大学バスケ

特集:第71回全日本大学バスケ選手権

筑波大主将・牧隼利 最後は一人のプレーヤーとして、納得のいく戦いを!

第71回全日本大学バスケ選手権
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優しい性格の牧(88番)は、自らのキャプテンシーに悩んできた(すべて撮影・青木美帆)

バスケットボールの全日本大学選手権(インカレ)が12月9日から15日まで、東京・駒沢オリンピック公園総合運動場体育館で開かれます。4years.の注目選手を紹介していきます。

牧隼利(4年、福岡大大濠)が筑波大のキャプテンになったのは、去年のリーグ戦後のことだった。つまり、年明けのシーズンインからその役目を担ったキャプテンより、リーダーとしてのキャリアが長い。しかし牧は、自らのキャプテンシーに疑問を持っているようだ。

高校最強チームのキャプテンとして惨敗

とくに苦手なのが、仲間に厳しい言葉をかけること。「自分で言うのもアレですけど、僕、優しすぎちゃって」。牧とチームメイトになって7年目の増田啓介(4年、福岡大大濠)も、牧の自己分析に同調する。「怒ったところはあまり見たことないです。筑波の先輩のキャプテンも優しかったですけど、その中で厳しさがあったり、自ら先頭に立って『一緒に頑張ろう』って盛り上げたりしてくれた。牧はその中間くらいかな」。つまり、突出した分かりやすいキャプテンシーがないことに、牧はコンプレックスを感じているのだ。

苦い思い出がある。「周りにやれる人がいなかったから」と、キャプテンを務めた高3のとき、夏のインターハイと冬のウインターカップ、二つの全国大会でともに初戦敗退に終わった。その年の福岡大大濠はU18日本代表を3人も擁し、その他の選手も全国屈指の実力者という超豪華チームだった。それなのに不本意な結果に終わった理由の一つを、牧は自分のリーダーシップだと考えていた。「あのときは思うことがあってもうまく言えなくて、そのまま、いつも通りでやってたから失敗しました」。その轍(てつ)を2度と踏みたくないという思いは、当然ながら強い。

高校時代は「点を取ることしか考えていなかった」と振り返る。最後のインカレでは、得意のジャンプシュートを積極的に打っていきたい

リーチマイケルや先輩の主将から学んだ

自分が変わらなければチームも変わらない。その思いから、牧は少しずつ自分の殻を破ろうと努力を続けた。練習中は「いいよ、切り替えよう」で片づけていたミスを厳しく律し、逆に試合ではどんなプレーに対してもポジティブに声をかけた。迷ったときは周りに目を向けた。ラグビー日本代表の主将、リーチマイケルのインタビューや振る舞いに自らを重ね合わせ、筑波のキャプテンだったOBにも相談した。

牧がヘルプを求めた一人、青木保憲(筑波大~川崎ブレイブサンダース)に話を聞く機会があった。リーグ戦5位という苦しい結果から巻き返し、インカレ準優勝という成績を残した、2年前の筑波大の主将だ。

牧は自分のキャプテンシーに自信がないと言う。しかし、彼の高校、大学の先輩にあたる青木の認識は違う。

「確かにあいつは優しいし、厳しいことを言えるタイプではないかもしれません。でも、そういうリーダーがいてもいいと思うんです。自分の思いに仲間たちを巻き込んで、一つの塊になりさえすれば、チームはいい方向に進んでいくと思います」

リーグ最終週の最後の攻め方に残った悔い

牧の盟友の増田は、こんなことも言っていた。

「牧はバスケに対してストイックだし、背中で魅(み)せることもできるし、いいとこだらけのキャプテンです。ただ、あいつ自身も言ってましたけど、もっと自分らしさというか『俺がやってやる』っていう気持ちを出した方がいいのかなとも思います」

福大大濠高時代の苦い思い出をバネに、自らのキャプテンシーを模索している

牧は優しくて、賢い。試合の状況や仲間の気持ちを読みながら、さまざまなプレーでチームに貢献できる。一方で、下級生のころはバリバリの点取り屋だった。だからこそ、悩む。自分がいけばいいのか、仲間に攻めさせるべきなのか……。このリーグ戦は後者を選択することが多かったが、その選択を大いに悔やんだ試合があった。

インカレのシード権をかけた、最終週の専修大戦。2点ビハインドで迎えた最終局面で井上宗一郎(2年、福岡大大濠)が放った3ポイントシュートが外れ、筑波大は大事な一戦を落とした。

試合後のミーティングのあと、牧は長い間ひとりで、何をするわけでもなくぼんやりと床に座りこんでいた。しばらくして声をかけると、その理由はラストプレーにあると話してくれた。「宗一郎は確かにフリーだったけど、僕や増田がもっと強引にいくべきだったなって」。専修大のキャプテン、盛實海翔(もりざね・かいと、4年、能代工)が怒涛(どとう)の攻めでチームを盛り立てたのに対し、自分はどうだったか。決して3ポイントが得意でない下級生にラストシュートの責任を負わせてしまったふがいなさが、悔しくて仕方がなかった。

下級生のときは「点を取りたい」という思いに従って、ただプレーしているだけでよかった。しかしキャプテンになり、最上級生となり、自分だけのことを考えていられる立場ではなくなった。ましてや、再三つづってきたように、そもそも自らのリーダーシップに強いコンプレックスを持っている。苦しみはさらに大きかっただろう。

主将として挑む2度目のインカレが間もなく始まる

リーダー、最上級生、ポイントゲッター、ユーティリティープレーヤー。牧にはさまざまな役割があり、そのいずれに対しても真摯(しんし)に向き合い、悩んできた。悩み抜いた先に一体どんな結末が待っているのだろう。学生最後の大舞台となるインカレ。すべての役割の中心にいる「牧隼利」という一人のバスケットプレーヤーとして、納得のいく戦いをしてほしい。

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