4years.
Presented by JBA/B.LEAGUE

千葉ジェッツの佐藤卓磨 ©B.LEAGUE

千葉ジェッツ・佐藤卓磨 3年ぶりの天皇杯制覇へ闘志を燃やす

2022.02.08

『返リ咲ケ』――。天皇杯奪還へ向け、千葉ジェッツはこの合言葉を掲げた。間近に迫るセミファイナルを「バチバチの戦いになる」と読むのは加入2年目の佐藤卓磨(26)だ。前回大会は怪我に泣いたユーティリティープレーヤーは、自身としても雪辱を果たす舞台となる。持ち前のハードワークと不屈の精神でチームを支え、千葉に3年ぶりの栄冠をもたらせるか。

記憶に残る天皇杯は、幼い頃魅了されたチームとの一戦

今大会で97回目を迎えた「天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会」。日本バスケの頂点を決める同大会の決勝戦は、これまで主に年明けに開催されてきた。

「お正月の恒例行事でしたね。僕もお雑煮を食べながらテレビの前に釘付けになって試合を見ていました。小・中学校の頃はアイシン(現・シーホース三河)が強くて、その中でも柏木(真介)さんは僕の高校の大先輩なのでずっと柏木さんのプレーを見ていました。『本当に上手い選手だなぁ』って」

佐藤は、そう言って天皇杯の思い出を語る。北海道出身の彼は、幸運にも2006年に日本で開催されたFIBAバスケットボール世界選手権を地元で観戦し、アメリカ代表の試合を目の当たりにした。これに大きな影響を受けてバスケにのめり込むと、中学校1年生の時は160cmほどだった身長もみるみる伸び、東海大学付属第四高校(現・東海大学付属札幌高校)に進学する頃には190cmまで達した。「そこからちょっと人生が変わりました(笑)」。佐藤少年の思い描く夢は、ここからプロバスケットボール選手へと変化していった。

佐藤は、東海大学在学中の2017年に特別指定選手として滋賀レイクスターズに加入し、プロキャリアをスタート。3シーズン目を迎えた2020年の天皇杯では、幼い頃から強く魅せられていた三河と準々決勝で対戦し勝利を収めた。当時の三河に柏木はいなかったが、クラブ初の4強入りを果たしたこの試合を今でも大事にしている。「歴史のある大会で昔から見ていたチームに勝てたので、自分の中でとくに記憶に残る試合です」

©B.LEAGUE

武器は万能さと不屈の精神、千葉でも不動の先発に

B.LEAGUEの2020-21シーズン、佐藤は活躍の場を千葉ジェッツへと移す。197センチの長身、それに加えて走力、守備力、シュート力も兼ね備えるシューティングガード兼スモールフォワードは、2017年から天皇杯3連覇を成し遂げたクラブにおいても即戦力として評価を受けた。不動のスタメンとしてチャンピオンシップを含めた61試合で先発を担うと、見事にリーグ制覇を達成。千葉にとっては過去に2度跳ね返されてきたファイナルを制しての悲願だった。加入1年目で優勝に貢献した佐藤は、自身のストロングポイントをこう自負する。

「『堅守速攻』というチームスタイルがある中で、まずはディフェンスで貢献できること。あとはトランジションの場面でどんどん前を走ることで、たとえ自分にボールが来なくてもスペースができますし、周りを生かすことができると思っています。この身長で自分と同じ動きができる選手は今のリーグであまりいないとも感じているので、そこも強みにしています。今は3ポイントシュートも自分のタイミングで打てているので、昨シーズンよりもフィットしているなという感覚があります」

©B.LEAGUE

このユーティリティーなプレーは大野篤史ヘッドコーチ(HC)から要求されている点でもあり、「ハードなディフェンス、運動量豊富なランニングプレー、シュートを決め切ること。この3つを主に期待されています」と佐藤は言う。絶対的存在として君臨する富樫勇樹を筆頭に、日本代表として昨年も活躍したギャビン・エドワーズや次代を担う若手もそろう現在の千葉において、佐藤は決して派手なプレーヤーではないかもしれない。それでも、毎試合当たり前のようにコートに立ち続けていることが何よりの信頼の証であり、大野HCも以前、こんな言葉で背番号14を評価していた。

「非常に好みのプレーヤーですし、何が好きかってメンタリティが好きです。自分のオフェンスが上手くいかなくても、ディフェンスをしっかりできるメンタルが備わっています。オフェンス時にボールタッチが少ない中でディフェンスするのはすごく大変な作業なんですけど、佐藤卓磨はそれをいとも簡単にやってのけます。あのメンタリティは他の選手たちも見習わなければいけないです」

勝てば決勝進出の初陣は「油断せず、楽しんで」

2月9日、千葉はホームの船橋アリーナで一発勝負の天皇杯セミファイナルに臨む。だが、昨年12月の4次ラウンドから勝ち進んできた琉球ゴールデンキングスに対し、千葉はこの一戦が今大会の初陣となる。昨季リーグ1位の千葉と2位の宇都宮ブレックスは、レギュレーションにより準決勝からの参戦となるのだ。

これがどんな影響を及ぼすかが1つのポイントではあるが、いきなり準決勝から戦う選手たちの心境はどうなのか。佐藤によれば、チームとしては前向きに捉えているようで、「僕も他の選手も初めての経験ですけど『1回勝てば決勝! 楽しもう!』という雰囲気があります。もちろん試合は油断せずに臨みますが、まずは楽しんで、しっかり準決勝で勝ちたいと思っています」と口にする。

最左が佐藤 © B.LEAGUE

今回ホームに迎える琉球は昨シーズンのチャンピオンシップ準決勝でも勝負の第3戦まで激闘を演じた相手であり、現在リーグ戦でも17戦負けなしで西地区首位に立っている。「すごくバランスが良くて隙がない。常にフィジカルにやってきますし、今シーズンはよりアグレッシブになった印象です」と警戒する佐藤だが、「千葉とスタイルも似ているので、バチバチの戦いになるんじゃないかなと思っています」と闘志を燃やす。

前回大会を振り返れば、千葉は後に優勝を果たした川崎ブレイブサンダースに3次ラウンドで敗れ2年連続で苦杯をなめた。その川崎戦、怪我の影響で欠場を余儀なくされ静かにリベンジの時を待っていたのが佐藤である。「自分がいなくても勝ってくれると信じていましたけど、やっぱり貢献したかったという気持ちはありましたね。また次のチャンスが来たら、その時は100%の力を発揮したいという思いはずっとありました」

一度B.LEAGUEの頂点に立ったことで「勝つためにどうするべきかを肌で感じられた」と自信を持つ26歳は、大一番を前にしても冷静だ。「とにかくポゼッションが大事だと思います。オフェンスの回数を多くできれば、勝てるチャンスが大きくなるので、堅いディフェンスをしてどれだけリバウンドを取れるか。リバウンドもただガムシャラにやるのではなく、ボールの軌道をしっかりと読んだり、見たりなど、そういった細かいところまで見極めることが勝つためには必要だと思っています」

© B.LEAGUE

現在、チームは約3週間実戦から遠ざかっており、「周りから見たらコンディションが心配されると思います」と佐藤もブースターを気づかう。選手たちにとってもやはり少しの不安はあるだろう。けれど、試合への飢え、待ち望んでくれていたジェッツブースターへの想いを力に、強い千葉ジェッツは再び船橋アリーナに戻ってくる。

「皆さんもすごくモヤモヤしていると思うので、エネルギッシュな気持ちを前面に出して、迷いのないアグレッシブなプレーでスカッとするような試合を見せたいです。とにかく楽しんで、イケイケドンドンでいきたいと思います」

冷静と情熱の間で笑う佐藤卓磨を見ると、天皇杯の試合が一層待ち遠しくなってくる。


「第97回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会」日程、チケット情報

「第97回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会」放送・配信情報