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特集:第73回全日本大学バスケ選手権

米須&コンゴローの日大最強ルーキーコンビ、「不安を吹き飛ばす」活躍でインカレVへ

米須(右)とコンゴローは高1だった時から交流があったという(写真提供・日本大学バスケットボール部)

春のトーナメントで15年ぶりの優勝を飾り、オータムリーグでも2位の好成績を収めた。日本大学の躍進の大きな理由は、2つあると思っている。1つは今シーズンから掲げる徹底した「全員守備」の意識が実を結んだこと。もう1つは2人のスーパールーキーの加入だ。米須玲音(東山)とコンゴロー デイビット(報徳学園)。ともに入学時からチームの中心を担い、ここまで充実したシーズンを送っているルーキーコンビに迫った。

米須玲音を筆頭にヤバいぞ日大ルーキー! 大学バスケ界の「台風の目」になる予感大
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日大入学前、チームがまさかの方向転換

大学入学前、これからディフェンス練習が大半を占めることになるなんて思ってもいなかった。日大と言えばどんどんシュートを打って押し切る、オフェンスのチームじゃないか。

「いや、本当に川崎に行って良かったっすよ」

オフェンス重視の東山高校(京都)では、1年生の頃から卓越したパスセンスを武器に司令塔を担ってきた米須。ディフェンスの意識はお世辞にも高いとは言えなかったが、昨年12月に特別指定選手として加入したB1の川崎ブレイブサンダースで徹底的にディフェンスを学んだ。

「僕は日大に入る前に川崎に行っていたので、自分が学んだことを生かせるなと、いい方向に考えました。トーナメントでちゃんと結果も出せたので、うまくハマったという感じです」

米須は日大に進む前に川崎でプレーできたことが大きなきっかけになった(撮影・以下全て小沼克年)

一方、「自分は高校の時からディフェンスにも気持ちがあった」とコンゴロー。高校時代は現在B2に所属する西宮ストークスの練習にも参加し、そこでもディフェンスを教わったそうだ。それでも、日大の一員になってからは苦労した。

「知らないディフェンスがたくさん出てきて、それをやるって聞いた時は『うわー、4年間死ぬー』って思った(笑)」。けれど、米須同様、コンゴローも早々に結果が出たことで確信した。「やっぱりディフェンスは大事」

ジャンピがつないだ2人の仲

米須は言う。2人が最初に出会ったのは高校1年生の時だと。「高1の近畿大会ですかね。もともとデイビットがジャンピと仲が良くて、そのつながりで僕も仲良くなりました」

ジャンピとは東山高時代の米須の同級生、ムトンボ・ジャン・ピエール。現在は日本体育大学でプレーする身長206cmのセンターだ。スプリングトーナメント期間中、米須は高校時代の相棒に比べてコンゴローの方が優れている点をこう話していた。

「周りの留学生と比べてもゴツくてフィジカルが強いです。ポストプレーでもうまさを持っているので、僕との合わせのプレーからしっかりシュートを打たせるように心がけています。それで決めてくれれば、僕のアシストもつきますし、デイビットの得点にもつながるので、そこを(入学後の)3カ月間練習してきました」

コンゴローは、新たな相棒となった米須をどう思っているのだろうか。

「米須のいいところはゲームコントロール、チームリーダーとしていっぱい話せるところ、あとはアシスト。アシストはどこに出すか分からないし、ノールックパスはちゃんと準備せなアカンから大変。でも今は段々分かってきました。普段はけっこうふざけていて、僕のことを馬鹿にする。最初は静かな人だと思ってたけど、結構うるさいです」

コンゴロー(右)は持ち前のフィジカルを生かし、攻守両面での活躍でチームに勢いを持たらす

11歳でバスケットボールを始め、14歳の時にコンゴから日本へやってきたコンゴロー。少しばかり方言が混じる日本語で、周りと問題なくコミュニケーションがとれる点も魅力の1つだ。余談だが、来日当初によく連れて行ってもらった思い出の場所は「すき家」だという。

「日本に来てからコーチによくすき家に連れていってもらって、そこから牛丼ばっかり食べてた。たまには卵を上にかけて、1週間ぐらいずっと食べてた」。そのおかげで、コンゴローは牛丼、焼き肉定食、カレーライスが大好物になった。ちなみに嫌いな食べ物は、アスパラガス、豆腐、納豆。米須はトマトが大の苦手らしい。

15年ぶりの優勝に貢献し、揃って個人タイトルも受賞

フロアリーダーとして周りを気持ちよくプレーさせる司令塔と、ゴール下で奮闘する大黒柱として、大学入学後もいきなり主力に抜擢(ばってき)された2人。春のトーナメントでは揃(そろ)って個人賞を獲得したことも、スーパールーキーと呼ぶにふさわしい勲章だ。

アシスト王に輝いた米須は、ライバルとして意識し続ける河村勇輝(東海大2年、福岡第一)を抑えての受賞。コンゴローはリバウンド王と得点王(3選手同率)、優秀選手賞の個人三冠を達成し、2人は揃って「本当に嬉(うれ)しかった」と振り返る。

「(アシストは)自分が得意としている部分なので、トーナメント中も結果を見ながら過ごしていました。決勝の前は河村さんが2本差に迫っていたので、試合では自分のディフェンスでアシストをさせないことを心がけていて、それがいいパフォーマンスにつながりました」(米須)

日大は15年ぶりに春のトーナメントを制し、コンゴロー(左から2人目)もうれし涙を流した

「リバウンドは準決勝が終わった時に原先輩(大晴、日大4年、東京)に『デイビットは今、八村阿蓮(東海大4年、明成)に負けてる』って言われた。得点も筑波の13番の人(二上耀、4年、北陸)がすごかった。次の日は筑波と日体の試合があったからジャンピに連絡した。『あなたはブロックがすごいから、あの人のことをいっぱいブロックして』って。決勝の前日はあまり寝れなかった。夜中の3時くらいまでお母さんと電話して、『あまり気にしないで強いプレーを見せてください』って言われた。だから3時に寝て6時半ぐらいに起きて、朝からご飯食べて、トレーニングして、めっちゃ準備しました」(コンゴロー)

コンゴローが東海大との決勝で17得点27リバウンドを叩(たた)き出した裏には、こんなエピソードがあったのだ。

昨年の無念を晴らし、東海大と決勝で再戦を

2位で終えたリーグ戦では、チーム、そして個人としても浮き沈みなくいい状態を維持することの難しさを痛感した。それでも米須は、「1年目で2位になれたこと素直に嬉しくも思っているので、インカレではまた決勝の舞台で東海大学さんと当たって、そこで勝ちたいです」と次なる戦いを見据える。

昨年のインカレを思い出せば、チームとしては苦い記憶が蘇る。早稲田大学に79-85で敗れて2回戦で姿を消したのだ。そして今年も、ともに初戦を突破すれば両者が相まみえるという巡り合わせとなった。

「去年、先輩たちは早稲田大学さんに負けているので、気合が入ってるんですけど、ちょっと心配してる雰囲気も出してます。またやられちゃうんじゃないかって……」

米須いわく、この組み合わせを見てからの先輩たちは、いつもと比べちょっと様子が違ったようだ。ならば、自分たちがその不安を吹き飛ばすような姿、活躍を見せてチームを助ければいい。

米須(右)もコンゴローもインカレ決勝で東海大へのリベンジを目指す

「自分ができることをしっかりやって、1年目らしく、ルーキーらしく楽しくやることが一番だと思っています。自分たちのやりたいバスケをしっかり出して、最後まで活躍したいです」

米須がそう力を込めれば、コンゴローも日本一への意欲を示す。

「自分たちは初めてのインカレなので、どういう雰囲気とか、どのチームがどのぐらいの強いかも分からない。けど、たくさん準備をして自分も日本一になりたいです」

インカレの頂点にたどり着くことができれば、2人にとってもバスケ人生初の景色が待っている。

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