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新人王の日体大・西部秀馬「大学こそは日本一に」 米須玲音と小川敦也の背中を追い

西部は「チームを引っ張れるのは自分だ」と決意し、関東大学新人戦に挑んだ(撮影・すべて松永早弥香)

第62回関東大学バスケットボール新人戦 決勝

6月12日@国立代々木競技場 第二体育館(東京)
日本体育大学 77-71 日本大学
日本体育大学が21年ぶり9度目の優勝

関東大学新人戦(ルーキーズトーナメント)で日本体育大学は21年ぶり9度目の優勝を飾り、西部秀馬(にしべ・しゅうま、日体大1年、東山)が新人王に輝いた。それでも当の本人は少し浮かない顔。「全然うれしいんですけど、複雑です」

日体大が日大を破り21年ぶりの新人戦優勝、月岡煕「責任感が強くなった」

優勝も新人王も「チーム全員でとったもの」

日体大の主将を任された司令塔の土家拓大(たくと、2年、北陸)は大会の直前にケガをしてしまい、出場がかなわなかった。その関係もあってチーム編成が変わり、スタメン5人のうち、2年生はムトンボ ジャンピエール(2年、東山)のみ、1年生から西部、早田流星(福岡第一)、月岡煕(ひかる、昌平)、石川響太郎(小林)の4人が選ばれた。西部は「4人の中で一番自分が経験があったのでチームを引っ張れるのは自分だと思いました」と言い、自分からまず声をかけていくことを意識したという。

日体大にとって2試合目となった中央大学戦では大量リードを許す展開となったが、第3クオーター(Q)で逆転。「チームのみんなで戦うことができて、ここを乗り切れたのがチームがまとまった理由だと思います」と西部は振り返る。準決勝の筑波大学戦では積極的に3ポイントシュートを打ち、ゲームハイの33得点で勝利に貢献した。しかし日本大学との決勝では徹底マークを受け、放った3ポイントシュートはチーム最多の12本だったが、成功は2本にとどまった。

西部は東山で学んだ走るバスケを自分の強みとしている

「昨日(準決勝)ではシュートタッチが良くてしっかり点がとれたから、今日(決勝)も狙っていこうとチームの中で決めてたんですが……。チームに迷惑をかけないことを意識してたんですけど、前半でしっかり迷惑をかけてしまったので、そこは駄目だったな。今日は全然駄目でチームに迷惑をかけてしまったので、それで新人王をもらっても、という気持ちがあります。もちろんうれしいなと思っているんですけど、チーム全員でとったものなので、チーム全員にあげたいです」

決勝で残した悔い、改めて感じたチームの力。そんな思いが「複雑」という言葉に込められていた。

西部にとって特別な意味があった準決勝と決勝

西部は東山高校(京都)2年生の時にウインターカップで準優勝を果たし、最後のウインターカップでは優勝を目指していたが、2回戦で前橋育英高校(群馬)に94-97で惜敗。「大学こそは日本一に」という思いを胸に、日体大へ進んだ。日体大は東山と同じく攻撃的なバスケスタイルで、自分に合っていると西部も感じた。藤田将弘監督からは「自分の長所を生かしてほしい」と言われ、強みである3ポイントを磨き、走るバスケを貫くことを心に決めた。

西部(左)は決勝で米須と戦えることを楽しみにしていた

決勝では東山の先輩である米須玲音(日大2年)と戦えることも楽しみだった。米須は1月30日に右肩関節脱臼のケガを負い、当時は全治未定と診断された。それから約4カ月を経て、今大会が復帰戦となった。まだ万全の状態ではなく、大東文化大学との準決勝ではベンチでサポートに徹していた。だが決勝では第2Qで途中出場し、前半を10点リードで終える原動力となった。試合は延長戦の末に日体大が勝利したが、西部は「米須さんと久しぶりに一緒にやれて楽しかったし、そしてやっぱりうまいな。そこを吸収して頑張っていきたいです」と口にした。

もう一人、対戦を楽しみにしていた先輩がいた。京都府内で強烈なライバル関係を築いている洛南高校出身の小川敦也(筑波大2年)だ。「洛南の時から憧れてて、あの身長であのプレースタイルができるのはすごくうらやましいし、目標として動画とかもちゃんと見てマネしたりしてて。その選手と試合ができるのは、自分の中で結構うれしかったです。だから筑波戦は一番気合が入っていた試合だったと思う」。その気合が、33得点という結果につながったのだろう。

小川に対し「自分も小川さんから技を盗んで成長していきたい」と西部は言う

西部自身、今大会が始まる前は日体大が優勝できるとは思っていなかった。しかし試合を重ねるうちにどんどんチームがかみ合っていき、「これなら全然いけるんじゃないか」と思い、「ここまできたら絶対優勝しよう」という気持ちに変わっていった。

西部が大会を通じて得たものは「精神的な強さ」だという。チームを引っ張り、大一番で萎縮することなくシュートを打ち続け、自分の調子が悪くてもチームの支えの中で気持ちを切らすことなく戦い抜いた。この大学4年間でどんな成長曲線を描いていくのか、期待は高まるばかりだ。

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