく感じるので、走りや頑張る姿で恩返ししたいです」
副将・金子陽向選手(3年、川崎市立橘)
「昨年の関東インカレ10000mは誰も走ることができなかったので、今年は3枠を埋めて、その中で3人で入賞しようと言っていた中で達成することができました。城西大学の黄色のユニホームを目立たせられたのはチームとして良い弾みになったと思います。1年生から2年生の夏まではけがが多かったのですが、2年生の夏以降は継続して練習できています。現状打破するような練習を積み重ねたことが自信になっています! 駅伝では区間賞を取れる選手になりたいです。昨年は同期の髙橋葵だけにエース区間を任せてしまっていたので、今年は自分もエース区間の候補に挙がって競っていきたいですし、任されたところで区間賞を取ることがチームの表彰台につながると思います。トラックでは5000mで15分50秒を出し、結果で存在感を出していきたいです」
主務・盛合凜華さん(3年、旭川龍谷)
「高校まで競技をしていましたが、大学では1年生からマネージャーをしています。2年生になってからは主務をさせてもらっています。主務は責任感が違いますね。記録を出したり、関東インカレで表彰台に上る姿を見たりすると『マネージャーをやっていて良かったな』と思います。マネージャーの仕事は給水、タイム取りなど練習のサポートはもちろん、メールの返信、車での送迎、電話対応、大会のエントリーなどがあります。今年は特に1年生から4年生まで、学年に関係なくつながりが強くて、練習以外でも 他の学年と絡むことが多いです。食事の時も自然と全学年バラバラに座っているので、全テーブルがにぎやかです(笑)。チームとしては今年の駅伝で表彰台、来年は日本一を掲げています!」
主務の盛合さんを中心に4人のマネージャーさんが選手の走りを支えています。マネージャーさんたちも選手のために、チームのために何ができるのか常に考えられていることが伝わってきました。
皆さんの仲の良さ、学年間を超えたチームワーク、母校の襷にかける思いが伝わってきました。全日本大学女子駅伝、富士山女子駅伝の表彰台に向けて、チーム一丸となって現状打破し続ける城西大学の皆さんに注目です!