伸び盛りの脇真大 エースとしての矜持を胸に、白鷗大でさらなる躍動を
昨年末の高校バスケの日本一を決める「ウインターカップ」に出場した選手から、4月に大学へ進む注目のアスリートを紹介します。岡山商科大学附属(岡山)の脇真大(わき・まさひろ)です。大会屈指のポイントゲッターとして躍動し、同校初のウインターカップ勝利と、最高成績となる全国大会3回戦進出に貢献しました。昨春の関東大学選手権を初制覇した白鷗大に進学します。
エースとして体を張り、確実に点を取りきる
アタック、アタック、ひたすらアタック。ドライブでゴール下に飛び込み、ディフェンスとぶちあたり、ファールを奪う。実に潔いプレーが印象的な選手だった。佐賀東(佐賀)戦で46得点、日本航空(山梨)戦で36得点、報徳学園(兵庫)戦で33得点。脇が今大会放った86本のフィールドゴール(フリースローを除くシュート)のうち、3ポイントはわずか8本だった。単に3ポイントが得意でないということもあるが、それよりも大きかったのは、エースとしての矜持(きょうじ)だ。
「チームを勝たせるためには、自分が点を取らなければならないので、確率の悪い3ポイントではなく得意なドライブで積極的に仕掛けました。エースとして、ゴールにアタックすることは忘れちゃダメだと思ってます」
総得点の内の約4割は、アタックの際に得たフリースローで稼いだ。体を張ることを厭わない、頼もしきエースだった。
身長が伸びる中でプレーに悩み、一つの答えで心が決まった
父は日本代表で活躍した将典さん。姉の梨奈乃さんもトヨタ自動車でプレーするバスケ一家の出身だ。岡山商大附の納谷幸二コーチは、父の高校と実業団時代の後輩にあたる。父の「あいつのところに行ったらお前はうまくなるぞ」という一声で、郷里の熊本を離れ、岡山に行くことを決めた。
高校入学時に178cmだった身長は、198cmの父に追いつけといわんばかりに、ぐんぐん伸びた。そして、バスケット選手としてこの上なく喜ばしいはずの身長の伸びが、脇を苦しめた。「どういうプレーをすればいいかが分からなくなったんです」
「背」は伸びても、「自分」は伸び悩む日々を半年ほど経て、脇は一つの答えを出した。「身長が伸びようが伸びまいが、自分がやるべきことは、点を取ることとチームを支えること」。ドライブ、ディフェンス、声かけ……。目的を果たすために必要なものが何かを考えれば、おのずとやるべきことが分かった。
納谷コーチにも背中を押された。身長が伸びることでプレーやプレーエリアを制限されることを恐れた脇に、コーチは「身長が高くなってもオールラウンダーとして育てる」と約束してくれた。技術と心が身長に追い付き始めると、そこから脇は一気にプレーヤーとして伸びた。3年生になってからはU18日本代表候補に選出され、海外のエリートキャンプにも招へいされる選手となった。
中学3年生のときに全国大会に出場し、全国ベスト8。当時からコンスタントに2桁得点を重ねられる選手だったが、本人は「技術は全然なかった」と言う。納谷コーチも「入学時からああいうプレーができたわけではなかった」と振り返り、「彼の後輩たちにとっても私にとっても、脇は成長する選手としてのロールモデルになってくれました」と話した。
白鷗大のタフなバスケにも食らいつけるように
最後のウインターカップは報徳学園に81-113で敗れ、引退が決まった。それでも脇は晴れ晴れとした表情で、涙に暮れるチームメートたちをねぎらい、取材にもにこやかな表情で応じた。彼はなぜ、こんな表情でいられるのだろう。その答えは、次なるチャレンジの舞台となる白鷗大の話題の中で、明らかになった。
「もう僕は大学バスケの方を見てます。白鷗はタフなバスケットをするチームという印象。ディフェンスから相手のミスを誘って、ボールをプッシュして、キックアウトのスリーを決めて……。1年から試合に出たいんで、チームに合流する春先までに、自分のプレーを白鷗のスタイルにどんどん近づけられるようにしたいです」
試合終了のブザーが鳴ると同時に、高校バスケにきっぱりと別れを告げた脇。その言葉の端々からは、大学に加入した直後から強烈なスタートダッシュをかまし、同年代のライバルたちを置き去りにし、なんなら早いタイミングでBリーグに飛び出したい。そんなビジョンすらも感じさせた。
191cmの身長はまだ伸びている。U18ではポイントガードとしてプレーし、思い描くのも、大型ポイントガードとして活躍する自分だ。脇真大、18歳。その成長曲線の行方は、未だ見えない。