4years.
Presented by JBA/B.LEAGUE

山梨で開催された「JBPA ASSIST 〜バスケ選手があなたの力に〜」 ©︎JBPA/B.LEAGUE

バスケ選手が夢をアシスト 「JBPA ASSIST」の活動

2022.07.29

B1~B3でプレーする選手が所属する日本バスケットボール選手会が、選手会の協力が必要とされる企画を一般公募。そのなかから選定された7件の企画実現のために、選手たちが6月~7月にかけて全国各地を訪れた。「JBPA ASSIST 〜バスケ選手があなたの力に〜」と名付けられたこのプロジェクトに、選手たちはどのような思いを持って活動しているのだろうか。選手会会長の田口成浩(しげひろ)選手(秋田ノーザンハピネッツ)と、山梨で開催された企画に参加した副会長の田渡凌(たわたり・りょう)選手(熊本ヴォルターズ)、中澤海斗(かいと)選手(バンビシャス奈良)に話を聞いた。

地域や人とのつながりを大切にするJBPA

7月9日、山梨県笛吹市にある「いちのみや桃の里スポーツ公園」の体育館には、およそ50名の小中学生が目を輝かせながら笑顔でバスケをプレーする姿があった。その姿をカメラやスマホを手にした親たちが優しい目で見つめている。

それもそのはず、B.LEAGUEクラブのない山梨に選手が訪れ、直接バスケを教えてくれる特別な一日だったからだ。このイベントは、日本バスケットボール選手会(以下、JBPA)が社会課題やバスケの普及に取り組む団体や個人の活動を支援するプロジェクト「JBPA ASSIST」の一環として実施した「JBPA ASSIST 〜バスケ選手があなたの力に〜」の企画で選手が訪問するもの。

そもそもJBPAは、選手たち自身がバスケ界の将来を考え、「日本のバスケをもっとメジャーにしたい」という思いで2013年に発足した団体で、チャリティーや復興支援などの社会貢献活動、そしてコロナ禍ではバスケを頑張る子どもたちやファンとオンライン上でコミュニケーションを取るなど、地域や人とのつながりを大切にしている。

山梨のイベントに参加した田渡選手と子どもたち

選手会会長・田口成浩選手の思い

現在JBPAの3代目会長をつとめるのは、田口成浩選手。
「自分は新型コロナウイルスの流行とほぼ同時期に会長に就任したので、リアルのイベントをなかなか実現できなかったのですが、やっと現地に行って地域の方たちと会えるのが本当にうれしいですね」と田口選手は話す。

今回実施された「JBPA ASSIST 〜バスケ選手があなたの力に〜」では、全国各地のバスケチームや幼稚園などの団体や個人から公募で寄せられた企画を選定し、7件の企画を実施。田口選手や山梨のイベントに訪れた副会長の田渡凌選手を中心に、JBPA所属の各クラブの代表選手で話し合いを重ね7件の企画に決定した。選ばれた企画は、たとえば「幼児500名の前でプロ選手のプレーを&バスケを始めるきっかけに」や「鹿児島県の南の隅、バスケ部もない地域で子どもたちの夢のきっかけに」などだ。

田口選手は「応募いただいた企画はどれも本当にいい企画だったので、7件に絞るのに苦労しました。そのなかでも『子どもたちにより希望を与えられる』ということや企画のストーリー性などの要素を重視して決定しました。たとえば山梨のイベントについては、B.LEAGUEクラブがない山梨に選手が行くことで子どもたちにB.LEAGUEを身近に感じてもらい夢を与えたいという思いが強かったです」と話す。

岩手県大槌町のイベントで子どもたちとプレーする田口選手(右から二人目)©︎JBPA/B.LEAGUE

今回のイベントでは、総勢20名ほどの選手たちがそれぞれ、岩手県陸前高田市や鹿児島県南大隅町のミニバスチーム、東京都内の幼稚園など全国各地を訪れたが、田口選手は「被災地のバスケコートで、子どもたちと選手のふれあい」の企画のため、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県大槌町を訪れ、昨年秋にオープンしたバスケコート「HANAMICHI PARK」で子どもたちと触れ合った。

「二日間滞在して、初日に中高生向けのバスケクリニック、翌日に『桜木杯』という大会に参加して地元の方たちとプレーしました。やはり、子どもたちの笑顔や現地の方の思いなどその土地に行ってこそ感じられることが多いですし、子どもたちが喜んでくれる姿を見るとこちらも元気になり、もっと頑張らなければという気持ちになりますね」

地域の方や子どもたちと選手が直接触れ合うことを大切に、そして選手自身の地域や人に貢献したいという思いやりにあふれているのが、今回の「JBPA ASSIST 〜バスケ選手があなたの力に〜」だ。

岩手県大槌町で開催された「桜木杯」にも田口選手らB.LEAGUE選手が参加 ©︎JBPA/B.LEAGUE

山梨のイベントには、田渡凌選手と中澤海斗選手が登場

そして、7月9日に開催された山梨でのイベントに参加したのは、田渡凌選手と現在B.LEAGUE唯一の山梨県出身プレーヤー、中澤海斗選手。

山梨のイベントに参加した田渡選手(右)と中澤選手

この企画に応募した、山梨でバスケを普及・推進するバスケスクールを開催する澤田昌宏さん(NPO法人バスケットボールスターズ)は、「『“本物”を子どもたちに見せることが大事』という思いが強かったので応募しました。山梨にはB.LEAGUEクラブがないので、なかなか“本物”に触れる機会がありません。それがこの企画で選手がコーチング、さらに子どもたちにバスケや普段の生活の心構えについても教えてくれる。本当に感謝しかないです」と話す。

山梨でバスケを普及・推進する澤田昌宏さん

今回の山梨でのイベントは2時間ほど。JBPAからプレゼントされたお揃いのTシャツを着た50名の子どもたちが2グループにわかれ、田渡選手と中澤選手が練習方法やドリブルのコツなどを教えて子どもたちが実践していく。練習メニューも、田渡選手と中澤選手がこの日のために考えた特別なメニュー。ドリブルからのレイアップシュートの練習や腰を低く保つドリブルの練習などで、今後ひとりでも仲間とでも楽しめレベルアップにつながるメニューが並ぶ。子どもたちが選手の言葉を聞き漏らさないように耳をそばだてる姿も、教えられたコツを真剣に実践する姿も、とにかく目が輝いている。

中澤選手のドリブルのコツを真剣に聞く子どもたち

田渡選手は個人でも「TAWATARI PROJECT」を立ち上げ、チャリティーイベントや、フリースクールでバスケの授業を開催したり、B.LEAGUEの試合に子どもたちを招待したりと多くの社会貢献活動を積極的に行っているが、「B.LEAGUEクラブがない山梨の子どもたちと一緒にプレーすることで、何か彼らが動き出すきっかけになれたらという思いがありました」と話す。

その田渡選手も今回のイベントで、また新たに思うところがあった。「自分たちから必要とされていると思われる場所に行くことも大切ですが、今回の企画の応募のように、『求められている場所に僕たちが行く』ということに大きな意義を感じました。だからこそ、今日参加した山梨のイベントは自分たちにとってもすごく有意義でしたし、少しでも子どもたちに思いが伝わるように考えていました」

田渡選手は、イベントで子どもたちにプレーのコツを教えるときは大きな声を出し、また子どもたちがプレーの最中でも止めて、丁寧にコツを教える。自身も汗を流しながらコーチングする姿に、子どもたちのプレーもどんどんヒートアップしていくのが印象的だ。

子どもたちにアドバイスをおくる田渡選手

現在、山梨県出身の唯一のB.LEAGUE選手の中澤選手は、地元の子どもたちが一生懸命プレーする姿にひときわ笑顔を見せる。

「山梨出身として、こういう企画で子どもたちに貢献できるのがすごくうれしいんです。自分が高校生のときも感じていたことですが、B.LEAGUEクラブがある地域と比べると、山梨では選手のプレーを間近で見るチャンスはなかなかありません。だからこそ、今日のようなイベントや自分を通して、『山梨って最近バスケ盛り上がっているよね』と話題になるような貢献活動に積極的に取り組んでいきたいです」と思いを口にする。

夢のような2時間の後には

イベントの終盤には、「田渡選手・中澤選手vs子どもたち5人チーム」のミニゲームも行われた。子どもたち全員が試合に出場できるように10チームほどにわかれたすべてのチームに対して選手2人で対戦。両選手のダンクシュートやスリーポイントシュートが決まるたびに子どもたちからは大きな歓声がわき、また対戦している子どもたちは、「ドリブルで抜こう」「得点を決めよう」「プロ選手のドリブルを止めよう」と必死にプレーする。

田渡選手のダンクに子どもたちから大きな歓声があがっていた ©︎JBPA/B.LEAGUE

この姿をプレーしながら見ていた中澤選手も「子どもたちから『すごい!』『うまい!』と歓声があがるとうれしくなりますし、プロとしてのプレーを見せて喜んでほしいと思いますよね」と笑顔を見せる。

田渡選手も「子どもたちのエネルギーはすごいですし、喜んでくれているのを見ると、こうしてプロとして子どもたちと触れ合う意味をもう一度考えさせられますし、『もっと頑張ろう』と思いますね」と口にする。

夢のような2時間はあっと言う間。試合後に選手たちからのプレゼントが子どもたちに送られると受け取った子どもはうれしそうに見つめながら大事に抱える。澤田さんをはじめとした地元の方からは、選手に地元名産の桃が贈られたが、このような交流もリアルでイベントを実施できたからこそ。子どもたちから選手への質問タイムでは、「バスケをはじめたきっかけ」や「いままでに対戦してすごいと思った選手は?」「バスケ以外で努力したことは?」など多くの質問が飛び交い、田渡選手と中澤選手が真摯に答えていく。

イベント後には、子どもたちがサインを求める長い列ができた ©︎JBPA/B.LEAGUE

田渡選手の「何事も続ければ成長できるから、できるだけ続けてください。プロのバスケ選手でもそれ以外でも『必ずできる』という強い気持ちをもつことで、夢に近づくことができます。目標ができたら強い気持ちで頑張ってください」という締めの言葉は、きっと子どもたちにとって大切な思い出とともに残る言葉になるはずだ。

B.LEAGUEクラブのない山梨でのこのイベントを子どもたちが待ち望んでいたことは、イベント終了後も選手たちに話しかけたり、サインをもらうのに長い列ができたり、写真を一緒に撮影したりする様子を見てもわかる。今回一般応募の「JBPA ASSIST 〜バスケ選手があなたの力に〜」だったからこそ実現したこのイベント。「求められている場所に選手が行く」という田渡選手の言葉があらわすように、JBPAは選手個人個人の社会や地域貢献の強い思いをもって進んでいく。


「JBPA ASSIST 〜バスケ選手があなたの力に〜」特設サイト

B.LEAGUEの社会的責任活動についてはこちら