君座武志“和製ギブス”となってインサイドの再構築を、東海大の鍵を握る新23番
第62回関東大学バスケットボール新人戦 5位決定戦
6月12日@国立代々木競技場 第二体育館(東京)
白鷗大学 73-67 東海大学
「小さくてもやってくれましたね。見ていて楽しかったです」。関東大学新人戦(ルーキーズトーナメント)の最終戦を終え、東海大学の陸川章ヘッドコーチ(HC)が名指しで称(たた)えたのは君座(くんざ)武志(1年、宇都宮工業)だった。試合には敗れ、同選手は最終的に5ファウルで退場となった。それにもかかわらず指揮官にそう言わしめたルーキーの4years.が、非常に楽しみだ。
強靭なフィジカルを持つ“NEXT佐土原”
身長188cm・体重95kg。ポジションはパワーフォワード兼センター。昨年まで東海大のインサイドに君臨した佐土原遼(現・広島ドラゴンフライズ/192cm・97kg)の背番号23を受け継ぎ、似たような体格で主戦場も同じ。大学バスケメディア「CSPark」では、早くも「#俺たちの佐土原 の背番号を受け継ぎし最終兵器弐号」とフィーチャーされた。先に述べておくが、君座が23番を選んだのは佐土原を意識したわけではないらしい。
彼の最大の武器は、身長をカバーするフィジカルの強さ。宇都宮工業高校(栃木)時代からゴール下でゴリゴリと相手を押し出し、3年生の時には不動のエースとして得点とリバウンドを荒稼ぎしてきた。
ただ、大学ではルーキーということもあり、現時点でそのストロングポイントが突出しているわけではない。4点差で敗れ、自身も無得点に終わった筑波大学との準々決勝後は、「自分はフィジカルを強みにしてるんですけど、筑波大学さんは身長も高くフィジカルも強かったです。この試合で改めて高校と大学のフィジカルの違いを味わいました」と、本人としても大学のバスケを肌で感じたようだ。
しかし、筑波大戦から中1日で迎えた白鷗大学との5位決定戦、そこには身長202cmのジョエル・モンガ(1年、別府溝部)相手にも果敢に挑み続ける君座の姿があった。約19分の出場で11本のシュートを放ち、確率は振るわなかったものの9得点。リバウンドでは合計8本中6本のオフェンスリバウンドをもぎ取った。
「自分が受け身になってしまったらダメだと思ったので、常に体を張ってプレーしました。失うものはなかったですし、前回の筑波戦で持ち味が出せなかった分、今日出し切るしかなかったので、そこに関しては持ち味が出せたのかなと思います」
ゴール下での戦いを可能にする巧みなステップ
ゴール下に陣取る君座を見ると、確かに周りのインサイドプレーヤーに比べ、身長で劣っていることが多い。けれど、オフェンスでは大男たちを巧みなステップワークでかわして得点を奪うスキルに長(た)けており、陸川HCも「小さいけれど、相手をステップでかわすうまさがあります。高校のウインターカップで彼を見た時も、状況を見て、相手をいなしながらのステップインが上手だなぁと思いました」と評価する。
フィジカルに加え、君座がインサイドで力を発揮すべく身につけたのが、横の動きで相手を振り切るステップワークだった。この技術は、高校時代に千村隆コーチのもとで習得したものだと本人は言う。
「千村先生にはゴール下でのステップを3年間でいろいろ教わりました。そのステップや体の使い方、フェイクなどは大学でも通じる部分があるので、これからもかなり生かせると思っています」
時系列は前後するが、君座は中学校1年生の時にバスケを始めた。小学校時代は地元・栃木県のドッジボールクラブに所属していたようで、バスケとの出会いは「中学校の担任の先生がバスケ部の顧問で、周りに比べれば身長が高かったので、バスケをやろうかなぁという感じでした」と、ひょんなことがきっかけだ。
恩師である千村コーチによれば、入学当時の君座は「フィジカルはもともと強かったけど、バスケットに関しては荒いプレーが多かった」という。「でも」と千村コーチは付け足し、教え子のさらなる成長を楽しみにしている。
「吸収力が高くて素直な子なので、『これはダメだよ、これはいいことだよ』と一つひとつ教えながらやっていくうちに、だいぶ良くなりましたね。武志も東海大に行って良かったと言っているので、これから陸川に鍛えてもらいたいです」
日本一奪還へのキーマンになれるか
今大会戦った4試合で「少し自信がついた」と話したルーキーは、「もっとフィジカルを鍛えて、ゴール下のシュートは確実に決めて、ペリメーター(ペイントエリアの外から3Pラインの内側まで)のシュート確率も上げていきたいです」と今後のレベルアップを誓った。
「陸川さんからは今はルーキーだからどんどん失敗しろと言われていますし、佐土原選手のようになってくれれば、という期待を寄せられています」とも明かし、「いつかは佐土原選手を越えられる存在になりたい」という思いも抱いているようだ。
佐土原と八村阿蓮(現・群馬クレインサンダーズ)が卒業した今季の東海大にとって、インサイドの再構築は日本一を目指す上で避けては通れないミッションだ。それだけに、新たな可能性を秘めた君座にかかる期待は小さくないだろう。陸川HCも晴れやかな表情で今後の君座について話す。
「シュートレンジをもうちょっと広げて、中と外でプレーできるようになってほしいなと思っています。ただ、今の選手はみんな3ポイントを打ちたがりますが、彼にはインサイドでプレーしてほしい。相手からすると、ジェフ・ギブス(長崎ヴェルカ/188cm110kg)みたいで嫌なタイプだと思うんですよ。ぜひ、“和製ギブス”になってほしいなと思います」
今大会のベスト4以上に与えられる全日本大学新人戦の出場権を逃した東海大は、これから強化期間に入る。チーム浮沈の鍵を握る新23番は、秋のリーグ戦ではどんな姿で我々の前に現れるのだろうか。