バスケ男子日本代表・シェーファーアヴィ幸樹(シーホース三河)©︎JBA
16歳でバスケを始めてわずか1年足らずで世代別代表候補に選出され、4年後に代表入りという異例の“スピード出世”を果たしたシェーファーアヴィ幸樹(シーホース三河)。ワールドカップ、オリンピックとビッグゲームを経験した24歳は世界を見据え、2月25日〜28日の「FIBAバスケットボールワールドカップ2023 アジア地区予選」Window2に挑む。
シェーファーのアグレッシブなプレーに魅了される
206cm106kgの体格と豊富な運動量を生かし、走り、跳び、体を張る。コート上で常に全力を発揮し、相手が誰であろうと果敢に立ち向かっていく姿が清々しい。
バスケを始めたのは16歳の秋。都内のクラブチームでプレーする姿が関係者の目にとまり、翌年の冬にJBA主催のエリートキャンプ「U18トップエンデバー」に招集されると、そのままU18日本代表の座を射止め、さらに翌年には八村塁(ワシントン・ウィザーズ)らとともにU19ワールドカップも経験した。今月はシーホース三河、「FIBAバスケットボールワールドカップ2023 アジア地区予選」Window2代表候補、9月開催の「第19回アジア競技大会(2022/杭州)」の代表候補と三つのチームを掛け持ち。「オフがなくて大変です」とシェーファーは笑う。
体格や運動神経といった元々の才能は間違いなくある。しかし、シェーファーがこれほどまでに急激な成長を遂げられた理由は、大きな壁から逃げず、全力で立ち向かっていこうとする姿勢だ。
初めて”代表レベル”を実感したトップエンデバーでは、全国大会で活躍する選手たちに気後れしながらも、「自分のやれることをやろう」と考えていた。練習で必死にスキルを磨きながら、実戦では速攻に走ること、リバウンドに何度も跳ぶこと、体を張ることといったシンプルなプレーに全力投球。そこから実戦でできることを徐々に増やしていった。
「バスケを始めたのが遅かったので、全力でやるのがクセになっていると言いますか、普通にやってもかっこつけても通用しないなら、できることをやるしかないと。今はずいぶんスキルが追いついてきましたけれど、それでも格上の選手と戦うときは『とにかく全力でできることをやろう』と思っています」
東京2020オリンピックでのシェーファーのプレーを思い返す。世界のトップ選手たちを相手にシェーファーは短い出場時間ながら、「とにかく全力でゴール下を守る」という強い意志を感じるようなアグレッシブなプレーを見せていた。
「僕が一番大切にしているのは挑戦です。U18の活動で『これから先も高いレベルでバスケをやりたい』と思ったので、アメリカに渡り、全米優勝しているブリュースターアカデミー、NCAAディビジョン1のジョージア工科大学へと進み、帰国後はアルバルク東京に所属しました。いずれもなかなか試合には出られませんでしたが、どれだけレベルの高い場所でも、自分を追い込んでいると通用するものが見えてくるんです。振り落とされないよう、必死で這いつくばるような毎日でしたけど、その過程の中で少しずつ技術や自信を身につけていくことができました」
10代のころはキャリアの短さへのコンプレックスがなかなか拭えなかったとシェーファーは振り返るが、今は違う。「すごく濃密でハイレベルなコーチングを受けてきましたし、もうキャリアは関係ないかなと」。目に見える結果は出ずとも、過酷な環境でチャレンジして得たものの大きさを、シェーファーは自身のパフォーマンスに実感している。
代表の経験が、もっと自分を成長させる
現在、男子日本代表は来年沖縄で開催される「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」のアジア地区予選を戦っている。東京2020オリンピックで女子日本代表を銀メダルに導いたトム・ホーバス氏をヘッドコーチ(HC)に迎えた新生日本代表で、シェーファーは今まで以上に自身が果たすべき役割が明確になってきたという。
「前回(Window1)の中国戦は個人的にひどい出来だったんですけど、チームメイトやトムさんから『お前しかいないんだから』というような言葉で励ましてもらって、『自分が必要とされている』と感じましたし、今まで以上に『代表を担う』という自覚が芽生えました」
ホーバスHCはコートに立つ5人全員が3Pシュートを打てる『ファイブアウト』というオフェンスシステムを採用している。センターとしてゴール下を主戦場としてきたシェーファーも、アウトサイドに出てプレーすることが増えた。
「ボールマンにスクリーンをかけた後にゴール下に飛び込んだり、今までとはまた違うプレーが増えて難しさは感じていますけど、面白いです。三河でなかなかうまくいかないプレーのヒントを代表で学べることもあります。代表でアウトサイドでのプレーと賢さを学べば、もっともっと上にいけると思います」
日本代表でいることが、モチベーション
FIBAワールドカップ2019の選考レース以来、代表メンバーとしての足場は着々とできあがってきた。これからシェーファーが目指していくのは、より長くプレーし、代表に欠かせない選手になることだ。そして、このロールモデルとしてシェーファーが注目するのが、女子日本代表前主将の髙田真希(デンソー アイリス)だという。
「トムさんには『髙田選手のような位置づけの選手になってほしい』と強く言われています。賢くて常にベストな選択をとっていて、トムさんはすごく信頼しているそうです。自分もそうなれたらおのずとプレータイムが増えますし、真似していきたいなと思っています」
シェーファーはさらに、代表選手としての今後の自分について思いをはせる。
「まだそんなに明確になっているわけではないですけど、潤滑油のような存在になりたいですね。塁や雄太さん(渡邊雄太/トロント・ラプターズ)みたいな中心選手がプレーしやすい地盤をつくるというか、彼らがシュートを打ちやすいように動くというか。その中で自分もアグレッシブにシュートを打ったりして、存在感を出していければと思っています」
「今僕がトップレベルでバスケを続けられているのは、下手で経験のない僕に可能性を感じ、育ててくださった代表関係者のおかげ。代表は僕のモチベーションの中心にあるものです」と、代表活動に強い思いを持つシェーファー。世界を見据えた伸び盛りのビッグマンが、今週の「FIBAバスケットボールワールドカップ2023 アジア地区予選」でどのようなプレーを見せてくれるか、楽しみだ。
「FIBAバスケットボールワールドカップ2023 アジア地区予選」日程、チケット情報