東医保大がインカレ5連覇、木村亜美主将「今シーズン一番楽しくプレーができました」
第73回全日本大学選手権 女子決勝
12月11日@国立代々木競技場第二体育館(東京)
東京医療保健大学 88-67 白鷗大学
東医保大が5年連続5連覇
試合終了残り5秒、女子インカレ決勝戦の最後の攻撃は白鷗大学・山下詩織(4年、昭和学院)による3ポイントシュート。チームの主将が放ったこのボールは、リングを弾き、東京医療保険大学の木村亜美主将(4年、東京成徳大)がもぎ取る。インカレ5連覇が達成された瞬間、木村はボールを高々と上げ、喜びを爆発させた。試合中、他の誰よりも“いい顔”をしてコート上で輝いていたのも、木村だった。
自分のプレーで、勇気や感動を与えたい
「一人一人がなりたい自分になる」
恩塚亨ヘッドコーチ(HC)は昨年、東医保大を指揮する上でこのマインドを選手たちへ植え付けた。その理由は、ある日の試合で勝利した後に見た選手たちが、「楽しそうじゃなかったから」。これまでの“こうすれば勝てる”といった理論的な指導をやめ、まずは選手本人たちへ“どうなりたいのか”を求めた。
一人ひとりがなりたい選手像を思い描き、それに向かうことで内面に湧き上がる“ワクワク”を大切にする。主将に就任した木村は、新チームがスタートした際に「なりたい自分」をこう定めた。
「自分のプレーで、見ている方々に勇気や感動を与えられる選手になりたい」
木村はこの目標をブラさずに、1年間、自分とチームのためにバスケットボールと向き合ってきた。そしてもう1つ、来年の3月をもって東医保大の指揮官を退き、日本代表HCに専念する恩塚HCを「胴上げしたい」という思いも抱いて今回のインカレに臨んだ。
どんな状況でも笑顔で、楽しく、面白く
準決勝の早稲田大学戦に勝利した後、木村は「選手だけじゃなくて、スタッフの方も含めすごくいい顔で試合に臨めています」とこれまでを振り返り、大学生活最後の試合へ向けこう意気込んでいた。
「仲間を生かすプレーと自分のシュートで点を取りにいきたいです。でも、チームの一人ひとりがいい顔をして決勝の舞台でプレーしてほしいので、周りへの声かけやリーダーシップが一番大事かなと思います」
3年連続同じカードとなった白鷗大とのインカレ決勝、木村のプレーはまさに“宣言通り”とも言えるプレーだった。試合開始早々、ボールを持つやいなや一気にトップスピードでリングへ向かいレイアップを放つ。このシュートは外れたが、木村はぴょんぴょんと飛び跳ね、笑って悔しがった。木村と同じように、周りの選手たちもたとえミスをしても楽しそうにプレーし、「なりたい自分」をコート上で表現。プレーが途切れる度に目線が下を向いていた白鷗大よそに、第1クオーター(Q)で23-8と大きく差をつけた。
後半は、強度を上げてきた相手ディフェンスに苦しむ場面もあったが、今の東医保大にはその状況でさえも「面白い」(木村)と思えるポジティブマインドが備わっている。現在、メインで指揮を執る伊藤彰浩アシストコーチの後ろから、恩塚HCも「笑顔でいこう」と声をかける。チームの主将は相変わらず笑顔を振りまき、味方のシュートをお膳立てするアシストと自らの3ポイントシュートで再び白鷗大を突き放した。
これからも、スーパーポジティブマインドで
スタートダッシュに成功したことが大きな勝因となり、東医保大は88-67で白鷗大を撃破。5年連続5度目のインカレ制覇を成し遂げた。
恩塚HCは「今シーズン最高の試合ができたのではないかなと思っています」と選手たちをたたえ、この1年、主将を務めた木村も「今シーズン一番楽しくプレーができました」と胸を張った。東医保大の司令塔は、大学生活最後の試合で3本の3ポイントシュートを沈め、両チーム最多の18得点をマーク。最優秀選手賞にも選出され、自身としても有終の美を飾った。
「コートでプレーする選手も、ベンチで応援してくれる選手も含めて全員が本当にいい顔をして戦えたと思っています」。そう言って試合を総括した彼女が、コート上で誰よりもいい顔をしていた。
自身の武器であるスピード、シュート力、パスセンスに、恩塚HCから学んだスーパーポジティブマインドが加わった木村亜美は、きっと今後のバスケ人生でも輝きを放つはずだ。