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日大が15年ぶり11回目の優勝 ディフェンスを鍛え、米須玲音らルーキーが爆発

接戦の末、日大は15年ぶり11回目となる優勝を果たした(撮影・全て松永早弥香)

第70回関東大学バスケットボール選手権大会 決勝

7月11日@ 越谷市立総合体育館
日本大学 61-57 東海大学
日本大学が15年ぶり11回目の優勝

7月11日、関東大学選手権(スプリングトーナメント)決勝が行われ、日本大学が昨シーズンから公式戦負けなしで勝ち上がってきた東海大学を61-57で下し、15年ぶり(中止になった昨年も含む)11回目の優勝をつかんだ。日大の城間修平ヘッドコーチ(HC)は「ディフェンス練習しかしていないくらい、常にディフェンスの意識づけをしてきました。それがある程度かたちになってきました」とチームの変化を口にした。

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コンゴローが流れをもたらし、飯尾が悪い流れを変える

昨年のスプリングトーナメントは新型コロナウイルス感染症拡大を受けて中止になったが、今年は例年通りゴールデンウィーク前の4月23日に開幕した。しかし4月25日に東京都に緊急事態宣言が発出されたことを受け、4月28日以降の試合を延期。当初は6月1日に再開される予定だったが、緊急事態宣言の延長を受けて再び延期となった。大会は6月25日に再開されたが、観客を入れての開催は7月6日からとなった。その間に棄権する大学は増え、最終的に21校が棄権し、大会には関東の71校が参加。大会に出場した選手たちはまず、この舞台で戦えることに感謝の意を表した。

コンゴローは決勝で27本のリバウンドを記録した

迎えた決勝、最初にボールを手にした日大はルーキーの米須玲音(東山)を起点にゲームを組み立て、米須のアシストで同じくルーキーのコンゴロー デイビット(報徳学園)が先制点をあげた。身長205cm/体重105kgのコンゴローは持ち前のパワーでインサイドを支配し、リバウンド、特にディフェンスリバウンドを確実にものにし、東海大の勢いをそぐ。東海大のゲームメイクを任された河村勇輝(2年、福岡第一)には米須がぴったりマーク。第1Qを17-10と日大リードで終えた。第2Q開始1分半で東海大は一気に点を重ね、17-17と試合を振り出しに戻す。しかしそこで途中出場の飯尾文哉(日大3年、洛南)が3Pを決め、日大ベンチが沸く。30-25で試合を折り返した。

第3Q最初の得点は、オフェンスリバウンドを拾った八村阿蓮(東海大4年、明成)のシュート。強度を上げた東海大がディフェンスからチャンスをつくり、30-30に追いつくが、米須がフローターシュートで再びリード。追いつかれても飯尾が連続ポイントで点差を広げる。日大は5ファウルとなり、フリースローでの得点を許す。さらに佐土原遼(東海大4年、東海大相模)が素早いドライブを決め、36-37で東海大がリードをとった。しかしすぐ飯尾のシュートでリードを取り返す。試合は44-37で最終Qへ。

激しい競り合いの中、佐土原の3Pで東海大が追い上げムードへ。しかしすぐに飯尾が3Pを決めて勢いを断つ。東海大は3点差にまで追い上げるが、主将・若林行宗(4年、日大豊山)の3Pで再び6点差へ。佐土原が体を張ったプレーでコンゴローを引き寄せ、八村がシュート。4点差に迫った東海大に、残り3分58秒で若林が3Pでのバスケットカウントをつかみ、日大ベンチが大歓声に包まれた。若林はフリースローも決め、56-48へ。東海大も最後まで攻め続けたが、61-57で試合終了。歓喜に沸いた日大メンバーたちは試合後すぐ、城間HCを囲み、笑顔で胴上げをした。

学生たちの手で城間HCが高く舞い上がった

チームの変化を4年生が中心になって促す

これまでの日大は杉本天昇(現・群馬クレインサンダーズ)や松脇圭志(現・三遠ネオフェニックス)のように、世代を代表するシューターたちが活躍するオフェンス力を武器としたチームだった。その一方で、城間HCは常々、選手たちにディフェンスの大切さを説いてきたという。今シーズン、米須やコンゴローなど新しいメンバーを加えるにあたり、改めてどのようなチームを作るのかを話し合った。米須は昨年12月のウインターカップ後、特別指定選手として川崎ブレイブサンダースに加入し、徹底的にディフェンスを学んだ。そんな米須とも話しながら、新しいチームでは「全員でディフェンス」をテーマに掲げた。若林もまた、ディフェンスを鍛える必要性を痛感していたという。

「今までの日大だとオフェンスに目がいきがちだったんですけど、大事なところでディフェンス、リバウンド、ルーズボールがおろそかになってしまい、去年のインカレでは早稲田大学に負けてしまいました。流れをもってくるにはディフェンスの方が大切だとチームに伝えていって、練習でも共有できた結果、試合で『全員でディフェンスをやろう』と声をかけたら、皆が意識ができるようになっていました」

若林主将(右)は同期と協力しながらチームの意識を変えてきた

チームにとっては大きな変化だ。若林は自分ひとりだけではなく、Aチーム・Bチームにかかわらず、4年生全員の力を借りてチームメート全員に浸透させた。「練習のことだけではなくて寮生活でも、4年生が中心になって自分が思っていることを後輩たちにしっかり伝えてくれ、後輩たちもしっかりとついてきてくれました」と同期の支えに感謝している。

また今年は主力だった4年生が卒業し、ゲーム経験がない選手も多くいた。そこで城間HCはあえて飯尾をシックスマンにした。「本来なら飯尾選手はスタートにもってきたいところでしたが、控えのメンバーも重要になってくるので、非常に難しい立場ですけど彼に任せました」。城間HCから流れを変える役割を求められ、飯尾はプレーだけでなく声でもチームメートを支え、何度も流れを日大にもたらした。最優秀選手賞に選ばれたことに対して「控えからMVPとか、自分がとれるとは思ってなかったけど素直にうれしいです」と笑顔を見せた。

飯尾はシックスマンとしてチームを支え、最優秀選手賞に選ばれた

米須が河村にディフェンスで食らいつき、アシスト王へ

この決勝で最初に日大へ流れをもたらしたのは、インサイドでの強さで東海大を圧倒したコンゴローだろう。決勝ではリバウンド27本、得点もチーム最多の17点。1年生ながら優秀選手賞、得点王(68点)、リバウンド王(59本)に選ばれている。コンゴローは自身初となる大学バスケ決勝を前にして、「東海の選手を見たら、パワーがあるし身長もある。自分のチームと東海のチームを比べたら身長が違うなと思いました。その中でも自分が(チームの中で)一番身長もパワーもあるから頑張らないといけない」と決意。その思いが伝わるプレーを見せてくれた。

そのコンゴローとともにスタメンを勝ちとった米須もまた、アシスト王(19本)に選ばれている。前日までの結果を見ると、アシスト数は河村と2本差での1位だった。「河村さんとマッチアップするにあたり、オフェンスというよりディフェンスで、しっかりアタックしようと決めていました」と米須。特にアシスト王がかかっていたからこそ、アシストできないように河村にプレッシャーをかけ、動きを封じようとした。「その部分はある程度できたかなと評価しています」と米須も手応えを感じている。河村のアシストは18本だった。

米須(右)がこれだけ長く河村とマッチアップしたのは、2年前のウインターカップ以来だった

例年であればチームは夏合宿を経て、リーグ戦、そして日本一を決めるインカレを迎える。しかし7月12日に開幕予定だったNext Generation Tournamentが中止になるなど、今年も先行きは見えない。それでもチームの中でやることは変わらない。城間HCは「ゲームの中でオフェンスの方が停滞してしまうことがあり、苦しい時間帯もありました。それをどうやって乗り越えていくのか。次のリーグ戦に向け、もちろんディフェンスを継続しながらオフェンスももう少しバリエーションを増やしていきたい」と目の前の課題に向き合いながら、チームをさらに鍛え上げていく。

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