白鷗大が東海大を破ってインカレ初V、「スター軍団に勝てる」と皆が確信したチーム力
第73回 全日本大学選手権大会 決勝
12月12日@国立代々木競技場第二体育館(東京)
白鷗大学 63-58 東海大学
白鷗大が初優勝
分かりやすい肩書きを持つスター選手はいない。個人賞のスタッツ部門で表彰された選手もいない。それでも学生日本一を決めるインカレで最後に笑ったのは白鷗大学だった。決勝の振り返りとして「これがチームプレーなんだと改めて感じました」と言ったのが、チームで最も華麗な個人技を持つ関屋心(3年、飛龍)だったのが印象的だった。
残り6分を切ってからの5連続得点で逆転
大学界屈指のタレントとチーム力を兼ね備える東海大学との戦いを優位に進めるために、網野友雄監督は急きょ、選手たちにオフェンスシステムの変更を伝えた。「簡単に言うと『ドライブをした選手は必ずペイントエリアからどく』という動きなんですが、なんせ初めてやったので選手たちが戸惑い、前半は少し点数が伸びませんでした」と網野監督。それでもチームが絶対的な自信を持つディフェンスで点差を最小限に食い止め、前半を22-30と1桁差で終えることに成功する。
後半は、この動きに慣れた選手たちが見違えるように躍動した。松下裕汰(4年、飛龍)や角田太輝(4年、佐賀北)が力強いゴールアタックで起点を作り、松下、ブラ グロリダ(4年、帝京長岡)らで次々に加点。守っては杉山裕介(3年、飛龍)が東海大のPG河村勇輝(2年、福岡第一)をすさまじいプレッシャーで追いかけ回し、「(運動量とパワーを兼ね備えた)佐土原(遼、4年、東海大相模)くんにつけるとしたら彼しかいない」と網野監督が送り出した伏兵・ミサカボ ベニ(3年、埼玉栄)も奮闘した。大会2連覇を目指す東海大はなかなかリードを許さないが、選手たちは何度も「我慢、我慢!」と声をかけ合い、何度シュートを決められても果敢に攻め、果敢に守った。
そして、チャンスが来た。第4クオーター(Q)の残り6分を切ったタイミングで、スコアは46-52。ここから白鷗大は怒涛(どとう)の5連続得点を挙げて逆転に成功した。グロリダが体を張り、角田が絶妙なパスを合わせ、松下は鬼神のごとき形相でゴールに向かう。
5連続得点のラストとなる杉山の3ポイントが決まった時、チームは7点のリードを積み上げ、ゲームクロックは残り3分を切っていた。東海大も佐土原や大倉颯太(4年、北陸学院)の攻めで逆転を狙ったが及ばず、激戦は63-58で決着。最後はグロリダがボールを高く放り投げ、白鷗大の選手たちは思い思いに初優勝の喜びを表現した。
「チームでやった方が優勝できるんじゃないか」
白鷗大が「個」でなく「チーム」で戦う重要性に気づいたのは、7位に終わった関東学生選手権(スプリングトーナメント、4~7月開催)。「インカレはいつも準決勝で負けてたし、トーナメントも負けたし、自分たちには何かが足りないんじゃないかと思っていました。網野さんや(石井)悠右コーチと話して、個人でやるよりもチームでやった方が優勝できるんじゃないかと思いました」とグロリダは振り返り、秋のリーグ戦はチームプレーを根付かせることを意識しながら戦った。
インカレの序盤戦ではなおも独りよがりなプレーが目立つ試合があったが、網野監督の「負けたいならそのプレーを続けなさい」という言葉で目が覚めた。「よく白鷗は無名選手が多いと言われますが、だからこそ『チームで戦う』という意識を持っていたし、そこでスター軍団に勝てるという気持ちを一人ひとりが持っていたと思う」とは小室昂大(4年、宇都宮短大附属)。一人が抜かれても次の一人がボールを奪う。全員で作ったチャンスから得点を奪う……。そんな姿勢が、創部33年目の初優勝を手繰り寄せた。
白鷗大に無名選手が多いのはまぎれもない事実ではあるが、U22日本代表候補に選出された関屋、U19代表候補の脇真大(2年、岡山商科大学附属)を筆頭に、今大会はエントリー外だった下級生たちには、大学以前のキャリアで名を残した選手が何人かいる。「4年生が見せてくれたチームプレーを受け継いで来年もしっかり頑張りたい」と話す関屋、そして4年生と長くコートに立った杉山や脇らを中心に、来季は更に一歩進んだ“白鷗バスケ”が見られそうだ。