2020-21シーズンのベストファイブが新しい貢献活動をはじめた ©B.LEAGUE
B.LEAGUE2020-21シーズンの優勝クラブや最優秀選手賞、最優秀新人賞などの表彰が行われた「B.LEAGUE AWARD SHOW 2020-21」。そのなかで発表されたレギュラーシーズンベストファイブ受賞者による新たな社会貢献の試みがはじまった。今回は、金丸晃輔や富樫勇樹らベストファイブ受賞者に社会貢献への思いを聞いていく。
ベストファイブ受賞者が地域に寄り添う
B.LEAGUEの活動はオフコートでも活発だ。そのひとつが社会的責任活動である「B.LEAGUE Hope」(以下B.Hope)。これまでに震災や豪雨災害を受けた地域でのボランティアや児童養護施設支援など、選手とクラブが一丸となり活動してきた。
そして今夏、新たに生まれた社会貢献企画が「B. Future Action」だ。
「B. Future Action」は、ベストファイブ受賞選手がそれぞれ地域の選手や子どもたちに公式球やバスケットゴールを寄贈する企画だ。ベストファイブを受賞したのは、金丸晃輔(島根スサノオマジック)、富樫勇樹(千葉ジェッツ)、藤井祐眞、ニック・ファジーカス(ともに川崎ブレイブサンダース)、ジュリアン・マブンガ(富山グラウジーズ)の5名。彼らは今回の貢献活動にどのような思いをもっているのだろうか。
金丸晃輔「子どもたちの笑顔が何より励みになる」
5年連続でベストファイブを受賞し、2020-21シーズンの最優秀選手賞にも輝いた金丸晃輔。8シーズンプレーしたシーホース三河から今シーズン島根スサノオマジックに移籍した彼がまず口にした言葉は、「バスケットボールを寄贈することで、大変な状況にいる方の活力になれば」だった。
金丸が寄贈先に選んだのは、バスケ人口が少ない地域で存続が難しいなか頑張っているチーム、街の清掃に積極的に取り組むチーム、そして医療従事者のチームなどだった。
「困っている方を助けたいという思いが一番ですが、バスケを楽しんでくれる子どもが増えてほしいという思いもあります」
長く続くコロナ禍でファンイベントもできず、試合観戦の機会も減り、「何か貢献できることを」という気持ちがつねにあった。とくに子どもたちへの思いは強い。これまでにもバスケクリニックで子どもたちに教えることもあれば、個人的に障害者施設を訪問してプレゼントを贈ることもあった。
「施設を訪問したときに、まだ試合を見たことのない子どもと親御さんに『試合を観に行きます』と言われたことが本当にうれしくて。子どもたちの笑顔は選手にとって励みになります。子どもたちにはこのボールをきっかけにもっとバスケに向き合って、どんどんバスケを好きになってほしくて。今後は賞を受賞したときにシューズをプレゼントするとかして笑顔を見られたらと思っています」
富樫勇樹「プレー以外でもファンのために貢献したい」
金丸と同じく5年連続ベストファイブを受賞し、千葉ジェッツの年間優勝にも大きく貢献した富樫勇樹。日本代表として、B.LEAGUEの顔として活躍する富樫は、「代表としてプレーすることも、ベストファイブに選んでいただいていることもふくめ、責任感を感じます」と言う。
「ファンの方々のおかげでB.LEAGUEは成り立っています。そのなかでベストファイブに選んでいただいているので、今回のボールの寄贈もふくめプレー以外でも貢献したいという気持ちはいつもあります。バスケの試合はコートに近いところで観られるので、選手との距離の近さもひとつの魅力なんですが、その機会が残念なことに減っているので、今回の企画は素晴らしいと思います」
千葉ジェッツに入団して7年目。ボールの寄贈先は「千葉のバスケ強化を応援したい」という思いと、「感謝の気持ち」で選んだ。
「将来、このボールを使った子どもが千葉ジェッツのユニフォームを着てプレーしてくれたら本当にうれしいです。プロになるのは大きい選手が多いですが、僕のように身長が高くなくても日本代表に選ばれたり、B.LEAGUEでベストファイブに選ばれる姿を見てもらって、子どもたちにも何か感じてもらえたらと思っています。いまはB.Hopeでも子どもたちと一緒にバスケをしたり直接会ったりすることはできないのですが、子どもたちに向けての活動をひとつでも多くしたいと思っています」
藤井祐眞「地域でSDGsを盛り上げていけたら」
「市内の小学校とかにバスケ用具を寄贈することで、いままでバスケを知らなかった子どもがバスケに触れる機会がうまれたり、少しでも面白さを知ってもらえたりするので、それだけでもすごく良い取り組みですよね」と話すのはベストファイブ、ベストディフェンダー賞、ベストタフショット賞の3部門を受賞した藤井祐眞。
B.LEAGUEは各クラブがそれぞれ社会や地域貢献活動に力を入れているが、藤井の所属する川崎ブレイブサンダースも川崎市と連携してSDGs(持続可能な開発目標)プロジェクト「&ONE(アンドワン)」を立ち上げるなど活動に積極的なクラブのひとつだ。ホームアリーナで使用済み食用油を回収し環境負荷の低いバイオ燃料の原料にしたり、グッズ収入をこども食堂へ寄付したり、地域やファンとともに社会貢献している。
藤井もB.Hopeをはじめ社会貢献活動に積極的で、「地域全体でSDGsのような活動をおこない盛り上げていけたら」とも思っている。実際に、川崎の選手やクラブスタッフとSDGsの取り組みについてミーティングやワークショップもおこなっている。
「今シーズンはクラブで新しい貢献活動もはじめ、チームのアシスト数に応じて寄付をしていきます。僕はアシストも多いのでより力が入りますし、頑張って貢献したいです」
ニック・ファジーカス「プロのアスリートとして子どもたちのロールモデルに」
3年ぶり3回目のベストファイブ受賞に輝いたニック・ファジーカス。アメリカのネバダ大学時代から子どもたちにバスケを教えたり、社会貢献をしてきたファジーカスは、今回の企画が“子どもの夢”につながると考えている。
「B.LEAGUEの選手からバスケ用具をもらったことで、『B.LEAGUEの選手になりたい』だったり、私たちが思っている以上の結果につながる環境ができると思います。子どもが目標をもつことはとても大事なことなので、このバスケットゴールがきっかけになりどう成長していくのかを見守っていきたいです」
ファジーカスは、だからこそ直接の交流を大事にする。「学校を訪問して子どもと会うことで、子どもたちは『テレビのなかの人ではないんだ』とより身近に感じてくれます」
川崎は一昨年に、股関節の病気と闘う小学生をチームの一員として迎え、練習参加や試合会場で選手のサポート活動をしてもらうなど、「長期療養中の子どもを応援するプロジェクト」をおこなった。
「彼がクラブの一員になってからはすごいスピードで回復を見せて、そのうち装具なしで歩けるようにもなりました。彼も夢をもらったと思うし、私達もチームメイトとしてその過程を見られたのはすごいことだし、感動も影響も受けました。このようなことができるのも、プロのアスリートだからこそだと思っています。プロアスリートとして私自身が子どもたちのロールモデルになって、社会貢献を通じて人柄についても伝えていければと思っています」
ジュリアン・マブンガ「“宝物”という言葉をもらえるからハードワークできる」
「ベストファイブみたいな賞を受賞したのは大学生以来」と話すジュリアン・マブンガ。アメリカのマイアミ大学を卒業後、2015年に来日し2020年より富山グラウジーズの一員となり、2020-21シーズンはアシスト王にも輝いた。
大学時代にも社会貢献活動として子どもたちと一緒にプレーしたりボールにサインを書いて渡したりという経験もあり、プロになってからは毎年練習着を日本の子どもたちにプレゼントする活動もおこなっている。
「わたしがレブロン・ジェームズ選手(NBAのロサンゼルス・レイカーズ所属)に感銘を受けたように、プロアスリートだからこそできることがあると思います。今回の企画のようにプロからのプレゼントは、もらった方にとってとても特別なことになるのかと思います」
マブンガはサインを渡したときにファンからもらった言葉を大事にし、それが自身の日々のハードワークにつながっている。
「写真にサインをしたときに、『これは私にとって宝物です』と言われたのが本当にうれしくて忘れられません。だから私たちプロはつねにハードワークをしなければいけないと思っています。プロでもプレーや状態が良いときもあれば悪いときもあります。私も来日する前はバスケから離れようと思ったこともありました。それでも自分を信じてハードワークをして成長することで、ファンともつながれるのだと思います」
ベストファイブ受賞者たちのそれぞれ社会や地域、そしていつも応援してくれるファンへの思いが詰まった今回の「B. Future Action」。この企画のように、バスケ界の発展と社会貢献につながるB.LEAGUEの活動はこれからも進化していく。