2019年9月、B.LEAGUEとパートナーシップ契約を締結した日本郵便株式会社(以下、日本郵便)。全国に約2万4000の郵便局を持つ日本郵便はB.LEAGUEとともに、どのような社会・地域貢献活動を行い、どのような未来へのビジョンを描いているのか。日本郵便の担当者に話を聞いた。
地域のためのコラボレーション
昨年、郵政創業150年を迎えた日本郵便。日本全国どの地域にもある郵便局は、地域コミュニティーのハブになる存在として安心と安全の拠点になっている。そして、少子高齢化や人口減少が問題となる今、地域の人々の生活を長年支えてきた郵便局に対する期待はますます高まっている。
こうした中、2019年9月に日本郵便が新たに「B.LEAGUE PARTNER(Bリーグ パートナー)」に決定し、B.LEAGUEとの様々な形での連携を始めた。その経緯について、日本郵便の明石学さん(経営企画部事業企画室 課長)はこう話す。
「B.LEAGUEの理念が弊社と近しいものがあったのがきっかけです。B.LEAGUEも弊社も地域に根差し地域のお客様とともに発展していくための活動をしています。全国津々浦々に36クラブあるB.LEAGUEと全国に約2万4000ある郵便局ネットワークのコラボレーションを通じて、地域にとってより欠かせない存在になれるよう地域貢献をしていきたいと考えています」
とくに日本郵便が力を入れているのが、「B.LEAGUE Hope(以下B.Hope)」のサポートだ。B.HopeはB.LEAGUEの社会的責任活動で、環境や貧困、教育、ジェンダーなどの社会問題に様々なステークホルダーと一緒に取り組むプロジェクトだ。
東日本大震災から10年の節目となった昨年には、「B.Hope HANDS UP! PROJECT supported by 日本郵便」を実施。震災を風化させず震災の教訓を未来に生かすために様々なプログラムが行われたが、そのひとつがバスケを通じて防災、減災を学ぶ「ディフェンス・アクション」。例えば、ドリブルしながら震災時に必要となる備蓄品を学ぶゲームでは、年齢や性別により必要な備蓄品が異なることを理解するのが目的だ。子どもたちはバスケを楽しみながら防災で大切なことを学んでいき、いざという時に素早く対応できるようにするのも狙いだ。その他にも、震災被害が大きかった岩手、宮城、福島、茨城のB.LEAGUE 4クラブが実施する復興支援活動をサポートしてきた。
子どもたちの輝く笑顔のためのプログラム
今年はB.Hopeとの新たなプロジェクトもスタートしている。1月に開催予定だった「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2022 IN OKINAWA」は新型コロナウイルス感染症の影響で中止になったが、同時に実施予定だった「B.Hope Action DRIVE TO DREAM」のプロジェクトは時期を変更して実施された。これは、バスケを通じて「子どもの貧困や教育支援の拡大・教育機会の保障の必要性」「コロナ禍による活動制限」というオールスター開催地・沖縄の地域課題の解決を目指し、そして子どもたちが夢を持って学習やスポーツに取り組むきっかけをつくるものだ。
このプロジェクトの一環として、B.Hopeと日本郵便は「届け、バスケ! supported by 日本郵便」を実施した。「届け、バスケ! supported by 日本郵便」では、家庭にさまざまな課題をもつ子どもや、孤立や孤食など困難な状況に直面している子どものために生活習慣の改善や学習支援を行う「子ども第三の居場所」7カ所に対して、バスケのミニゴールとミニボールの贈呈を行った。
3月に実施された贈呈式に出席した日本郵便の寺門晃弘さん(経営企画部事業企画室 係長)は、この時の「子どもたちの笑顔」が強く印象に残っているという。
「子どもたちも最初は緊張している感じでしたが、琉球ゴールデンキングスのマスコット『ゴーディー』と日本郵便のキャラクター『ぽすくま』が登場すると、場が一気に盛り上がりました。贈呈したゴールとボールで子どもたちが遊んでいるうちに表情がどんどん柔らかくなっていったのが印象に残っています。施設を運営する方たちも喜んでくださいましたし、笑顔になっていく子どもたちの姿を目の当たりにして、B.LEAGUE とともにB.Hopeの活動を行うやりがいをあらためて強く感じました。沖縄からはじまったこのプログラムですが、今後は各地にあるB.LEAGUEクラブと連携し、全国にこの輪を広げられたらと考えています」
「子どもたちのためはもちろん、コロナ禍で沖縄の観光産業が影響を受けているなかで、少しでも沖縄の家庭に笑顔を増やすことができたらという気持ちです。それに、少し先の話になるかもしれませんが、この取り組みをきっかけにスポーツが好きになる子どもや、B.LEAGUEの選手を目指す子どもがひとりでも増えてくれたらとも思っています。その子どもがプロバスケの選手となり、また地域に勇気を与え、また次の選手が誕生する。地域に明るい循環が生まれたらと願っています」と明石さんも口にする。
B.LEAGUEの魅力を通した地域活性
日本郵便はB.Hopeを中心とした社会・地域貢献活動のほかに、月間MVPを決める「B.LEAGUE MONTHLY MVP by日本郵便」や、各地のクラブのホームゲームでの冠試合などアリーナでの活動にも積極的だ。
明石さんも寺門さんも、活動を通じてB.LEAGUEやバスケの魅力をあらためて実感したという。
「試合展開がスピーディーで、最後の最後まで試合がどうなるか分からないので、とてもエキサイティングです。ハーフタイムでの盛り上げなど、見せ方も練られているので、試合中も試合の前後も観客を惹きつける魅力があります」(明石さん)
「初めてアリーナで観戦したときは興奮しました。コートと観客席の距離が近いので迫力がありますし、選手とファンの一体感もあります。この魅力を多くの人に知ってもらうきっかけづくりをするのも私たち日本郵便の仕事のひとつだと思っています」と寺門さんも言う。
明石さんはB.LEAGUEのパートナーとなったことで、日本郵便として地域への貢献がより前に進むと感じている。
「小学校から高校までの間で多くの人が授業で一度はバスケを経験しているかと思います。それだけ馴染みのあるバスケの力は強いです。それに実際にアリーナに足を運んでみて感じるのが、ファンの層の幅広さと熱量の高さ。私たちもB.LEAGUEのパートナーになったことで、より広い世代のお客様とつながりが持てます。実際に、弊社はもともと中高年齢者のお客様が比較的多いのですが、B.LEAGUEの中心顧客層である青年層や10代のお客様とも接点が増えました。そのことが弊社のサービスに興味を持ってもらえる契機にもなりますし、より地域活性化にも貢献できる一助になるかと思っています」
日本郵便はB.LEAGUEと活動をともにすることの未来も見据えている。明石さんは、B.LEAGUEとのコラボレーションで地域に好循環ができることを狙っている。
「子どもたちがバスケを、B.LEAGUEのクラブを好きになってくれることで、クラブがある地域を好きになり、その愛着が地域発展の活力になります。弊社もこの活動を継続して良いサイクルを作ることで一緒に地域発展に貢献できればと思っています」
寺門さんも「生まれ育った町を好きになることが、地域の盛り上げにつながることだと思います。その好きになる理由になりうるのがバスケ、そして各地にあるB.LEAGUEクラブが持っている力だと感じています。そのお手伝いをすることがパートナーである意味だと思います」と言う。
日本郵便がB.LEAGUEのパートナーとなってから3シーズン目。両者が組むことで、地域や子どもたちに笑顔が広がりつつある。数年先、数十年先、もっと多くの笑顔のために、地域の活性のために、これからもバスケを通じた社会・地域貢献活動で歩みをともにする。