バスケ

特集:第71回全日本大学バスケ選手権

筑波大、3年ぶり5度目のインカレV 4年生が動いて変わったチームの結束

タイムアップの瞬間。苦しみながらチームをまとめた牧(右から2人目)は誰よりも先に泣き出した(すべて撮影・青木美帆)

バスケ第71回全日本大学選手権 決勝

1215@東京・駒沢オリンピック公園総合運動場
筑波大 91-76 専修大
筑波大が3年ぶり5度目の優勝

一昨年の準優勝チームの筑波大と、昨年の準優勝チームの専修大。お互い「今年こそは」と意気込んで迎えた決勝は、スタートダッシュに成功した筑波大がその勢いのまま押し切り、3年ぶり5度目の優勝を果たした。

筑波大主将・牧隼利 最後は一人のプレーヤーとして、納得のいく戦いを!
食えない男、筑波大・増田啓介が腹をくくった

「神がかり的」な立ち上がりで流れをつかんだ

試合は専修大のスーパーエース・盛實海翔(4年、能代工業)の2連続3ポイントからスタート。この時点で専修大ペースになってもおかしくなかったが、「流れを渡したくない」と筑波大の牧隼利(4年、福大大濠)が強気で3ポイントを決め返し、チームがコンセプトとしていたディフェンスからの速攻も2連続で成功。山口颯斗(3年、正智深谷)や牧の得点でなおも押し、筑波大の吉田健司ヘッドコーチ(HC)が「神がかり的」と振り返る立ち上がりを見せた。

山口は鋭い突破とアウトサイドシュートで何度もチームを勢いづかせた

筑波大は11月初旬に閉幕したリーグ戦からこのインカレに向けて、ディフェンスシステムを見直した。スタンスをポジションごとに細かに変化させ、ヘルプ&ローテーションをシンプルなルールで統一。これが見事にはまり、専修大の攻撃の軸となる、アブ・フィリップ(4年、アレセイア湘南)のゴールアタックと盛實の3ポイントシュートを封じた。

「自分たちがやってきたディフェンスを信じて、そこからの速攻を徹底できた」とは増田啓介(4年、福大大濠)。第2クオーター(Q)以降、筑波大は一度もリードを譲ることなく、3年ぶりの日本一を達成した。

増田(左)は速攻の先頭を走り切り、チームトップの21得点(うち3ポイント3本)を挙げた

練習中は緊張感と厳しさを、4年生が意識させた

大学バスケットに限った話でなく、学生スポーツの肝は最上級生にある。筑波大は5位とふるわなかったリーグ戦を受け、5人の4年生を中心にチームの雰囲気を変えていった。特にこだわったのが練習中の緊張感と厳しさ。4年生が、気の抜けたプレーを許さない姿勢を見せているうちに、「4年生だけに任せてはいけない」と3年生たちの意識も変わり、それが下級生へと伝播していった。

もう一つ、大きな変化があった。筑波大は例年、つくばにある各自の自宅から都内の会場に連日通っていたが、今年は「選手間でバスケットのコミュニケーションをとりたい」という牧の提案により、会場近辺のホテルに宿泊。移動の時間が劇的に減ったことで、吉田HCと学生スタッフ、4年生、3年生、控え組など、さまざまなところでの対話が増えた。井上宗一郎(2年、福大大濠)は「選手だけでいる時間が圧倒的に長かったから、試合中もコート内外でいいコミュニケーションが取れるようになったと思う」と振り返っている。

HCも、キャプテンも、上級生も、下級生も……。チームに関わる者すべてが、変化を恐れず、信じ、徹底した結果が最高のエンディングを生んだ。一枚岩としての確かな強さが、今大会の筑波大には存在していた。

全員が気持ち一つで挑み、3年ぶりに頂点に立った

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