陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

部員6人の松蔭大学女子駅伝部 みんなで背中を押し、6区間の関東大学女子駅伝に挑む

松蔭大学女子駅伝部の皆さんを取材させていただきました(M高史撮影以外はすべて提供・松蔭大学女子駅伝部)

今週の「M高史の陸上まるかじり」は松蔭大学女子駅伝部のお話です。神奈川大学時代に箱根駅伝総合優勝を果たした中野幹生監督のご指導のもと、創部14年目を迎えました。現在は部員6人と少人数ながら、秋の関東大学女子駅伝に向けてチームの思いを襷(たすき)に込め、日々トレーニングに打ち込んでいます。

神大で箱根Vの中野幹生監督は「治療もできる監督」

中野監督は和歌山北高校から神奈川大学へ進み、主将を務めた箱根駅伝では7区を走って総合優勝に貢献されました。実業団で競技を続け、その後は鍼灸(しんきゅう)の国家資格を取得。実業団のトレーナーやコーチを務められました。松蔭大学女子駅伝部が2011年に創部となり、監督に就任。「治療ができる監督」でもあります。

神大で箱根駅伝優勝の主将・中野幹生さん、松蔭大で治療もできる監督として杜の都へ
練習前、選手に設定ペースをお話しされる中野監督(撮影・M高史)

また中野監督の兄・中野剛さんは、神奈川大学で今年から駅伝監督に就任。兄弟で大学の監督をされているのは珍しいのではないでしょうか。「兄弟で陸上界に携わってこられてありがたいですね」と中野監督は感謝を込めてお話しされました。

松蔭大学は教員免許、保育士、看護師といった資格をとる選手が多いことも、一つの特徴です。

今年の関東インカレ5000m、10000mの2種目に出場したエースの堀純花選手(3年、湘南台)は保育士と幼稚園教諭の資格取得を目指しています。実技でピアノの授業や練習があり、授業数も多く、保育実習も予定している中ですが、今シーズンは5000mで16分34秒10をマークし自己記録を更新。高校時代は3000m10分16秒と目立った記録がなかった堀選手ですが「素直でとにかく一生懸命です。将来性もある選手です」と中野監督も太鼓判を押します。大学に入ってからもコツコツと力を伸ばしてきました。

3年生エースの堀純花選手。5000mでは16分34秒10をマーク。今季は16分20秒切りを目指しています

恵まれた環境とは言えなくても

現在、部員は6人。4年生2人、3年生1人、2年生3人という構成です。全日本大学女子駅伝の選考会となる関東大学女子駅伝は6区間ですので、ギリギリとなる人数です。

また大学には専用のグラウンドがなく、普段のトレーニングは大学周辺の起伏に富んだコースを走ったり、ポイント練習の際は中野監督の運転で競技場まで移動したりしています。食事は自炊ということで、全国を目指す大学女子駅伝チームの中では恵まれた環境とは言えないかもしれません。それでも松蔭大学の皆さんはいつも明るい雰囲気。環境を言い訳にすることなく、前を向いて現状打破されています。

今年の関東インカレには前述した3年生の堀純花選手が5000m、10000mの2種目に出場。主将の森川彩夢選手(4年、宇都宮文星女子)が1500mに出場しました。

関東インカレ1500mに出場した主将の森川彩夢選手

「みんながなるべく一緒にトレーニングできるように」

取材に伺った日は神奈川県厚木市内にある荻野運動公園陸上競技場での練習でした。1レーンが使用できないため、2レーンを走行します。ちなみにトラック1周は400mですが、2レーンを走ると約407mになります。普段から2レーンを走っていれば、本番では距離が短くなって快適ですね(笑)。

この日は400m10本のインターバルトレーニングでした。400mを設定ペースで疾走し、100mのジョグでつなぐ、レースを意識したメニューでした。

インターバルでは「みんながなるべく一緒にトレーニングができるように」という中野監督の配慮もあって、堀選手が10本をこなすところ、他の選手が1本休むなど、うまく調整しながら「みんなで頑張ろう」という雰囲気が伝わってきました。

この日は卒業生の遠藤咲果さんも練習に参加されていました。大学卒業後も仕事をしながら走り続け、この夏は北海道マラソンに出場されるということで、定期的に母校の練習に参加されているそうです。

インターバル組は400mを10本。M高史もご一緒させていただきました

授業後で夕方とはいえ、蒸し暑い中での練習となりましたが、選手の皆さん一人ひとりの走りからは「いまできることをコツコツと」という一生懸命さが伝わってきました。また、インターバルに合流できない選手たちもペース走を行い、夏合宿を見据えた土台作りを行っていました。

ペース走を行う選手の皆さん。蒸し暑い中でしたが、きっちりペースを刻んでいかれました

「思いやりがあるチーム」「一人ひとりとの距離が近い」

練習後、選手の皆さんにもお話を伺いました。

主将・森川彩夢選手(4年、宇都宮文星女子)
「昨年もキャプテンを務めて今年で2年目になります。昨年は走りで引っ張れたところもありましたが、今年は故障もあってうまく付き合いながら走っています。思うような練習がなかなかできずにいましたが、3年の堀がチームの先頭に立って引っ張ってくれています。夏合宿に向けて自分の目標を達成しながら、走りでチームを引っ張っていけたらと思っています。個人としては日本インカレの1500m標準記録突破が目標です。また、駅伝に向けては5000mも走れるようにしていきたいです。松蔭大学は一人ひとり、思いやりがあるチームで、気遣いのできる選手ばかりです。人数は少ないですが、みんながいるから頑張れますし、誰かの調子が悪い時はみんなで背中を押してあげられる雰囲気です。松蔭大学を選んで良かったなと思えるチームです」

堀純花選手(3年、湘南台)
「関東インカレに向けて練習も積めていて、良い状態だったので目標を高く持っていました。日本インカレ標準を目指していましたが突破することができず、大舞台で力を出す難しさを知りましたし、周りの選手との差を痛感しました。来年こそは日本インカレを目指したいですね。年明けから故障せずにここまでこられているので、結果につながっていると思います。今年は5000m16分20秒切りを目標にしています。また、富士山女子駅伝の選抜メンバーに選ばれて出走することも目標にしています。松蔭大学は部員数が少ないですが、その分一人ひとりとの距離が近いのが魅力です」

また中野監督を支え、選手の皆さんにとっては頼れるお姉さん的な存在でもある吉田美咲コーチもいらっしゃいます。松蔭大学OGで女子駅伝部の2期生です。卒業後に就職した後、母校に戻ってコーチ就任6年目になります。

吉田コーチは先日、日本陸連の公認ジュニアコーチの資格も取得しました。「自分が今までやってきたことを振り返りながら、経験してきたことだけではなく、具体的な根拠なども探しながら伝えるように実践していこうと思っています。今いる選手たちに理想を押し付けるのではなく、それぞれの特性を生かし、結果を残してあげたいですね。伸び伸びした環境でやらせてあげたいです」と吉田コーチは丁寧にお話しされました。

ポイント練習後、クールダウンを行う選手の皆さん。チームの雰囲気の良さ、明るさも伝わってきます!

部員6人ギリギリで挑む関東大学女子駅伝。一緒に高め合ってきた仲間の思いや卒業生の思いも込めて、松蔭大学女子駅伝部の皆さんは心の襷をつなぎます。現状打破!

M高史の陸上まるかじり

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