陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

4years.を経た方々の活躍をお届け!しまむら女子陸上部の夏合宿に密着しました

今回は、しまむら女子陸上競技部の皆さんを取材させていただきました(すべて提供・しまむら女子陸上競技部)

今回の「M高史の陸上まるかじり」では実業団チーム、しまむら女子陸上競技部の合宿を取材させていただきました。大学での4years.を経て、社会人になっても現状打破している選手を中心に伺いました。8月1日付で安藤友香選手も加入し、駅伝、トラック、マラソンで注目のチームです!

必死にもがきながら、2周をコンプリート

しまむら女子陸上競技部は7月下旬、新潟県妙高市で夏合宿を行いました。妙高は起伏があり、トラックやクロスカントリー、ロードでの距離走など練習内容に合わせたコースがとれるので、人気のある合宿スポットです。

僕が伺った日は朝練習で、隣町の長野県信濃町にある野尻湖で距離走が行われました。妙高市とは県境なので、車ですぐに移動できます。

野尻湖は僕の母校・駒澤大学が毎年夏合宿をしている思い出の地でもあります。1周のコースは15.3km。起伏に富み、1km以上の上り坂が続くところもあり、鍛えがいがあります。数多くの名選手が夏場に野尻湖で走り込み、脚作りを行ってきました。僕は学生時代マネージャーだったので、当時の大八木弘明監督(現・総監督)と車で伴走して、タイムの計測や給水をしていました。車では何周も回りましたが、自分の足で走ったことは最長でも1周しかなく、今回の取材ではワクワク感と緊張感が混在していました。

この日は、僕も早起きして臨みました。トラックを狙う選手とマラソンに出場する選手がいるため、選手によって1周(15.3km)、20km、25km、2周(30.6km)と走る距離が異なります。

走る前にはエネルギー系のゼリーを飲み、気合を入れて、選手の皆さんといざスタートです。

太田崇監督が車で伴走し、石田政コーチが走って選手を引っ張ります。野尻湖のコースは上りと下りが連続するので、ペースを作るのも難しいのですが、石田コーチが安定したリズムで引っ張り、選手の皆さんも続きます。キツい上り坂では上半身もうまく使って、走りながら筋トレをしているような感覚になります。

取材当日、野尻湖で行われた距離走。起伏の激しいコースで数々の名選手がこの道を走り込んできました

秋にトラックや駅伝を目標にしている選手たちが、それぞれ予定している距離を走りきり、そこからスタート地点までダウンジョグで戻ります。それだけでも5kmくらいは走るので、スタミナもつきますね。

そして、ただ一人、2周に挑んだのは北海道マラソンに出場予定の菊地優子選手。白鷗大学のOGで実業団のホクレンを経て、現在はしまむらでマラソンにも挑戦しています。厳しい坂が続くこのコースでも良いリズムで淡々と走り、スタミナはもちろん、体幹や脚力の強さも感じました。M高史は必死にもがきながらも、何とか2周(30.6km)をコンプリートしました。

北海道マラソンに出場予定の菊地優子選手(右)。激しい起伏コースも軽快な足取りでキッチリ走破

僕は走り終わると、もう一歩も走れないというほどキツかったのですが、菊地選手はそのまま軽快な足取りでダウンジョグに行かれました!「強い!」と心から実感しましたね。途中、雨が降ったり、晴れ間も見えたりする中、どんな気象条件でも対応できそうな強さも見られました。

練習後は野尻湖を背景に記念撮影。宿舎に戻って、おいしい朝食をいただき、監督、コーチ、選手にインタビューさせていただきました。

距離走後、野尻湖を背に「現状打破!」ポーズで記念撮影です

「今に合った指導」「相互理解を大切に」

監督、コーチ、選手の皆さんをご紹介し、インタビューをお届けします。

太田崇監督
北海道出身。札幌学院大学時代には1500m、5000m、10000mで北海道学生記録を樹立しましたが、全国的には無名の存在でした。当時の実業団・NECに直談判して入社し、そこから力をつけて、ニューイヤー駅伝で連続出場を果たしました。NECが廃部した後、当時、ニューイヤー駅伝で優勝街道を突き進んでいたコニカ(現・コニカミノルタ)に移籍。チームの優勝にも貢献されました。世界ハーフマラソンにも日本代表として2度出場しています。実業団では計12年間競技を続けた後、実業団のホクレンで女子チームの指導者に。その後、しまむらで監督をされて3年目になります。

「現役時代、NECは練習の質が高かったですし、コニカでは質よりも練習量が多かったです。現在は両方のいいところを取り入れていこうと思っています。時代に合わせて、変化しながら指導をしています。僕たちがやってきたことが全てではないので、経験は伝えますが、自分たちも勉強しながら、今に合った指導を心がけています。私は現役時代、オリンピックや世界選手権を目指してやってきました。自分では到達できなかったので、今度は指導者として、オリンピックや世界選手権に行ける選手を育てたいと思っています。また、駅伝も上位でしっかり戦いたいなと思います」

現役時代はニューイヤー駅伝優勝や世界ハーフ日本代表を経験している太田崇監督(左)

石田政コーチ
九州国際大付属高校(福岡)時代、インターハイの1500mで5位。5000mも14分11秒が自己ベストと実績を残していました。ただ、大東文化大学では故障が続き、納得のいく結果を残すことができなかったそうです。大学卒業後は一度教員の道へ。その後、ひらまつ病院で競技に復帰。6年間在籍したうち、最後の2年間は選手兼コーチとして指導にも携わりました。そして、しまむらのコーチに就任して2年目となります。走力を生かして練習を引っ張ることも多いそうです。

「自分の走りでもサポートできればと思っています。選手の心情に寄り添えるように、積極的にコミュニケーションをとるようにしています。(指導者のやりがいは?)競技をやめようか相談してきた選手がいたのですが、もう一度立ち直って、結果を残してくれたことがありました。その選手から『やめなくてよかったです』と言ってもらい、少しは役に立てたかなと感じました。指導者としては相互理解を大切にしています。お互いに理解し合える、同じ目線で寄り添っていける存在でいたいです。しまむらは伸び盛りなチームですし、夏までの結果を見ていてもチームの勢いを感じます」

タイムを読み上げながら選手と走る石田政コーチ(左)。同じ目線で寄り添う指導者を目指しています

キャプテンと社会人1年目の方々にインタビュー

続いて選手にもお話を伺いました。

座間栞選手(キャプテン)
千葉県出身で、成田高校、順天堂大学と大学まで地元で競技を続けてきました。順天堂大学では、現在と同じくキャプテンも務めました。

「学生時代は厳しかったですが、色々学べた学生生活でした。仲間もいましたし、スポーツを仕事にしたいという夢もあったので、キツかったことも乗り越えてこられました。しまむらでは入社3年目になります。1年目のクイーンズ駅伝が終わってからキャプテンを任せていただいてます。実業団に入ってからは、1年目に勢いでやっていたところ、記録もついてきました。今後の目標は、まず日本選手権に出ることです。しまむら陸上部の魅力は、みんな個性は強いのですが、バランスよくお互いを尊重し合っているところですね。先輩たちの雰囲気が良いので、ありがたいですし、新しく入ってきた子たちも、のびのびやれる雰囲気があります」

息抜きは、家族や高校、大学の友達と会うことだそうです。

先頭を引っ張るキャプテンの座間栞選手。安藤友香選手(左端)も加入し、楽しみなチームです

山田桃愛選手 
川口市立高校、玉川大学OGの山田桃愛選手。小学6年生の時に骨髄性白血病を発症し、病気を乗り越えて、高校から本格的に陸上を始めました。大学では3000mSCで日本インカレ優勝を飾るなど「サンショー」でも活躍を見せました。今年、しまむら入社1年目です。

「けがをしやすかったので、大学の時は月間300kmとか、多くても400kmでした。今は自主的に距離を踏んで、脚を作って、7月は自己最長の650kmでした。小学6年生の9月17日に白血病と診断されて、ちょうど10年後の同じ日に日本インカレで優勝できました。今は薬も飲んでいないですし、血液検査は2カ月に1回行っていますが、自分の免疫のおかげで抑えられています。(今後の目標は)駅伝では大学の時は4年生まで結果を出せなかったので、社会人1年目から選手として走りたいです。次のロス五輪まで競技を頑張りたくて、オリンピックに出ることが目標です。入社してからは同期の杏ちゃん(鈴木杏奈選手)のおかげで頑張れています」

玉川大学・山田桃愛 富士山女子駅伝で区間賞めざすインカレ覇者 白血病を乗り越えて

鈴木杏奈選手
和歌山北高校、大阪芸術大学OGの鈴木杏奈選手。大学では2023年の日本学生女子ハーフマラソンで4位に入るなど、長い距離での強さも発揮してきました。学生時代は初等芸術教育学科で学び、小学校教諭と幼稚園教諭の資格も取得しました。

「関東に初めて出てきて、最初は友達もいなくて寂しかったですが、同期の山田さんがいてくれたのが心強かったです。初対面でも気が合って、居心地が良くてなんでも話せる仲です。ホクレン(ホクレン・ディスタンスチャレンジ)に挑んだのですが、5000m16分00秒42と16分00秒40で(2戦続けて)自己記録は出たのですが、16分を切れなかったのがとても悔しかったです。大学に比べて走る距離も必然的に増えて、脚の筋肉がついて体脂肪率も減り、新鮮で楽しく陸上ができています。大学4年の時にマラソンに挑戦して、本当にキツくて『2度と走らへん!』と思ったんですけど(笑)。今ではやっぱりそのタイムを超えたいという気持ちです。監督・コーチにも『マラソン向いているよ』と言われているので、将来的にはマラソンをもうちょっと頑張ってみようと思います。マラソンにつなげるためにも今は5000m、10000mでしっかりタイムを出したいです。まずは5000mで15分40秒を切って、日本選手権に出るのが目標です。駅伝もしっかり走りたいです」

ミュージカル、デザイン、ドラム、ダンス 競技と芸術を両立する大阪芸術大女子駅伝部
お互い気が合って仲良しというルーキーの山田桃愛選手(右)と鈴木杏奈選手(左)

今回は4years.向けの取材ということで、大学を卒業した皆さんのその後の活躍に着目しました。新加入した安藤友香選手や、世界選手権代表経験のある山ノ内みなみ選手といった経験豊富な選手もそろって、個性も豊か。しまむら女子陸上競技部の皆さんの活躍に注目です!

M高史の陸上まるかじり

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