4years.
Presented by JBA/B.LEAGUE

楽しみながらSDGsを学べる「ドルフィンズクエスト」©NAGOYAD

名古屋Dの社会的責任活動「ドルフィンズスマイル」 スポーツの力で環境問題の解決へ

2022.08.31

Bリーグでは、各クラブがさまざまなSDGsの取り組みを促進している。その中で気候変動に対していち早く行動を起こしたのが名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(以下、名古屋D)だ。名古屋Dはなぜ環境問題に注力するのか。社会的責任活動「ドルフィンズスマイル」を通して実現したい未来とは。「ドルフィンズスマイル」を中心となって進める経営企画の須賀綾乃さんに話を聞いた。

スポーツの力でより良い未来を

「子どもたちにとって、希望となる一日になりました」
訪問した児童養護施設のスタッフから掛けられた言葉に、名古屋Dの須賀さんはスポーツの持つ力の大きさを実感した。

Bリーグの社会的責任活動「B.Hope」の一つ「届け、バスケ!supported by 日本郵便」の一環として、中東泰斗選手とともに名古屋市内の児童養護施設へバスケットゴールとボールの寄贈に訪れた時のことだ。

「『選手と一緒にバスケをするという貴重な経験を通して、スポーツは楽しい、自分ももっとバスケをやってみたいと、子どもたちが未来を考える時間になりました』と想像以上に喜んでいただきました。ずっと遊び続けている子もいて、バスケットボールがあるだけで子どもたちが元気になる。その姿を見て、私たちにとってもこの活動の大切さをあらためて考える時間になりました」

児童養護施設の子どもたちをホームゲームに招待した©NAGOYAD

日本初「スポーツ気候行動枠組み」新基準に署名

「名古屋の誇りとなるドルフィンズ」をクラブビジョンに掲げる名古屋Dは、2020年に社会的責任活動「ドルフィンズスマイル」をスタート。“Planet” “People” “Peace”の3つのPを基軸とした「オフコートの3P」をコンセプトに、行政との連携を図りながら地域の課題解決に積極的に取り組んできた。

「ドルフィンズスマイル」の先進性は、SDGsの中でも最重要項目とされる地球環境・気候変動問題に注力しているところにある。2020年12月17日には、FIBAやNBAのゴールデンステートウォリアーズ、2024年パリオリンピック組織委員会などグローバルスポーツ界が一丸となって取り組む国連「スポーツ気候行動枠組み」に日本のプロスポーツ1部所属クラブとして初めて署名(2021年12月28日にはCOP26で発表された新基準へも日本で初署名)。80以上の世界のスポーツ団体とともに2030年のCO₂排出量50%削減、2040年の排出量正味ゼロを目指している(署名団体はCOP26までに280以上)。

「試合を行う際にもCO₂を排出しますし、ファンのアリーナへの移動も環境に負荷をかけています。私たちがホームゲームを行うドルフィンズアリーナは地下鉄の駅から徒歩5分ほどの好アクセスにもかかわらず、愛知県は車社会ということもあり、約40%の方が車で来場されています。試合そのものを持続可能なものにするためにも地球環境問題への取り組みは不可欠ですし、ファンの方への啓発を行い、意識変革・行動変容を促せるのもスポーツだからこそできることだと考えています」

「地球に良いことができる」観客からも好評

名古屋Dのホームゲームでは選手がプロデュースしたグルメが人気だが、2020-21シーズンからはそれらに使用する容器を環境に配慮した素材へと変更。紙製の容器や植物由来の原料を25%配合したバイオマスプラスティックカトラリーを使用するなど、飲食容器の81.9%を脱プラスティック素材に変え、プラスティックごみの削減を実現した。

「アリーナで食事をしたら、結果として社会貢献につながっていた。ドルフィンズの試合に来て、地球に良いことができるのはうれしいという声を多くいただきました」。須賀さんは観客が環境問題への関心を持つきっかけを提供できたと手応えを口にする。

しかしながら、Bリーグのホームゲームは30試合。あくまで“非日常”だ。より高い成果を上げるためには、日常を変える必要がある。そこで昨季は、ファンに日常生活の中でも環境問題に取り組んでもらおうと、6月5日の「環境の日」「世界環境デー」にあわせて環境啓発POPをデジタルデータで配布。「こまめに電気を消そう」など選手やマスコットからのメッセージが書かれたPOPは「子どもたちがゲーム感覚で環境問題に取り組むきっかけになった」と好評だった。

クラブが率先して行う脱プラの取り組みは観客が関心を持つきっかけになった©NAGOYAD

「環境の日」「世界環境デー」にあわせて環境啓発POPを配布した©NAGOYAD

さらに今季は名古屋市と組み、市のアプリを利用して、ファンが楽しみながら環境に配慮したイベントに参加できる企画を検討中だという。「アンケートの結果を見ると、今後はCO₂排出量の少ない交通手段を選びたいという方が80%もいらっしゃいました。ドルファミ(名古屋Dファンの呼称)は意識の高い方が多いので、今後も一丸となって取り組んでいきたいです」

また、2021-22シーズンのホームゲームでは、名古屋スポーツコミッションと共催でSDGsをテーマにしたクイズラリー型イベント「ドルフィンズクエスト」を開催。クイズに全問正解するとドルフィンズのアイテムがもらえる企画で、子どもたちが楽しみながらSDGsを学べる機会を提供した。

「もったいない」を「ありがとう」へ変えるフードドライブ

環境問題に加えて、名古屋Dが重点的に取り組むのが、経済的・社会的に恵まれない境遇にある子どもたちに笑顔を届ける活動だ。冒頭の児童養護施設への訪問のほか、昨季は名古屋市環境局と共催で、ホームゲーム会場で初めてフードドライブを実施した。フードドライブとは家庭で余っている食べ物を持ち寄り、フードバンクを通じて、子ども食堂などへ届ける取り組み。選手が動画で呼びかけるなど積極的な広報活動を行ったこともあり、2日間で60人以上が参加。286品目の食材、お米15kgなど108.8kgの食品が集まった。「小さいお子さんがお小遣いでおやつを買ってもってきてくれたんですよ」と須賀さんから笑みがこぼれる。

「フードバンクの方とお話をする中で、常にお米が不足しているという実態を知りました。今季から始動する子ども支援に特化した『ドルフィンズスマイルCOCO(ここ)プロジェクト』では、地域の農家さんやファンの皆さんの力をお借りしながら、ドルフィンズ米を育てる予定です」

フードドライブに多くの人たちが参加してくれた©NAGOYAD

選手とクラブが一体で地域課題に取り組む

「ドルフィンズスマイルの活動を通じて、選手自身が地域の課題や自分達の立場を理解し、自発的に提案してくれることが増えました。選手とクラブが一体となって社会的責任活動に取り組むことができるのは、ドルフィンズの大きな強みです」

齋藤拓実選手は、新型コロナウイルス感染症の影響で学校行事が中止になった学生たちに青春の思い出を作る機会を提供したいと、「みんなで創ろう青春プロジェクト!」を立案。自らクラウドファンディングで資金を集め、今年7月には名古屋の中心部にあるオアシス21で、約30人の高校生、大学生と一緒に「通りすがりの文化祭~“青春”取りもどし大作戦~」を開催した。

張本天傑(てんけつ)選手も昨季、難病の子どもたちを支援するために「張本天傑シート」をプロデュース。コロナ流行前に病院を訪問し、難病の子どもたちにバスケを見せる機会があった張本選手は、コロナ禍で直接の交流ができない中、このシートの収益を寄付することで彼らをサポートしたいとクラブに申し出た。

今季より張本選手は、地域の優良NPOと連携し子どもに特化して支援する「ドルフィンズスマイルCOCOプロジェクト」のアンバサダーに就任。また齋藤選手が「地球環境問題」、須田侑太郎選手が「女性活躍推進」と、今季名古屋Dが重点を置く活動のアンバサダーを務める方針だ。

「スポーツ選手は競技だけではなく、これだけ社会を動かせる存在なのだと、子どもたちのロールモデルになってもらいたいです」

2022-23シーズン開幕カード記者会見に出席した名古屋Dの張本天傑(左)とシーホース三河の西田優大(右)©B.LEAGUE

新シーズンは愛知ダービーで開幕

2022-23シーズンのBリーグは、9月29日にドルフィンズアリーナで行われる名古屋Dとシーホース三河の先出しの開幕戦で幕を開ける。

ショーン・デニスHC(ヘッドコーチ)体制2季目となる名古屋Dは「西地区優勝、CSのホーム開催」を目標に掲げる。三河との愛知ダービーは両者のプライドがぶつかり合う激戦が予想されるが、オフコートでは両クラブが手を取り合い、フードドライブを開催する予定だ。

「開幕戦のフードドライブは、両チームのファンに喜んでもらえるような企画を考えています。愛知県にはB1チームが4つあるので、開幕戦をきっかけに、それぞれのダービーではフードドライブを行うというように活動を広めていけたらいいですね」

「観て楽しいと感じてもらえるバスケ」を追求する名古屋D。同様に、SDGsでもファンと楽しみながら進めていくのがドルフィンズスタイルだ。新シーズンも笑顔になる活動をたくさんの人たちに届けてくれるだろう。

ドルフィンズスマイル
ドルフィンズスマイルCOCOプロジェクト
B.LEAGUEの社会的責任活動「B.LEAGUE Hope」
B.LEAGUE 2022-23シーズン 開幕戦の情報はこちら