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バスケットボール女子日本代表・赤穂ひまわり(デンソー アイリス)©︎JBA

バスケットボール女子日本代表・赤穂ひまわり 代表として世界一、クラブで日本一を目指す

2022.02.03

昨夏の東京2020オリンピックで銀メダルを獲得したメンバーたちも多く名を連ねる女子日本代表が2月、大阪で開催されるFIBA女子バスケットボールワールドカップ2022予選でベールを脱ぐ。その中でも、日本の次世代を担う存在として期待がかかるのが赤穂ひまわり(デンソー アイリス)だ。東京2020オリンピック銀メダルと、5連覇をはたしたFIBA女子アジアカップ2021の大会MVPを手中に収めた23歳は、年女となった2022年、何を見据えているのか。

バスケ一家の次女は「姉が敷いたレールに乗っただけ」

石川県七尾市出身。小学校の頃は地元の石崎ミニバスでプレーしていたが、中学校入学を機に親元を離れる決断をした。故郷を離れ進んだ先は、全国屈指の強豪校である千葉・昭和学院。中学、高校の6年間を過ごし、高校卒業後はWリーグのデンソー アイリスの一員となった。

これは赤穂ひまわりが辿った経歴である。だが、それ以前に姉・さくら(デンソー アイリス所属)が歩んできたバスケ人生だ。妹は自分を引っ張ってくれた姉に今でも感謝している。

「姉がはじめに親元を離れて中学から県外に出るという行動をしてくれたおかげで、私も同じように中学から強豪校でプレーして今のキャリアを送ることができています。最初に道を敷いてくれたというか、私は敷かれたレールに乗っただけなので、姉には感謝していますし、その行動力はすごく尊敬しています」

姉の赤穂さくら(左)とともに ©デンソー アイリス

両親はともにバスケ経験者、2歳上のさくらを姉に持ち、双子の兄・雷太(千葉ジェッツ所属)と妹・かんな(日体大2年、石川県立津幡高校卒)に挟まれたバスケ一家に育った。そんなひまわりが本格的にバスケを始めたのは小学校3年生の時。「周りがやっていたので半ば強制でしたね(笑)」と振り返る。けれど、彼女の才能が開花するのにそれほど時間はかからず、高校時代は1年生から主軸を担いインターハイとウインターカップ準優勝に貢献。2、3年生次も全国3位の成績を残し、2017-18シーズンのWリーグではルーキー・オブ・ザ・イヤー、記憶に新しい昨夏の東京2020オリンピックでも銀メダル獲得の快挙を成し遂げ、昨年10月のFIBA女子アジアカップ2021では大会MVPに輝き日本を5連覇へ導いた。

「気づいたら今に至っています」。自発的に競技を始めたわけではない赤穂は謙遜気味にそう話すが、今や国内トッププレーヤーの1人と呼ぶに値する存在だ。しかもまだ23歳。2022年に入り“年女”にもなった彼女が今年見据えるのは、目前に控える「FIBA 女子バスケットボールワールドカップ 2022」予選を突破して世界一になること、そして所属しているデンソー アイリスでの日本一だ。

184cmの上背と機動力で「世界一のアジリティ」を体現

「アジアカップからヘッドコーチ(HC)が代わりましたけど、その時にはいなかったお姉さんたち(ベテラン組)も戻ってきて良い雰囲気でやれていると思います。みんな理解度も早く、恩塚さんの掲げるバスケを表現できていると感じています」

東京2020オリンピック後、女子日本代表はトム・ホーバス氏に代わりこれまでアシスタントコーチを務めていた恩塚亨氏がHCに就任。新指揮官がチームを構築するうえで追求するのは「世界一のアジリティ」だ。

現在の日本代表で求められるスタイルについて、「コート上の5人が動き続けて、プレー中にボールが止まらないようなバスケを目指しています」と言う。「サイズがありながらも動けるところが強み」と自覚するように、184cmの高さがありながらも機動力を生かしたドライブやリバウンドで存在感を示す赤穂の特長は、日本代表にとって大きな武器だ。

©︎JBA

恩塚HC就任以降も、ホーバス氏が指揮していた頃と比べ「根本的な部分は変わっていない」と赤穂は言うが、「以前よりもボールを持った時はしっかりと攻め気を持つようにしています。パスを受けたらすぐに他の選手へ中継するのではなく、第一にゴールを目指す。シュートを狙えるのならしっかり打つという意識を持つようにしています」と意識の変化を明かす。

まだ20歳だった2018年、赤穂は前回のワールドカップのメンバーに選ばれた。だが、「当時はあまりプレータイムをもらえていなかった」と振り返るように、戦った4試合での平均出場時間は7.2分だった。それでも、そこからメキメキと頭角を現した背番号88はいつしか日本代表でも主力となり、前述したようにMVPに輝いたアジアカップでは5試合を通じて平均29.5分コートに立ち、平均10.6得点、5.0リバウンド、2.2スティールを挙げるほどのオールラウンダーへと進化した。世界でも多くの経験を積み、「ディフェンスとリバウンドはどの国を相手にしても通用したと思っています」と自信をのぞかせる。

女子日本代表のオコエ桃仁花と赤穂(左)©︎JBA

2月10日からスタートするワールドカップ予選で、日本(FIBAランキング8位)はカナダ(同4位)、ベラルーシ(同11位)、ボスニア・ヘルツェゴビナ(同27位)と対戦し、そのうち上位3チームに入れば9月にオーストラリアで開催される本戦への切符を手にすることができる。「まずは結果を出すこと。大阪の予選をしっかり勝ち抜いて、9月のワールドカップに出られるように一戦一戦を戦っていきたいと思っています」。赤穂は目前に迫った戦いへ向け決して多くは語らなかったが、はっきりとした言葉で意気込みを述べた。

『ひまわりがいれば大丈夫』と思ってもらえるように

ワールドカップ予選が終われば、選手たちは再び所属チームに戻り、Wリーグではプレーオフ進出と優勝をかけた争いが本格化する。今シーズンのデンソーは就任2年目のマリーナ・マルコヴィッチHCが理想とする「積極的なディフェンスと効率的なオフェンス」を武器に白星を重ね、開幕15連勝も達成した。赤穂も手応えを口にする。

「開幕からすごくいい流れで来ています。中断前の最後の試合では負けてしまいましたけど、ここまで自分たちのやりたいバスケができていますし、去年よりも良いシーズンの入りができていると感じています」

©デンソー アイリス

赤穂が高卒ルーキーとしてデンソーに加入して早5年が過ぎたが、チームとしても日本一にはあと一歩届いていない。悲願達成へ向け、赤穂がマルコヴィッチHCから新たに求められているものは、周りを引っ張るリーダーシップだという。

しかし、これに対し当の本人は「苦手です(笑)」とキッパリ。「今までそんなに意識してやったこともないので……」と、不安そうにつぶやく。それでも、日本一へは選手一人ひとりのレベルアップが必要不可欠であり、赤穂もさらなる成長へ殻を破ろうとしている。

「今までどおり思い切りプレーすることを続けながらも、自分もリーダーシップをとっていかなきゃいけないと感じています。チームには一番の見本で、“リーダーシップの完成形”のようなリツさん(髙田真希)がいるので、リツさんからしっかり学びたいと思います」

最後に、彼女が頭の中に描いている理想の選手像が知りたく、質問をぶつけた。赤穂は「ざっくりしてるんですけど……」と少し間を開けて、こう続けた。
「周りに安心感を与えられる選手です。スタッフからもチームメートからもファンからも、『この人がいれば大丈夫』と思ってもらえるような選手になりたいなと思ってプレーしています」

幼い頃、お姉ちゃんの後ろをついていくようにバスケに励んでいた少女は、自分なりの道を見つけた。日本の次世代を担うエース候補は、今、その道を一歩、また一歩と進んでいる。


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