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連載: プロが語る4years.

「現役を続けるためにも結果を」41歳、地元・新潟から新天地へ 群馬・五十嵐圭1

五十嵐は慣れ親しんだ地元・新潟を離れ、2021-22シーズンより初のB1に挑む群馬で戦う(撮影・松永早弥香)

今回の連載「プロが語る4years.」は、群馬クレインサンダーズの五十嵐圭(41)です。五十嵐は2003年に中央大学を卒業後、日立サンロッカーズ(現・サンロッカーズ渋谷)に所属し、Bリーグが開幕した2016-17シーズンからは地元・新潟の新潟アルビレックスBBで、そして2021-22シーズンはB1に昇格した群馬で日本一を目指しています。4回連載の初回は、新シーズンを前にしての思いです。

後輩でもある吉田GMから「圭さんを優勝させたいです」

年を重ねても若さと美貌を保っている女性のことを、巷(ちまた)では「美魔女」と呼ぶ。ならばこの人は「美魔人」か。今年41歳を迎えた五十嵐は、20代と言っても通用するルックスもさることながら、プレーでもBリーグ最年長とは思えない若々しさを発揮している。

Bリーグ初年度の2016-17シーズンに加入した新潟アルビレックスBBでは、在籍した5シーズンを通して全試合で先発を務め、試合時間の大半をコートで過ごした。「ベテランとして加入した新潟で、プロキャリアを通じて一番プレータイムを獲得し、2018-19シーズンには中地区優勝という結果も残すこともできました。新潟に来てもう一度自信を取り戻すことができたと言いますか」。五十嵐は生まれ故郷の新潟でプレーした日々をそう振り返る。

地元・新潟で5シーズン戦い、五十嵐は自信を取り戻したという(写真提供・B.LEAGUE)

だからこそ、群馬への移籍は「かなり悩んだ」と言う。「新潟への思い入れもありましたし、入団会見で言った『このチームでユニホームを脱ぐ』という覚悟はその後もずっと持っていましたから」。そんな五十嵐を突き動かしたのは、自身がいまだ果たしていない“リーグ制覇”を達成したいという強い思いだった。

「もちろん『新潟にいるから優勝できない』というわけではないですが、群馬が描く優勝に向けてのビジョンは、選手補強など含めてとても魅力的でした。残り少ないだろう現役生活で、あと数年で結果を出すことを考えて、新しい場所でその可能性を探ってみたいと思ったのが一番大きいですね」

群馬のチーム編成を統括する吉田真太郎ゼネラルマネージャーは、五十嵐にとって中央大バスケ部時代の2学年後輩。面談中に優勝への思いを語った五十嵐に、吉田はすぐに「じゃあ優勝しましょう。圭さんを優勝させたいです」と応えたという。「先輩後輩という関係性もあるとは思いますが、交渉の場でこんなにストレートな言葉を聞いたのは初めてでした」と五十嵐。苦楽をともにした後輩のこんな一言も、移籍を決める1つの要因となった。

五十嵐(左)が中央大を卒業してからは吉田GMと接する機会がなかったが、様々な巡り合わせで再会し、今はともに日本一を目指している(写真提供・群馬クレインサンダーズ)

初のB1を前にして大型補強

勝率9割超えという驚異的な成績でB2優勝を果たし、満を持してB1に挑む群馬は、所属選手中4人が新加入、2人がルーキーという若いチームだ。しかし、千葉ジェッツで優勝経験を持つマイケル・パーカーとトレイ・ジョーンズ、日本代表候補のアキ・チェンバース、チェコ代表のオンドレイ・バルヴィンと、B1上位クラブと遜色ないプレーヤーたちがズラリ。五十嵐は司令塔として「彼らの良さを僕がどれだけ引き出せるかが一番のカギ」と意欲を燃やしている。

新体制としての初陣となる信州ブレイブウォリアーズとのプレシーズンマッチで、群馬は80-76で見事勝利を飾った。先発ポイントガードとしていい流れを作り、アシストや得点でチームをもり立てた五十嵐のパフォーマンスは、とても41歳とは思えないエナジーにあふれ、若い頃から武器としてきたスピードも健在だった。

身体能力に優れた選手は、それが加齢やけがで劣った時にパフォーマンスが大きく下がる印象がある。しかし、五十嵐のプレーにはそれがあまり感じられない。秘訣について尋ねると、ベテランならではの戦い方について語ってくれた。

「経験を積んで、要領よくやれるようになってきたとは思いますね。若い時よりもどのタイミングでどういうプレーをしたらいいかを考えられるようになりました。瞬間的なスピードはやっぱり20代から30代前半の方があったと思うし、20代の頃は『とにかくスピードが武器』と思いながらプレーしてきました。今は、それをどういう風に使うかを考えられるようになったというか。そういう意味で、バスケットは奥が深いスポーツだなと。まだまだ成長できるし、うまくなれるんじゃないかと思っています」

「あと数年でいい」なら新潟に残っていたかもしれない

繰り返すが、41歳である。それでも「まだまだうまくなれる」と言える五十嵐は、一体何歳までプロキャリアを続けられるのだろう……。49歳まで現役を続けた折茂武彦さん(現レバンガ北海道社長)を引き合いに出すと、五十嵐は「あの人は別格です」と笑いながら続けた。

「折茂さんのように50直前までやるっていうのはなかなか難しいとは思いつつ、そこまでプレーできたらいいなとも思います。今回群馬への移籍を決めたのも『まだまだやれる』と感じたから。『あと数年でいいかな』と思っていたら、たぶん新潟に残っていたと思います。自分の体と向き合いながらにはなりますが、年を取れば取るほど『長く現役を続けたい』という思いは増していますし、長く現役を続けるためにも、ここで結果を残していきたいです」

20代とはまた違う戦い方ができるからこそ、まだまだ成長できる(撮影・松永早弥香)

大型補強に成功したと言え、群馬はB1初参入のこれからのチーム。加えて、所属する東地区は、千葉ジェッツ、宇都宮ブレックス、川崎ブレイブサンダースら強豪がそろい、五十嵐は「新しいメンバーで、東地区で勝つのはそんなに簡単なことではない」と冷静に語る。第一歩となる初年度の目標は、チャンピオンシップに出場すること。新天地で迎える2021-22シーズンの開幕を、五十嵐は心待ちにしている。

プロが語る4years.

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