4years.
Presented by JBA/B.LEAGUE

従来のスポーツビジネスの枠を超える「SOCIAL INNOVATION HUB構想」が始動した

SOCIAL INNOVATION HUB Bリーグが新たなスポーツビジネス構想

2023.11.29

今夏発表された「B.革新」。「世界一型破りなライブスポーツエンタメ」を目指し、国内のプロスポーツ全体の発展を牽引(けんいん)するような大改革を掲げた。その「B.革新」と両輪をなすのが、新たに発表された「SOCIAL INNOVATION HUB構想」。従来のスポーツビジネスの枠を超える進化が期待される。

原動力は「危機感」 世の中の変化が背中を押す

男子日本代表の「FIBA バスケットボールワールドカップ 2023」での躍動は、バスケットボール界のみならず、日本のスポーツ界において2023年の大きなトピックとなった。その強い追い風を受けて開幕した2023-24シーズンのBリーグはチケット入手が困難なほどの盛況ぶりで、かつてないほどの成功に浴しているように見える。それでも専務理事の佐野正昭は、Bリーグを突き動かしているのは「危機感」だと語る。

「多くのお客様に入っていただき、エンターテインメントとしての質も注目度も上がっているんですが、世界の大舞台で女子や車いすの日本代表があれだけ活躍しても、『見たいスポーツ』のランキングでバスケは10位に届きませんでした。少子化が進み、エンターテインメントコンテンツが増えていく中で、今は右肩上がりの成長であっても、あっという間に下がってしまうのではないかという危機感を強く持っています」(佐野)

新たに発表された「SOCIAL INNOVATION HUB構想」をリードしてきた佐野は、「討議してB.革新の制度設計が決定していく中で、『両輪であるビジネスも、変革をより強く起こしていかないといけない』と、島田慎二チェアマンと話していました」と振り返る。

「この12年、特にコロナ禍で無観客試合も経験したことで、スポーツの価値として何ができるのかと、スポンサー企業と改めて話をさせていただくことが増えました。B.革新だけで、スポンサーも含めてバスケが盛り上がるかというと、そうではないと考えます。やはりスポーツ自体の価値をバージョンアップさせなければと、もう一度アクセルを踏んだという感じです」

専務理事 佐野正昭

今年に入って構想を固めるにあたり、まず必要になったのが置かれている状況の分析だった。営業畑が長かった事業企画グループシニアマネージャーの菅原瑠美は、「放送権が数十から数百億単位の金額で売れるといった北米型のビジネスは日本では育ちづらいと思っていました。露出の機会を提供する従来のスポーツビジネスでは費用対効果だけを考えると、スポーツは他業種・他メディアに対する優位性に限界を感じていました。Bリーグはこれまでもパートナーシップの中心にアクティベーションを据えてきました」と、Bリーグの立ち位置を率直に語る。

「だからこそ、改めてスポーツの価値とは何なのかと考えました。ありがたいことに、スポーツに興味を持ってくださっている方々がいて、『Bリーグは何をやりたいの?』と聞いてくださるパートナー様も多かったからです」(菅原)。あくまで前進するための、土台の再確認だった。

これまでの歩みを振り返ると、リーグの価値は自然と見えてきたと佐野は振り返る。

「いろいろな方々との接点や、多くのステークホルダーの方々からの期待を、全部棚卸しして、『我々の核となることはなんだろう』という話から始めました。すると、コミュニティを形成する力や、人や組織を結びつけるハブとしての役割が、Bリーグの一番の強みであり存在意義だよね、という話になったんです。スポンサーやファンの皆様が喜んでくださってこそ、バスケの価値は上がる。そのための価値や経済の循環のひとつのドライバーがBリーグだよね、と再定義しました」

新しい「経済循環」の鍵となる5つのコミュニティ

ハブとなって結びつけるべきものを、5つのコミュニティに分類した。その作業は新たにつくり上げるというよりも、「我々の原点として持っているものを再定義した結果の集約」(佐野)だという。

そのうちの2つ、「ファン」と「バスケファミリー」は、佐野いわく「日本バスケの核となる一丁目一番地」。楽しむ人抜きでプロスポーツが成り立つはずもなく、指導者や審判といった競技を取り巻く人々がいなければ発展はない。プロジェクトの大前提とも言える2つのコミュニティだ。

バスケ・地域・企業の三位一体の成長を目指す ©B.LEAGUE

その他の3つのうち、佐野が個人的に鍵となると考えているのが「地域創生」と「グローバルバスケ」だという。

2つに共通するのは、新しい「経済循環」を生み出すことだと佐野は説く。

「地域の方からご相談いただく一例が、公民館や廃校、各地で問題になっている空き家といった遊休施設をどう活用すればいいのか、主体はどこにいるのか、ということです。スポーツや学習の拠点にしていけば地域の人々が集まるし、日本郵便様と一緒に取り組んだ『防災バスケ』のように、全国には地域を元気にすることをやってみたいという企業が多くあるはずです。そこで我々が統一されたコンセプトを出してハブになることで、新しい経済循環が生まれてくるのではないかと考えています」

「グローバルバスケ」も、経済循環の一環だ。「少子化で人口が減っていく日本において持続的に成長するためには、やはり海外を含めた経済循環で、エコシステムを拡大しなければいけないと思っています」(佐野)。

グローバルバスケには3本柱があるという。「アウトバウンドとインバウンド、リーグモデルの輸出」だ。アウトバウンドの実績として、すでに今年に入ってバスケ人気の高いフィリピンでのBリーグ中継のケーブルテレビ放映が決まっている。インバウンドに関しては、「今年のオールスターで、新しい試みとしてインバウンドホスピタリティをやらせていただこうと思っています」と佐野はアイデアを明かす。

さらに アジアの他国からは「(アジア)国内のリーグを一緒に成長させてほしい」「ともにアジアのバスケを盛り上げてほしい」という依頼も来ており、実際に韓国やインドネシアのリーグ関係者が来日し、勉強会を提供するなどの取り組みを始めている。

すでに独自で動いているクラブもある。川崎ブレイブサンダースでは、川崎市の街づくり計画に基づき、若者がダンスやバスケなどのスポーツや芸術活動に触れられる「カワサキ文化会館」を運営している。熊本ヴォルターズは、台湾のプロバスケチームを招いて国際交流試合を開催した。台湾のチームと国際戦略的パートナーシップを締結し、台湾でイベントを実施する青森ワッツのような例もある。

「Biz人材」がBリーグ進化の核となる

そうした各クラブの努力も踏まえて菅原が強調するのが、5つ目のコミュニティ、「Biz人材」の重要性だ。

「Biz人材は、他の4つのコミュニティを支える源泉だと思っています。他の4つは、すでにBリーグにおいて担当部署があり、これまでにも概念はあったものです。ただし、それぞれを成し遂げるための一番のベースは人材だと、私は思っているんです」

菅原は個人的に、アウェイツーリズムに興味を持っているという。

「別のコンテンツと組み合わせることで、新規のファンがアウェイ観戦に行くきっかけになってほしい、と思っています。でも、そういうアウェイツーリズムをひとつのクラブで推進するのは、なかなか難しいはず。そんな時にリーグがハブとなってナショナルスポンサーを獲得できれば、実現しやすくなることもあると思います。リーグにしかできないことは何だろうとたびたび頭を悩まされるのですが、そういう“横串を通す”仕事でこそ、リーグの価値を発揮できると思うんです」

事業企画グループ シニアマネージャー 菅原瑠美

改めて5つのコミュニティをもとに指針を示すことで、方向性が明確となり、既存のスポンサーや各クラブからは好反応が返ってきているという。

縦の筋道をつくり、横串を通す。「我々が単独で大きなビジネスを回すことはできません」と佐野は謙遜するが、人材という財産をベースに歯車を回してきた歩みが、すでにBリーグというハブの価値を証明している。

■SOCIAL INNOVATION HUB 特設サイトはこちら

■SOCIAL INNOVATION HUB構想パートナーシップに関するお問い合わせ先はこちら

B.革新特設サイトはこちら