バスケ

特集:第72回全日本大学バスケ選手権

筑波大が専修大との死闘の末に準決勝へ 満身創痍のエース山口颯斗が見せた気概

オーバータイムの末に勝利をつかみ、山口(27番)は喜びを爆発させた(撮影・全て小沼克年)

第72回全日本大学選手権 準々決勝

12月11日@国立代々木競技場第二体育館
筑波大学 64-60 専修大学

バスケットボールのインカレは大会5日目。男子はベスト8が出そろい、早くも筑波大学vs専修大学と、昨年の決勝カードが実現した。延長戦にまで及んだ試合は、まさに死闘。筑波大に勝利を手繰り寄せたのは、満身創痍(まんしんそうい)の中、チームを鼓舞(こぶ)し続けたエース・山口颯斗(4年、正智深谷)の気力だった。最終スコアは64-60。筑波大が、また一歩連覇に近づいた。

「山口颯斗らしく戦ってほしい」インカレ2連覇に挑む君へ 一番のファンである父より
筑波大・菅原暉「自分なりのキャプテンシー」 全てに秀でたガードが狙うインカレ連覇

チームの核が立て続けに負傷

先手を取られた筑波大。だが、第1クオーター(Q)終盤に菅原暉(4年、土浦日大)や山口がスティールからレイアップを決めて前に出る。18-9としたこの10分間で挙げた得点は、菅原が5得点、山口が10得点と、4年生がしっかりチームを引っ張っていた。

しかし第2Q、結果的には8点リードで終えたものの、筑波大にアクシデントが襲う。山口がリングへアタックした際に左足を負傷すると、今度は主将の菅原が左足をひねって交代を余儀なくされる。菅原はベンチで何度かテーピングを巻き直したが、この負傷で続行不可能になってしまった。

第2Qの途中に主将の菅原が負傷。筑波大は大きな柱を失った

一方の山口は、第2Qのうちに再び試合に戻った。もちろん状態は万全ではない。でも、「今日は自分がやらなきゃ絶対に勝てない」。山口はそう意気込んで試合に臨んでいた。

山口を奮い立たせた前主将の言葉

山口はハーフタイム中もシューティングはせず、足のケアを優先。左足に力が入らない状態だった。後半は相手の守りが勝り、徐々に点差を詰められる苦しい展開。山口は痛みで顔を歪ませながら、「切り替えろ!」「ディフェンス! ディフェンス!」などと、プレーが切れる度に仲間へ声をかけ続けた。その姿勢はチームを引っ張るエース、そして最上級生としての自覚があるからに他ならない。だが、山口によれば昨年の主将・牧隼利(現・琉球ゴールデンキングス)に教わったことでもあったという。

「本当は言いたくないんですけど、『自分がダメでも、中心選手がコートで周りを鼓舞して信じてプレーし続ければ、周りがやってくれる』ということを去年、牧さんに教わりました」

どんなに苦しい状況でも、だからこそ、山口(27番)は仲間を鼓舞し続けた

それが報われる形となり、第3Qからは日頃から切磋琢磨(せっさたくま)し、信頼もおいている半澤凌太(3年、福島南)と二上耀(3年、北陸)が躍動。半澤は得点が止まっていた時間帯にスコアを動かし、二上に至っては3点ビハインドの第4Q終盤に同点に追いつく3ポイントを決めてみせた。

エースとして最後の局面では自分が

筑波大はこの試合、本当に負けていてもおかしくなかった。二上の3ポイントで50-50としたものの、第4Q残り0.5秒で相手に2本のフリースローを与えてしまった。1本でも決まれば、ほぼ負けが決まるこの状況は「正直、願うだけだった」と山口。しかし、シュートを託された専修大のクベマ ジョセフ スティーブ(1年、福岡第一)が2本とも外し、試合はオーバータイム(5分間の延長戦)へ。

最後に試合を決めたのは、筑波大のエースだった。1点ビハインドの残り2分54秒、トップの位置から中へ切り込んでリードを奪い返すと、終盤にも1対1からのレイアップで加点。直後には決定打となる3ポイントを射抜き、激闘に終止符を打った。試合終了を告げるブザーが鳴る。山口は両方の拳を強く握りしめ、誰よりも喜びをかみしめた。

山口(中央)はエースとして、4年生として、気持ちを切らすことなく攻め続けた

「本当にもう、うれしいという気持ちだけですね。2連覇がかかっているのは僕たちですし、オータムカップは3位という成績になってしまったので。もしこれで今日負けていたら、本当に悔いが残ると思っていたので本当にうれしかったです」

両チーム最多となる22得点。この試合ではエースとして、4年生としての役目を果たした。だが、まだ目標には届いていない。あと2つ。

in Additionあわせて読みたい