東医保大がインカレ4連覇 恩塚亨HC「なりたい自分」を求め、チーム全員が体現
第72回全日本大学選手権 女子決勝
12月12日@東京・国立代々木競技場第二体育館
東京医療保健大 73-50 白鷗大学
インカレ女子決勝戦は、3連覇中の東京医療保健大学と2016年以来となる優勝を目指す白鷗大学。今季のリーグ戦では白鷗大が1点差で勝利しているものの、過去3年間のインカレでは東医保大がいずれも白鷗大を下して優勝まで上り詰めている。互いに認め合うライバル同士による頂上決戦は、73-50で今年も東医保大に軍配が上がった。
後半に圧倒し4年連続4回目の頂点へ
前半は互角だった。19-18で第1クオーター(Q)が終了。次の10分間は木村亜美(3年、東京成徳大)のミドルシュートと3ポイントで東医保大が一歩前へ出る。しかし、白鷗大もタイムアウトを挟んで立て直すと、三浦舞華(1年、精華女子)のバスケットカウントなどで30-29まで戻す。それでも東医保大は、第2Q最後の攻撃でジョシュアンフォノボ テミトペ(2年、高知中央)がゴール下のシュートを沈め、5点差にしてハーフタイムを迎えた。
後半、東医保大は一気に流れをつかんだ。白鷗大・佐藤智信ヘッドコーチ(HC)が「外からのドライブをしっかり守られてしまった」と振り返ったように、白鷗大はチームの中心である神﨑璃生(りお、4年、東京成徳大)、今村優花(4年、東海大福岡)のガード陣が突破を図れず、焦りが見え始める。
攻撃がかみ合わなかったことで、守備でも浮足立ってしまうという悪循環に陥った白鷗大。対する東医保大は、理想とする襲いかかるようなプレッシャーディフェンスから流れを呼び込むと、連続3ポイントや赤木里帆(4年、桜花学園)の3連続得点などの好循環が生まれて相手を突き放した。
最終スコアは73-50。後半だけを見れば35-17とダブルスコアの差がついた。この1年、最上級生としてチームを引っ張ってきた赤木は、26得点の大活躍を見せ、最優秀選手賞に輝いた。だが、あくまでチーム全員で遂行したディフェンスの勝利だと強調する。
「いつも流れがいい時というのは、ディフェンスからオフェンスという流れができている時です。今日の後半も相手が嫌がっている顔や逃げの姿勢を見逃さずに、自分たちからエネルギーを出してディフェンスすることで流れを持ってくることができました」
「チームを救うスーパーヒーローに」
過去3年間の東医保大は、岡田英里、藤本愛妃(ともに現・富士通レッドウェーブ)などといった「偉大な先輩たち」(赤木)が中心となってインカレを制してきた。今年は昨年まで試合経験の少なかったメンバーとなっただけに、「去年の4年生たちがインカレで優勝したその翌日に、自分たちが優勝できるとは思っていなかったところからのスタートだった」と、恩塚亨HCは明かす。
また、コロナ禍の中で「本を70冊くらい読んだ」恩塚HCは、それで得た学びから考え方が変わり、自身の指導法も変えたという。
「これまでは『こうすれば勝てる』といった説明と理解を得ようとしていました。だけど、リーグ戦の中で選手たちが楽しそうじゃなかった姿を見て、『ダメだから頑張ろう』とかではなくて、『こういう自分になりたい』という選手の内側から湧いてくるものを大切にしようと思いました」と恩塚HC。「いろいろ言いたいことはありますけど……」と、会見では詳しい指導法については割愛したが、恩塚HCの言葉で簡潔に表すと「スーパーヒーローになれるか」という言葉に集結された。
「今日はディフェンスが素晴らしかったです。その素晴らしいディフェンスのエネルギーはどこからくるかと考えると、それは『なりたい自分』です。自分のエネルギーをコートで発揮することで、チームを救うスーパーヒーローになれるというマインドでコート上の5人がプレーしてくれました。その姿勢が時間が経過していく中で、点差につながっていったのではないかなと思っています」
昨年まで試合に出ていなかった、1年生だから、4年生だから、という理屈じみた言葉は聞きたくない。過去を振り返るのではなく、未来の自分に向かって生きる。ただなりたい自分だけを見据えて、ワクワクしながら、今、バスケットボールに夢中になる。
インカレ4連覇を達成した12月12日は、全員がスーパーヒーローなった記念すべき日となった。