堀越信司選手・道下美里選手のトレーニングを拝見! ブラインドマラソン合宿リポート
今回の「M高史の陸上まるかじり」は日本ブラインドマラソン協会強化合宿のお話です。パリパラリンピックが開幕し、マラソン開催も迫ってきました。7月に今回の日本代表選手も参加された北海道での合宿に参加させていただき、走ってリポートいたします。
5000mのレース翌日に40km走!
ホクレン・ディスタンスチャレンジ(以下、ホクレンDC)の開催期間中、日本ブラインドマラソン協会の強化合宿が、北海道北見市を拠点に行われました。例年通り強化の一環でホクレンDCにも出場しながら、本州より涼しい北海道で走り込みが行われました。
ホクレンDC第1戦の北見大会、第2戦網走大会の5000mに出場し、レース翌日に40km走が入るタフなスケジュール。ポイント練習が2日連続で行われることを「セット練」と呼んだりしますが、こちらはより「高強度なセット練」とも言えます。これらの強化策を行うことで、過去のパラリンピックや世界大会でも好成績を残されてきました。
M高史はホクレンDCのライブ配信実況を務めさせていただき、選手の皆さんのレースを実況席から拝見しました。そして、レース翌日の40km走をご一緒させていただきました。
熊谷豊選手・高井俊治選手・大石航翼選手とスタート
まだ涼しい7月上旬の北海道。午前5時45分に選手の皆さんが宿泊されているホテルへ到着すると、スタッフの皆さんや選手、伴走者の皆さんが準備をしていました。そこから車で、距離走が行われる能取湖(のとろこ)まで移動。朝練習で40km走とのことですが、さすがに空腹状態では走りきれないなと思い、早めに起床して、おにぎりと大福、カステラを食べました。フルマラソン当日の朝食よりは少なめですが、走りながら取材するためのエネルギー補給です。
到着後、スタートの準備を行い40km走がスタート。能取湖の湖畔沿いを片道4km、往復8kmのコースで行われました。このコースを5往復して40kmとなります。
今回のパリパラリンピック男子マラソン代表の堀越信司選手(NTT西日本)、熊谷豊選手(三井ダイレクト損保)、女子マラソン代表の道下美里選手(三井住友海上)も参加されていました。
走力差があるので、細かなグループ分けが行われ、中には個人で走る選手もいます。
M高史は熊谷豊選手と強化指定選手の高井俊治選手(D2C)、大石航翼選手(戸塚共立第1病院)と一緒にスタート。女子では道下選手の他に強化指定選手の和木茉奈海選手(IMV)、西村千香選手(岸和田健康クラブ)、井内菜津美選手(三井住友海上)も参加されていました。
ブラインドマラソンはクラスによって、選手単独で走る場合と伴走者をつける場合があります。
T11全盲…伴走者とともに走る
T12弱視…伴走者がいても、単独走でもどちらでもよい
T13弱視…単独走(伴走者をつけてはいけない)
おおまかに分けると上記のようになります。日本ブラインドマラソン協会のウェブサイトに国際規則が詳細に記載されています。
終盤に差しかかると、どんどんペースアップ
能取湖湖畔コースは基本的に平坦(へいたん)で走りやすいのですが、緩やかな傾斜はあるので、後半になって何度も往復すると地味に効いてきます。
伴走者は選手にコースの進行方向はもちろん、傾斜、折り返し、給水などについて細かく教えます。具体的には地面が少しでこぼこしていたり、水たまりがあったり、前や後ろから自転車がきたりといったことも伝えていきます。
単独走の選手の場合も、視野の関係で折り返しなどがわかりにくい場合があるので、そういう時は声をかけたり、前に出たりして走りながら伝えます。
4往復を終え、いよいよ終盤に差しかかってきました。熊谷選手がグッとペースを上げた後、高井選手もペースアップしていきました。
大石選手は折り返しの場所が判断しづらいとのことで、私。M高史が前に出て引っ張ることに。最後の折り返しとなる36km地点では結構、脚にもきていたのですが、せっかくいただいたお役目ですので、力を振り絞って前に出ました。大石選手も並びかけ、どんどんとペースが上がっていきます。39kmからますますペースアップして、ラスト1kmは3分30秒! 期待の若手、大石選手の底力を体感しました。熊谷選手と高井選手は、見えなくなるほどペースを上げられていたので、強いですね!
前回の東京パラリンピックでメダルを獲得した堀越選手は淡々とハイペースを刻み、折り返すたびに集団へ熱い檄(げき)を飛ばしながら走っていました。道下選手には、レースや練習に懸ける集中力が全身からみなぎっており、M高史にも伝わってくるものがありました。
合宿では比較的平坦な能取湖湖畔コース以外に、もう1カ所、距離走のコースを使用します。昨年も取材させていただいた1周1.5kmの起伏があるコースです。
平坦なコースの方が楽そうに聞こえますが、起伏コースよりペースが速いですし、終盤はかなりペースも上がるので、一概にどちらがキツいとは言い難いですね。今回の合宿では起伏のあるコースと能取湖のコース、どちらも使われたそうです。その間に5000mのレースを2本走っていますので、改めて選手の皆さんのタフさを感じます。このスケジュールを一緒にこなしている伴走者の皆さんも尊敬です!
選手の皆さんは走りだけでなく、内臓も強い!
朝練習で40km走をして、クールダウンや着替えを終え、車で移動していると、もうお昼です。管理栄養士の渡邉香緒里さんが帯同し、献立を作成。ホテルの全面協力のもと、栄養バランスがとれた食事をすることができます。
走り終わって体がキツい中でも、皆さんモリモリ食べられます。走りはもちろん、内臓も強い! しっかり栄養をとることで体も回復し、練習を継続できることで、さらに強くなっていくんですね。
パリでの皆さんの活躍に注目したいですし、今回代表に入っていない方でも楽しみな選手たちがそろっているので、また次のレースに向けて応援していきたいです!