4years.
Presented by JBA/B.LEAGUE

千葉Jの富樫勇樹(右)と琉球の岸本隆一の対決にも注目 ©︎JBA

天皇杯は12日に東京で決勝 玉座奪還を目指す千葉Jか、悲願の初優勝を狙う琉球か

2023.03.06

3月12日、「第98回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会」が東京都江東区の有明コロシアムで開催される。対戦カードは千葉ジェッツと琉球ゴールデンキングス。昨年10月に開幕したBリーグ2022-23シーズンでいまだ対戦しておらず、今季初の顔合わせが天皇杯ファイナルというビッグゲームで実現するとは、さすが東西を代表する人気クラブは「何か」を持っている。展開を予想しにくいこの試合をより楽しむために、両チームの特徴や試合の見どころを簡単に紹介しよう。

爆発力のあるオフェンスと強固かつ組織的なディフェンス

昨年準優勝で天皇杯を終えた千葉Jは、3次ラウンドから今大会に参戦し、2年連続のファイナル進出を決めた。初戦の越谷アルファーズ戦は、飛行機のトラブルで会場入りが大幅に遅れるというアクシデントも手伝って、あわや敗退かという展開に。クォーターファイナルの信州ブレイブウォリアーズ戦も、延長戦にもつれ込んだ末に辛勝した。

セミファイナルの宇都宮ブレックス戦は、序盤から富樫勇樹やヴィック・ローの得点と堅守で点差を広げ、第3クォーターに宇都宮に追い上げられた時間帯も、ギャビン・エドワーズやジョン・ムーニーのリバウンドからいい流れを作り、主導権を渡さず。終始危なげない展開で77-65で勝利した。

ディフェンス力も期待される原修太 ©︎JBA

千葉は今季よりドイツ・ブンデスリーガで長くコーチを務め、日本バスケ界への造詣も深いジョン・パトリック氏がヘッドコーチ(HC)に就任。爆発力のあるオフェンス力はそのままに、強固かつ組織的なディフェンス力が上積みされたチームは、現在Bリーグ最高勝率(34勝4敗)で東地区1位に君臨し、2月12日の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦で、琉球が持つリーグ記録「レギュラーシーズン20連勝」に並んだ。

スピードとゲームメイク、3ポイントシュートでオフェンスを支配する富樫を軸に、ディフェンス力の高い原修太や佐藤卓磨、高い身体能力を発揮するフォワードのヴィック・ロー、クリストファー・スミス、ゴール下で献身的に活躍するエドワーズ、ムーニーら粒ぞろいの実力者たちが、的を絞らせないプレーで対戦相手を翻弄(ほんろう)してきた。

今回の琉球戦の懸念点を挙げるとすれば、けが人が相次ぐベンチの選手層か。特に、天皇杯セミファイナルの宇都宮戦で負傷した帰化枠のエドワーズが欠場見込みなのは、チームにとって大きな痛手だろう。エドワーズと、ロー、スミス、ムーニーのいずれか2人の同時起用は、帰化選手がいない琉球に対し、大きなアドバンテージとなり得るものだったからだ。スタメン起用が予想される佐藤の奮起、そして、ムーニーの負担を軽減する戦術や選手ローテーションの遂行が勝敗のカギを握りそうだ。

千葉Jは今季の開幕時に、「東地区」「Bリーグ」「天皇杯」の三冠という目標を掲げた。2019年以来となる4回目の天皇杯制覇を見据え、富樫は「三冠の一つ目となる天皇杯優勝をしっかりつかみにいきたい」とコメントした。

高い身体能力を持つクリストファー・スミス ©︎JBA

ワールドカップの開催、「琉球」「沖縄」に注目

スーパーシードとしてセミファイナルから天皇杯に参戦した琉球は、横浜ビー・コルセアーズを96-91で下し、初のファイナルに駒を進めた。河村勇輝に45得点の大量得点を献上したものの、桶谷大HCは「ノーマークのシュートはほとんど決められていない」「最後まで全員がしっかりボールを動かし、いいプレーができた」と攻守ともに及第点をうかがわせるコメントを残している。また、牧隼利や今村佳太らオーバーサイズの選手に河村を守らせた経験は、河村とタイプが似ている千葉Jの富樫にも生きそうだ。

29勝9敗で西地区2位につける琉球の強みは、Bリーグ3位を誇る失点の少なさと、ベンチメンバーの充実ぶり。特に、岸本隆一、コー・フリッピン、牧、今村ら、ハンドラーとウイングの両方で高パフォーマンスを発揮できる選手の数はリーグでも屈指で、彼らの組み合わせによって様々な強みが発揮できる。同じくハンドラーとウイングでプレーできる松脇圭志や、泥臭いプレーでチームを支えるジョシュ・ダンカンら今季移籍組もすっかりチームにフィットした。

個人技が光る今村佳太 ©︎JBA

さらに琉球にとって心強いのが、先日の「FIBAバスケットボールワールドカップ2023アジア地区予選Window6」で躍動した渡邉飛勇の戦列復帰と、アジア人特別枠のカール・タマヨの加入だ。今季の開幕以来、ジャック・クーリー、アレン・ダーラム、ダンカンの3人でインサイドをやりくりしてきたチームに若く勢いのある2人のビッグマンが加わり、さらにすきのない陣容となった。

琉球は2016年のBリーグ開幕以前まで「bjリーグ」に所属しており、今回のファイナル開催地である有明コロシアムで4度のリーグ制覇を経験している。13-14シーズン、15-16シーズンに優勝した岸本は、有明コロシアムについて「ホームのような感覚でプレーできる場所の一つ」と語る。08-09シーズン、11-12シーズンに優勝した桶谷HC、そして当時を知るファンもおそらく岸本と同じ思いだろう。

さらに、今年8月25日から9月10日にかけて、ホームアリーナの沖縄アリーナで「FIBAバスケットボールワールドカップ」が開催されることも忘れてはならない。大会開幕まで5カ月を切り、国内バスケットボールに対する世間の注目度が徐々に高まりつつある中、天皇杯ファイナルというビッグゲームで「琉球」「沖縄」の名を存分に轟(とどろ)かしたい。

インサイドを支配するジャック・クーリー ©︎JBA

3ポイント合戦も個人技も見どころ

4年ぶりの玉座奪還を目指す千葉Jか、悲願の初優勝を狙う琉球か。対象的な両者で争われる天皇杯ファイナルは、東京・有明コロシアムにて15時試合開始を予定している。

富樫と岸本のエースガード対決および3ポイント合戦。千葉Jのクーリー対策。ロー、スミス、今村らの個人技対決。原と松脇のフィジカルディフェンダー対決………。様々な見どころが詰め込まれた一戦を、ぜひ多くの人に見届けてもらいたい。(文・青木美帆)

放送(地上波あり)・配信予定はこちら