陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

登山・起伏走・低酸素トレ 亜細亜大学は2大駅伝連続出場だけでなく、さらなる高みへ

全日本大学女子駅伝、富士山女子駅伝と連続出場を続けている亜細亜大学女子陸上競技部の皆さん(M高史撮影以外、すべて提供・亜細亜大学女子陸上競技部)

今週の「M高史の陸上まるかじり」では亜細亜大学女子陸上競技部を取材させていただきました。指導されているのは就任7年目の岡田晃監督。亜細亜大学OBで箱根駅伝総合優勝メンバー。実業団引退後、母校・亜細亜大学の男子部コーチを経て、2018年に女子陸上競技部の監督に就任しました。

亜細亜大学は短大時代に全日本大学女子駅伝出場、関東大学女子駅伝優勝などの成績を残してきましたが、2001年に休部。2018年に4年制のチームとして再スタートを切りました。

M高史は岡田監督と同い年で、プライベートでも交流がありました。2018年に「女子部の監督をやることになったんだ」と聞いてから、毎年伺っています。

1年生だけのチームから始まって年々選手が集まり、初めて4学年がそろった2021年に富士山女子駅伝に初出場。翌年には短大時代以来となる22年ぶりの全日本大学女子駅伝出場を果たしました。両駅伝の連続出場だけでなく、さらなる高みを目指して現状打破し続けています。

登山でストライドが広がりやすくなると実感

この冬はじっくりと脚作りをしてきました。東京都西多摩郡日の出町にある亜細亜大学日の出キャンパスは自然に囲まれ、トレーニングの一環も兼ねて登山に行くことも。この冬は東京都青梅市と日の出町の境にある標高902mの日の出山へ、足を運びました。

標高902mの日の出山を登る選手の皆さん。鍛えられた足腰が走りにもつながります

普段はグラウンドやロードを走る選手の皆さんにとって、気分転換になるだけではなく、トレーニングとしての効果もあると岡田監督は感じています。「臀部(でんぶ)とハムストリングス、腸腰筋を鍛えるために行っています。登山の登りで股関節の可動域が広がり、自然と臀部に刺激が入るので、次の日の動きが変わってきます。実際に選手たちも効果を感じていました。私も実業団のときに登山トレーニングを入れていたので、そのときの感覚を選手に伝えるようにしています」。岡田監督も選手たちと一緒に山を登りました。

山田桜選手(1年、和歌山北)は「(山登りの際に)歩幅を広げて歩いているため、平地ではストライドが広がりやすくなりスピード練習で良い動きができています。心肺機能も鍛えられていると感じます」と効果を語られました。

日の出山の山頂にて。良い気分転換にもなりますね!山頂までの案内をしてくださった宮岡晴雄さん(右端)

駅伝攻略にもつながる起伏に富んだコース

登山とともに脚作りのために行ってきたのが起伏のあるコースでの走り込みです。通称「トンネルコース」と呼ばれています。「亜細亜大学日の出キャンパス周辺には起伏に富んだコースがたくさんあります。『五日市トンネルコース』もその一つです。平地でリズムを作ることも大切ですが、鍛錬期だからこそ起伏を使って強化をするために活用しています」と岡田監督。坂道を攻略することは駅伝にもつながっていきます。

金屋美伶選手(3年、山村国際)は「距離を踏む週の練習には最適ですし、起伏のあるロードを走ることで脚作りにもつながります」とトンネルコースの魅力をお話しされました。なお、トンネルコースを利用するときは、歩道を走ったり、車両に細心の注意を払ったり、1人ではなく必ず複数人で走ったりするなど、安全面には細かな点まで気をつけているそうです。

亜細亜大学名物のトンネルコース。起伏に富んだロードで脚作りに最適です!

さらに、年間通して行っている補強トレーニングは「基礎的なものになります」と岡田監督。自身が現役時代のトレーニングをアレンジすることが多く、「イベント性を持たせて楽しみながらも鍛えられるよう工夫しています」。ジャンケンをしながら腕立て伏せをしたり、サイドプランクをしながら手押し相撲をしたり。「ジョグの前の補強は、主に下腹部に力を入れた状態で動作を行うものが多いです」と岡田監督は言います。

取材に伺った日はポイント練習後の補強に参加させていただきました。基礎的なものと岡田監督はお話しされていましたが、僕にとっては十分キツいものばかり(笑)。メディシンボールを使った腹筋系の補強や自重での補強など、ポイント練習よりもキツかったです。選手の皆さんはコツコツ継続されているからか、キッチリとこなされていました。

1年生の時に富士山女子駅伝に出場し、この春から最上級生となる黒江彩聖選手(3年、学法石川)は「練習の最後に、楽しみながら補強をすることで、亜細亜らしいワイワイとした良い雰囲気で練習を終えられます」と教えてくださいました。

取材に伺った日はポイント練習の後にメディシンボールを使った補強トレーニング。M高史も参加させていただきました

さらなる飛躍に向け、低酸素トレーニングを導入!

亜細亜大学のトレーニングをよりバリエーション豊かにしているのが、低酸素トレーニングルームです。近年、導入している大学も増えてきており、亜細亜大学では2022年から取り入れています。

「現段階では、まだメニューをこなせない選手やけがからの立ち上げの選手が主に活用していますが、ゆくゆくはポイント練習を低酸素ルームで行うこともできたらと思っています。やはり屋外でやる練習よりも、心肺機能に負荷がかかることを実感できます。特にけが明けで立ち上げ段階の選手が低酸素ルームで練習を行うと戻りがかなり早いです」と岡田監督は効果を実感されています。

昨年、全日本と富士山の両駅伝に出場した根岸涼香選手(1年、埼玉栄)は「けがからの立ち上げ期間でも低酸素ルームを利用することで、より心肺機能に負荷をかけて心拍数を上げることができます。さらに復帰後の練習の戻りも早く感じました」とお話しされました。

低酸素トレーニングを行う菅谷茉生選手(3年、常葉菊川)。けがから復帰する練習にはもちろん、強化としても活用できます

岡田監督も定期的に走って体感し、選手への指導に生かしています。学生時代は亜細亜大学の箱根駅伝総合優勝のメンバーで、実業団経験もありますが、指導者となってからは監督業やスカウトなどを1人でこなし、多忙な日々。日頃ランニングをする時間はなかなかとれません。それでも選手への思いや指導への探究心から「キツい!(笑)」と言いながらも選手の練習後、わずかな時間を使ってトレッドミルでダッシュしていました。

岡田監督自ら低酸素トレーニングを体感。選手の指導に生かしています(撮影・M高史)

トレッドミル1台、バイク2台と台数とスペースが限られているため、男子部、女子部が曜日を決めて利用しています。今後、さらに台数が増えるかもしれませんね!?

冬季トレーニングの成果はロードの成績にも表れています。髙橋朱穂選手(3年、本庄第一)が1月の大阪ハーフで1時間11分52秒の好記録をマークし、亜細亜大学記録を大幅に更新しました。

女子陸上競技部が再スタートを切って7年目の春を迎える亜細亜大学。全日本、富士山の連続出場、さらには上位入賞を目指して、春のトラックシーズンから注目です!

ビルドアップ走を行う選手の皆さん。M高史も参加させていただきました

M高史の陸上まるかじり

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