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BリーグクラブのU18チームにおける国内最高峰の大会「B.LEAGUE U18 CHAMPIONSHIP 2022」©B.LEAGUE

世界に羽ばたく選手・チームを生み出す Bリーグのユース強化育成プロジェクト

2022.08.31

Bリーグでは世界に通用する選手やチームを輩出しようと、ユース世代の強化育成を進めている。U15、U18のユースチームは計80チームに拡大。ユースチームからプロのコートに立つ選手も出てきている。強化育成と同時に、大会を通してクラブユース文化の構築と醸成にも取り組んでいる。将来の日本バスケ界を担う「宝」を育てるプロジェクトに迫った。

「B.LEAGUE U18 CHAMPIONSHIP 2022」北海道 U18が優勝

8月13日から16日まで駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球技場/体育館で、「B.LEAGUE U18 CHAMPIONSHIP 2022」が開催された。Bリーグ各クラブが保有するU18チームが頂点を争ったトーナメント戦は、レバンガ北海道U18(以下北海道 U18)が名古屋ダイヤモンドドルフィンズU18(以下名古屋D U18)を71-68で破り、連覇を達成。北海道 U18の齋藤拓也ヘッドコーチ(HC)は「疲れはあったと思うが、最後のてっぺんを目指すためにエネルギーをかけてやってくれた」と選手たちを称えた。

大会MVPに輝いた高校2年の内藤耀悠(てるちか)選手は、ヒーローインタビューの壇上で「勝ち抜かなければ2連覇は達成できないので、嬉しく思います。(2月に開催された)インターナショナルカップ代替大会の決勝で負け、選手それぞれが課題を見つけて大きく成長できました」と堂々とスピーチした。

U15、U18世代のユースチームの保有は、Bリーグ初代チェアマンを務めた川淵三郎さんが、プロリーグ創設にあたっての必須項目として掲げたものの一つ。6年の歳月を経て、U15チームが46チーム、U18チームは34チームまで拡大した。

Bリーグでユース部門を統括する黒田祐(たすく)さん(強化育成グループマネージャー)は、「Bリーグ創設当初は独自に下部組織を設置していた数クラブ以外、ユースチームを保有するクラブはほとんどありませんでした。その後、強化育成部門のスタッフが全国を行脚してユースチームの必要性を伝え、またクラブライセンスで保有が義務付けられたこともあり、今は80チームにまで増えました。ものすごいスピード感だったと思います」と振り返る。

大会MVPの北海道 U18の内藤耀悠選手©B.LEAGUE

U15世代、つまり中学生世代は、もともと、地域は限られるものの、地域スポーツとしてのクラブチームの素地は日本各地であった。さらに、Bリーグのユース設立のタイミングと、この年代のスポーツが部活動から地域スポーツへ移行するタイミングがマッチした。しかし、高校の部活以外の選択肢が存在しなかったU18世代は、Bユースが率先して土壌を作らなければならない。U18チームの競技会は昨年6月に本格始動したばかり。「U18世代におけるバスケットボールの地域スポーツ化は、今が本当に最初の一歩目だと思います」と黒田さんも話す。

2022-23シーズンは、「B.LEAGUE U18 CHAMPIONSHIP 2022」など終了した大会を含め、U15とU18を合わせて6大会。実戦を通して選手たちは着実に力をつけている。

高校と連携・トップチームの戦術採用 各クラブに特徴

現在、多くのクラブが環境整備や仕組みづくりを必死で行っている段階ではあるが、その中でも先進的な取り組みをしているクラブもある。「B.LEAGUE U18 CHAMPIONSHIP 2022」の上位4チームに入った北海道 U18と名古屋D U18、そして琉球ゴールデンキングスU18(以下琉球 U18)と横浜ビー・コルセアーズU18(以下横浜BC U18)は、これに該当するクラブだ。

環境という点で最先端を走るのが、北海道 U18だ。U15チームが立ち上がった2018年から、彼らがU18に持ち上がったときの環境整備を検討しており、2020年に北海道文教大学附属高校と教育連携協定を締結した。様々な高校から選手が集うユースやクラブは「練習時間が遅い」「コミュニケーションをとる時間が少ない」「学業との両立が大変」といった課題が挙がりがちだが、北海道 U18は選手全員が同じ高校に通っているため、学校生活の中でコミュニケーションを育み、授業が終わると校内の体育館ですぐに練習を行え、授業や試験と大会が重なったときには充実したサポートを受けられる。

左上から右回りで優勝の北海道 U18、準優勝の名古屋D U18、4位の横浜BC U18、3位の琉球 U18©B.LEAGUE

北海道 U18と並んで「ユースの強豪」としての地位を確立しつつある名古屋D U18も、トップチームと同じ体育館で練習している。加えて、トップチームの戦術をいくつか取り入れるなど、より高いレベルでトップチームとの連携をはかっている。「一つの方向性を設け、ユースからトップにつなげていく一貫性がすごく高いクラブだと思う」と大西順HC。トップチームの練習に参加している今西優斗選手は、「プロのレベルを肌感覚で感じて、それを基準にして練習ができるのは、ユースならではの強み。経験をムダにせず、特別指定やユースからのコールアップを目指したいです」と話した。

チーム創設2年目かつ初出場ながら、今大会3位に輝いた琉球 U18は、トップチームと同様に“日本最高峰のバスケットボールアリーナ”と称される沖縄アリーナを練習拠点し、夏休みを利用して、数人がトップチームと一緒にワークアウトを行っている。その一人である一期生の須藤春輝選手は「県外の強豪校に進むことも考えましたが、自分が見据えているのはウインターカップやインターハイでなく、Bリーグに入ること。プロと環境が近くて、しかも沖縄アリーナがあるキングスU18しかないと思いました」と、初年度は選手が3人しかいなかったU18に進んだ理由を話している。

大会ベスト5に選ばれた選手たち©B.LEAGUE

横浜BC U18は、「トップチームへの選手輩出」という点で一歩先を進むクラブだ。U15やU18(高校バスケ引退後、大学へ進学するまでの期間に所属)に所属していたキング開選手が、大学を経由してトップチームとプロ契約をかわし、昨年11月にはU18在籍中のジェイコブス晶選手が、特別指定選手としてB1史上最年少の17歳7か月でプロデビューを果たした。県内のクラブチームを母体に発足し、Bリーグ以前から高校やインターナショナルスクールなどの選手を幅広く受け入れてきた歴史を持つチームは、インターハイ予選やウインターカップで引退した高校3年生などの選手たちの受け皿になっている点でもユニークだ。

Bリーグでは2022-23シーズンより、通常の選手登録枠とは別に自クラブのU15、U18所属選手を2名まで登録できる「ユース育成特別枠」を設ける。「NBAの育成キャンプに招待されたジェイコブス選手や、U17日本代表としてワールドカップを戦った内藤選手のように、Bユースから素晴らしい選手が輩出できるようになったことはとても喜ばしいことです。彼らのような選手に早くプロを知ってもらい、将来のキャリアをイメージすると同時に、そこでの経験をユースに持ち帰ることで、チームがさらに活性化されるのではないかと思います」と、黒田さんは展望を語る。

リッキー・ルビオ(クリーブランド・キャバリアーズ。14歳でプロデビュー)やルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス。16歳でプロデビュー)は異例中の異例としても、世界の強豪国では、20歳を待たずにプロの世界に飛び出すプレーヤーがたくさんいる。大学卒業後のプロ入りが慣例となっていた男子日本バスケットボール界も、少しずつ変わり始めようとしている。

左から横浜BC U18のジェイコブス晶選手、名古屋D U18の今西優斗選手、琉球 U18の須藤春輝選手©B.LEAGUE

JBAと連携し競技環境の整備へ

始まったばかりのユース制度には、クリアすべき課題が山積みだ。その中で、Bリーグが主導となって進めていくべきものの一つとして黒田さんが挙げたのが、試合数の増加だ。

「試合数については毎年段階的に増やしていて、来年はどのチームも最低10試合以上ユース同士で戦えるように考えていますが、それでも高体連に所属する全国大会出場レベルのチームと比べれば多くありません。ユースのための競技会を設計しながらJBAとも連携をとって、競技環境をしっかり整えるのが我々の重要なミッションです」

もう一つは、これまでの日本に存在しなかったキャリアデザインを描く選手たちのモチベーションのケア。

「高校だとインターハイやウインターカップという大きな大会に向けてチームのピークを作っていきますが、ユースは現状、プロに向けての通過点に試合があるという感覚。あくまで僕個人が思ったことではありますが、『B.LEAGUE U18 CHAMPIONSHIP 2022』を見て、Bユースを選んでくれた選手たちに、エキサイティングな試合を経験する機会をもっと作りたいと感じました。競技会は、結果も大事ですが、何を学ぶかだと考えます。全国の様々なクラブと対戦することで自分たちの現在地を把握したり、大会に向けてチームが成長していく過程を経験するのは、競技会がなければ経験できないことです。ただ、この世代は、人生の中でひたむきにバスケットに取り組める年代でもあるので、競技会の価値を高めていき、Bユースの中でのタイトルなども設けて、選手がワクワクするような仕組みもつくってあげたいなと感じました」

Bリーグユースの取り組みについて話す黒田祐さん

約1000人の“先駆者たち”にどう寄り添うか

「世界に通⽤する選⼿やチームの輩出」をミッションとし、ユースからトップチームへ選手を輩出することを目指すBユースではあるが、当然ながら全員がそこにたどり着けるわけではない。黒田さんは、選手たちがプロを目指す道すがら困難を感じた時に、様々な選択肢や知恵を提供するのもBリーグの大切な役割だと話す。

「もちろんプロになってほしいというのが僕たちの思いではありますが、現実はプロになれるのは数パーセントという厳しい世界です。競技を離れたときにもしっかり活躍できる人材になってもらうために、ユースの選手を対象とした研修の中で、競技以外のいろんな観点を彼らに与えています。そういった選手たちがトレーナーやドクターとしてチームに帰ってきたり、メディアとしてBリーグを取材するような人材が生まれたりしたらうれしいですね」

U15とU18を合わせて約1000人。ユースに所属する選手を、黒田さんは「宝」と表現する。始まったばかりのBユースを選んだ“先駆者たち”のチャレンジに大きな敬意を払い、Bリーグは彼らの人生に寄り添いながら、新しい道筋を切り開いていく。

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