バスケ

創部4年目で初のインターハイつかんだ星槎国際湘南 敗戦から立ち上がった面談

星槎国際湘南は梅島りの主将(中央)を中心に、激戦区の神奈川を勝ち上がった(すべて撮影・井上翔太)

まだまだ歴史の浅いチームが、初めてとなる全国高校総体(インターハイ)出場を決めた。創部4年目の星槎国際湘南(神奈川)女子バスケットボール部。昨冬のウインターカップにも初出場したが、初勝利はお預けとなった。大学でもバスケットボールを続けている先輩たちの思いも胸に、7月27日から始まる全国の舞台で初の「1勝」をめざしている。

「去年の3年生に頼りっぱなしだった」

今年のチームは悔しい敗戦からはい上がり、全国大会への切符をつかんだ。

5月5日の関東選手権大会神奈川県予選。相模原弥栄と最後の一枠をかけて、5位決定戦を戦った。3点ビハインドで迎えた終了間際、スリーポイントシュートを立て続けに狙うと、相手からファウルをもらった。1投目のフリースローを成功させ、2点差。残り2投は決まらなかったが、リバウンドを拾い、ゴール下から同点シュートを狙った。だが、決まらなかった。

最後のシュートを外してしまった生島花菜(3年)は「時間がなくて、焦ってしまった……。勝てた試合をもったいないミスで負けた。昨年の卒業生にも申し訳なかったです」。試合終了を告げるブザーが鳴ると、両手で顔を覆った。

試合の映像は人工知能(AI)が編集しています

原田学監督は「あれが実力」と淡々と受け止めた。そこから3年生の一人ひとりと「どうして負けにつながってしまったのか」「同じことを繰り返さないために、何が必要なのか」を話し合う面談を行った。梅島りの主将(3年)は「去年の3年生に頼りっぱなしだった。ウインターカップが終わって(今年)1月から新チームになったけど、気持ちの面で負けてしまって、最終学年の自覚が足りなかった」と振り返った。

卒業した「1期生」も、大学で競技継続

今春卒業したメンバーは、今の3年生が入部する大きなきっかけになっている。創部4年目のチームにとって、現在の大学1年生の世代は事実上の「1期生」に該当する。生島も梅島も中学時代から、星槎国際湘南の練習に参加していたという。梅島は「1個上の先輩たちが明るくて、ここでバスケをやりたいと思ったんです」。先輩たちは、卒業後も玉川大学などで競技を続けている選手がいる。取材の翌日、チームは、先輩が進んだ星槎道都大学を応援するため、東京都内に向かっていった。

チームの創設時は、東京オリンピックで銀メダルを獲得した女子バスケットボール日本代表のメンバー・宮崎早織(ENEOS)を中学時代に教えていた原田監督が、知り合いを通じて声をかけ、集まってきてくれたメンバーが中心だった。「中学時代から注目を浴びていた選手はいません」と原田監督。ゼロの状態から鍛え上げ、昨年のウインターカップ初出場につなげた。

春の関東大会予選では相模原弥栄に惜敗。ここからはい上がった

スラムダンクにたとえて、選手を鼓舞

今年のチームに話を戻す。

相模原弥栄に敗れて関東大会を逃してからの練習試合は、周りの3年生たちの自覚を促すことに、時間を使った。昨年のチームから試合に出ていた生島、梅島の2人が、気になったプレーについて話そうとすると、他の指導者から「2人は話さなくていい」とあえて遮られたこともあった。こうして少しずつ、公式戦でも「こうした方がいいんじゃないか」という声かけが、自発的に生まれるようになった。

インターハイの神奈川県予選は順調に勝ち進んだが、4チームで2枠を争う決勝リーグは初戦で鵠沼に敗れ、いきなり追い込まれた。中心選手の渡辺ひじりが足の捻挫でプレーできなくなり、梅島も左足首を痛めて本来の動きからはほど遠かった。運動量が多くなり、負担が大きくなった生島は、終盤に足がつってしまった。

春の敗戦後は一人ひとりの積極性を促し、チームの結束力を生み出した

残り2連勝が求められる次戦まで、1週間空いた。このとき原田監督は、あの人気漫画にたとえて選手を鼓舞したという。「負けから始まる『がけっぷち』の状況は、スラムダンクと同じ」。スラムダンクも初戦を落とした湘北高校が、連勝で全国大会進出を決めた。星槎国際湘南も、まだまだ諦めていなかった。

先輩からの宿題「必ず1勝してください」

残り2試合の相手、相模原弥栄と東海大相模は、いずれもゾーンディフェンスを敷いてくるチームだった。星槎国際湘南は、これを徹底的に対策。1週間で渡辺、梅島のけがも癒えてきた。連勝を飾り、初のインターハイ出場を決めた。梅島の第一声は「ホッとしました」。

チームにとっては喜ばしい出来事だったものの、生島は自身の試合内容には納得していないようだった。「シュート面でも貢献できていないし、ガードとしての役割も果たせていなかったです。課題が明確になった分、練習するしかないです。ノーマークのときに確実にシュートを決めないと」

インターハイ出場を決めても「個人の内容は納得していない」と言う生島花菜。全国の舞台までに1対1をさらに磨く

昨年のウインターカップ初戦で新潟中央に敗れた後、いまのチームは先輩たちから「必ず1勝してください」と宿題を託された。7月27日に迎えるインターハイ初戦、長崎西戦で、その思いに応えられるか。

---------------------------------------------------------------------------

この記事は、人工知能(AI)搭載のカメラを使った撮影・配信事業「LiveA!」(ライブエー)に携わっている記者が、試合展開にあまりに感動したため、改めて取材して構成しました。ライブエーについては、こちらからご確認ください。

in Additionあわせて読みたい