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神奈川大・小酒部泰暉 真のチームリーダー目指し、茨の道をゆく

小酒部は現在、109点で得点王争いトップに立った(すべて撮影・松永早弥香)

バスケットボールの関東大学リーグ戦1部は第4節を終えた。得点王争いは神奈川大3年の小酒部泰暉(おさかべ・たいき、山北)が109点でトップ。日体大4年の大浦颯太(そうた、広陵)が97点、大東文化大4年のモッチ・ラミン(桜丘)が87点で続く。ただ小酒部の神奈川大は開幕4連敗で12チーム中11位。幸嶋謙二監督は「小酒部にはチームを勝たせることを期待してます。ちょっとまだ、まだまだです」。監督は小酒部に対し「真のチームリーダー」への変貌を求めている。

神奈川大・小酒部泰暉、伸び続けるダイヤの原石

勝負の局面でことごとく小酒部頼り

第3節の相手は、初めて春のトーナメント戦を制した白鷗大だった。神奈川大は31-24とリードして試合を折り返した。第3クオーター(Q)早々、「走るバスケ」が持ち味の白鷗大が速い展開で反撃したが、小酒部が連続でスリーポイントを決め、さらに豪快なダンクシュートを決めて会場を沸かせた。しかし第4Q、神奈川大はシュートファウルを誘発され、フリースローで得点を重ねられる。残り2分を切ったところで67-69と逆転された。最後は小酒部の決定力にかけたが、69-72で敗れた。

この試合を振り返ると、前半は小酒部とともに東野恒紀(2年、厚木東)や工藤貴哉(1年、八千代松陰)らが攻守ともにいい流れをもたらしていた。しかし、東野や工藤が機能しなくなる時間帯に速攻を仕掛けられ、白鷗大のリズムをつかまれた。昨シーズンの神奈川大には小酒部以外にも大事な局面で頼りになるスコアラーがいたが、いまは小酒部に頼らざるを得ない。小酒部はこの試合でも32点を挙げる活躍だったが、オフェンスだけではなく、ディフェンスでも大きな期待を受けている。

小酒部(右から2人目)は持ち前のジャンプ力で、リバウンダーとしても活躍

初のU-22日本代表で得た自信

試合中の小酒部は昨シーズンに比べ、リーダーシップを発揮してチームを引っ張ろうとしている姿が目立った。プレーが途切れたときには自らチームメイトを集めてハドルを組み、一人ひとりに声をかけた。それは今年、U-22日本代表として初めて日の丸を背負って戦って以来、小酒部自身が意識してやっていることだった。

小酒部は神奈川県の最西端に位置する山北町にある県立山北高校出身。当時の県大会予選は1回戦敗退で、国体にも出場していない。それでも幸嶋監督は小酒部に光るものを感じ、神奈川大に誘った。大学に進むとめきめきと力をつけ、創部初の1部で戦った昨シーズン、小酒部の名は大学バスケ界に広く知れ渡った。そして今年2月、初めてU22男子日本代表チームの候補選手に選ばれた。当時を振り返り、小酒部は「夢みたいな感じでした。選ばれたときはふわふわしてて、自覚が持てませんでした」とはにかんだ。

小酒部(右)は苦しい局面で爆発的な得点力を発揮する。それを本人は「急にスイッチが入る」と言う

5月に開催された日韓の男子学生選抜が対戦する李相佰盃では、1勝2敗で敗れた。それでも小酒部は3試合を通じてチームトップの計55点を挙げた。代表でも自分の役割は点をとることと考え、神奈川大にはない高さがあるチームメイトの中で、自分がどんな役割をすればいいのかに意識を向けて戦った。試合を重ねるうちに代表で戦う自覚が芽生え、「自分もそういうプレーヤーになったんだな」という思いが湧いてきた。さらに「思ってたよりも自分のプレーが通じるところがあって、それは自信になりました。でも、まだまだシュート力が足りないという課題も見つかりました」と、成長のきっかけを見いだした。

「小酒部が周りに任せられるようになれば勝てる」

神奈川大に戻ってからは、代表での経験を積極的にチームメイトへ伝えている。「神大は高さがないんですけど、その中でどう守りどう攻めるかを考えることは、もっともっと必要だなって思いました」と小酒部。攻守ともにチームの軸となる。それに加え、強いリーダーシップを発揮してチームを導く。小酒部にこれらを求める幸嶋監督は「役割が二つ、三つ増えて苦しいところだと思うんですけど、小酒部がほかの選手を信頼して任せられるチームになれたら、うちは勝てる。いまも信頼してないわけじゃないと思うんですけどね」と言う。

「代表を経験した自分がチームの中で一番影響力がある」と考え、チームをまとめることを意識して取り組んでいる

昨シーズン、神奈川大はリーグ戦で9位となり、入れ替え戦を経て1部に残留した。チームとしてはまず、1部で戦い続けることが目標であり、その上で勝利を一つでも積み上げていく。小酒部は徹底的にマークされ、思うように動けないシーンも少なくない。それでも小酒部は「点をとることは勝つために必要なことなんで」と前を向く。

幸嶋監督は1年前、小酒部についての取材に「彼は将来がありますから」と話してくれた。改めていまの小酒部について尋ねたときの「ちょっとまだ、まだまだです」という言葉にはきっと、「まだまだ、こんなもんじゃないですよ」という思いが込められているのだろう。

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