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昨年の高校得点王・富永啓生がアメリカ留学へ 八村塁のNBA入りに未来重ねて

昨年12月のウィンターカップ3位決定戦でスリーポイントシュートを放つ富永(すべて撮影・河合博司)

昨年末、高校バスケットボールのウインターカップ(全国高校選手権)で男子の得点王となった富永啓生(けいせい、18)がこの夏、渡米する。遠くから面白いようにゴールリングを射抜いたシューターが選んだのは、アメリカへの留学。八村塁や渡辺雄太のように、高いレベルの中でもまれながら、NBAを目指す道だ。

NBAプレーヤー八村塁、夢を実現するために必要だった大学3年間

短大へ留学し、名門大学への編入してNBA狙う

愛知・桜丘高校卒業後、自宅のある名古屋市内で週2回の英会話レッスンとバスケの自主練習を続けていた。留学先が決まったのは6月。「ホッとしましたね。不安より楽しみの方が大きいです」。その直後に、NBAドラフト会議の一巡目で八村塁がワシントン・ウィザーズから全体9位で指名された。「見てました。(八村の指名が)あんなに上位なんてすごい。びっくりしました」。自分も、と未来を重ね合わせた。

入学するテキサス州のレンジャー・カレッジは、2年制の短大の大会で昨シーズン全米2位だった。「強いのと、元ケンタッキー大学のコーチがヘッドコーチをされているので」と富永。ケンタッキー大からは大勢のNBA選手が生まれている。ここをステップにして、八村が所属したゴンザガ大のようなNCAA(全米大学体育協会)1部の大学に編入し、NBAへと考えている。

昨年のウィンターカップ準決勝、ドリブルで切り込む富永

桜丘高が3位となった昨年12月のウインターカップで、身長185cm、72kgのスモールフォワードは、利き手の左からスリーポイントシュートを打ちまくった。スリーポイントラインから離れていても、いけると思えば迷いなく狙った。3位決定戦の第1クオーター終了間際には、ハーフライン付近の自陣側からから決めた。ゴール下にドリブルで攻め込むスピードもあるため、スリーポイントを狙うチャンスは広がる。枠に収まらないプレーで、6試合で239点(1試合平均39.8点)を挙げて得点王となった。

新年が明けてすぐSNSで米国留学の意思を公表した。「行きたいというのはずっと思ってました。アメリカのことも視野に入れつつ、日本の大学も考えてたんです。(アメリカに)行けると思い出したのは、高校3年のU18アジア選手権が終わったくらいでした」。2018年8月のU18アジア選手権(バンコク)で、全体5位の1試合平均19.3得点(7試合)。「試合をアメリカの大学のコーチが見に来てたんです。(獲得の候補として)視野に入っているようだと聞いて、(アメリカが)いいなあと思いました」

父の啓之さんはかつて三菱電機(現・Bリーグ名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)で活躍した元日本代表のセンターで、母のひとみさんも三菱電機の元選手だった。自然とバスケを始め、愛知・岩成台中学校3年生で全国3位になったが、「目立つ選手じゃなかった」と振り返る。当時は身長170cm。桜丘高で身長とシュート力が伸びた。高2の17年11月、U16日本代表強化合宿に初招集された。ロイブル・ヘッドコーチが富永のプレーぶりに興奮して「ダイヤモンドを発見した」と言ったというリポートが、日本協会のホームページに残っている。

留学を表明、NBA選手からも励まされた

米国留学を表明すると、いろんな人からの応援が届いた。「渡辺さんや富樫さんからもアドバイスをもらいました」。NBAメンフィス・グリズリーズの渡辺雄太や、高校段階でアメリカへ留学したBリーグ千葉ジェッツの富樫勇樹とはSNSでつながっており「最初は言葉の壁があると思うけど、行った方が技術も磨けるし、成長できる」と勇気づけられた。

昨年のウィンターカップ3位決定戦のあと、相手のヘッドコーチと笑顔で握手する富永

この6月にはステフィン・カリーからも励ましを受けた。NBAの過去5シーズンで3度優勝したゴールデンステート・ウォリアーズの中心選手は、富永が「シュートがどこからも狙える。パスもできる。ボールをもらえるまでの動きがうまい」と理想にする選手。来日して開かれたイベントに招かれ、少しだけ話す機会があったという。「シュートがうまいんだからどんどん狙っていけ、と。留学のことを伝えたら『いいことだ』って。『挑戦して、壁にぶち当たるかもしれないけど、それを乗り越えたら強くなれる』と言ってもらえました。めちゃくちゃ興奮しました」

昨年12月のウインターカップのあとにNBAの招待で渡米して同世代の選手たちと練習し、「跳ぶ力とか、みんな能力が高かった」という印象がある。「もっとフィジカル(体力)をつけないと。シュートを打つまでの過程、もらい方なんかが大事だと思う。あとは言葉も」と課題を語る。丸刈りの頭については「アメリカでも、たぶんこのまま」と言った。趣味は「全然ないです」。アメリカで自由な時間はどうやって過ごすのか聞いてみると「たしかにそうですね。まだ考えてないです」。頭の中はバスケ一色のようだ。

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