陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

大学女子駅伝で毎年のように上位の関西大学 研究熱心な武田夏実監督のご指導を体感!

関西大学陸上競技部女子長距離ブロックの皆さんに取材させていただきました(すべて撮影・武田夏実駅伝監督)

今週の「M高史の陸上まるかじり」は関西大学陸上競技部女子長距離ブロックの皆さんを取材させていただきました。全日本大学女子駅伝では最高成績5位(2017年、2020年)を含む7度の入賞。富士山女子駅伝でも2022年に8位入賞を果たしました。2023年は全日本で7位入賞、富士山では12位に入り、毎年のように大学女子駅伝界で上位に顔を出しているチームです。

在校生だけでなく、卒業生たちも活躍

2023年シーズンは、日本インカレで伐栗夢七選手(きりくり・ゆめな、3年、大体大浪商)が5000m7位入賞。ルーキーの前田彩花選手(1年、愛知)は10000mで32分42秒02をマークし大学記録を更新。5000mも15分57秒37をマークしました。駅伝でも全日本1区3位、富士山ではエースが集まる最長5区で区間6位と好走を見せました。

また、在校生の活躍はもちろん、柳谷日菜選手(ワコール)、渡邉桃子選手(天満屋)をはじめ卒業生も活躍しています。

OG渡邉桃子選手は昨年の大阪マラソンで3位に入りました(撮影・柴田悠貴)

指導されているのは武田夏実駅伝監督(64)。武田監督は関西大学のOBで、大学院に進んだあと、大阪府内の公立高校で勤務。その後、大塚高校で指導をされていたとき全国高校駅伝(女子)に5度出場しました。2008年から母校・関西大学で指導されています。

今回の取材でたくさんお話しさせていただきましたが、武田監督は陸上が大好きで、研究熱心かつ理論派といった印象を受けました。写真が趣味で、今回の記事に掲載している写真も武田監督に撮っていただいております。指導している選手だけでなくトップレベルの選手をはじめ、様々な選手の写真を撮り研究されているそうです。特に足が地面に着く瞬間の接地を撮るのがお好きだとか。僕も大好きなので、その話題だけで何時間でもお話しできそうです(笑)。

自分と向き合うメンタルトレーニング

練習にも参加させていただきました。まずはメンタルトレーニングです。おかげさまで「M高史の部活訪問」として全国各地の高校・大学に伺っておりますが、メンタルトレーニングは初めての経験でした。

メンタルトレーニングといっても精神論的な「気合だ、根性だ!」というものではなく、スポーツ科学に基づいたもので、主に自分の心と向き合い、コントロールするようなトレーニングでした。

呼吸法、筋弛緩(しかん)法だけでなく、リラクセーションやサイキングアップといった意図的に興奮状態を作り出すトレーニングもありました。

音楽を流しながら、リラックスと集中、そのバランス、切り替えなど。競技だけでなくさまざまな分野で応用できそうなトレーニングでした。実際にトレーニングに参加させていただいたのですが、メリハリがあって、笑いもあって、チームも良い雰囲気の中、練習に入っていきました。緊張感とリラックスのバランスが大事なんですね!

実際にメンタルトレーニングに参加させていただきました。競技はもちろん様々な分野で生かせそうです

腕立て伏せも1回ずつ丁寧に

この日は大学のグラウンドが改修工事中ということで、近くの競技場で練習を行いました。大学で補強トレーニングをしてから移動。まずは器具を使った腕立て伏せです。地面にぺたっと着いている状態から、先にお尻を浮かせてそこから腕立てをしていきます。武田監督のカウントに合わせて上下したり、ピタッと止めたりするので、勢いでごまかせません(笑)。

腕立て伏せのスタートポジションです。肩甲骨を寄せて、ひじが背中より上がり、手首を立てるのがポイントです

「肩甲骨を寄せて、ひじが背中より上がっていること。手首を立てていること。そこからスタートします。腕を上げるというよりは体を一本の軸にして、かかと、ひざ、腰、肩を同時に上げ下げするのがポイントです」と武田監督がポイントを教えてくださいました。

10回終わってホッとしていたら「これをあと2セットです」と言われ……覚悟を決めました。いや、正確に言いますと、特に後半はちゃんとしたポジションでできていたか怪しいですが……(笑)。

10回を3セットなので30回ですが、いわゆる普通の腕立て伏せより何倍もキツくて、補強も質や中身が大事なんだなと、身をもって学ばせていただきました!

体を一本の軸にしてかかと、ひざ、腰、肩を同時に上げるのがポイント。実際、かなりきついです(汗)

腕がプルプルしまして……練習後にこの記事を書いているのですが、まだ手が震えています(笑)。

競技場へ移動してからラダーを使ったドリルを行いました。体の使い方や重心移動など、武田監督から細かなアドバイスがかけられます。ドリルも何となくやるのではなく、一つひとつの動作をどういう意図で、何のためにやるのかで全然違いますよね。ウォーミングアップのジョグや流しで早速「お、なんか、動きが良いなあ」というのを実感しました!

ウォーミングアップの動的ストレッチ。この後、ラダーやドリルと進んでいきます

絶妙な距離「150m」のダッシュを繰り返す

この日は「150m×5本」を3セットというメニューでした。つまり150mを全部で15本ダッシュしました。

150mダッシュの後は、50mをウォークでつなぎます。決められた秒数、休息をとって再び150mダッシュ。5本終わるとそのまま400mを1周ジョグしてから、セット間のレスト(休息)に入ります。しばしの休息を経て再度ダッシュが始まります。この150mというのが絶妙で、100mだと短すぎて、200mだと質が下がるそうです。

150m×5本。それを3セット! 先頭を引っ張る池崎萌絵選手(右)と前田彩花選手(中央)

練習では800mを得意とする池崎萌絵選手(2年、智辯学園奈良カレッジ)が前半を引っ張りました。後半は前田選手が積極的に前で走っていました。前田選手は150m5本が終わってからのジョグも速いです。武田監督によりますと、前田選手は止めないといくらでも走っているとのこと。ダウンジョグも止めるまでずっと走っているそうです。とてつもないスタミナですね!

この日は競技場での練習でしたが、低酸素トレーニングができるジムにも選手の皆さんは定期的に通って、低酸素でのバイクトレーニングなども取り入れて心肺機能や筋力を強化しているそうです。

後半は前田選手が積極的な走りで集団を引っ張っていました

4月からは村元雅弘さんも加わり、手厚い体制に

なお、武田監督は今年で65歳になられるということもあり、3月末で関西大学を退職されますが、4月以降は駅伝総監督、中長距離担当コーチとして引き続き指導にあたられます。後任には奈良産業大学の監督も務められた村元雅弘さんを招聘(しょうへい)し、二人三脚でさらに手厚い指導体制に。駅伝やインカレでも上位入賞を目指し、現状打破し続ける関西大学の皆さんに注目です!

練習後はリラックスした表情で。メンタルトレーニングで学んだことを早速実践しました

M高史の陸上まるかじり

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