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パリ2024オリンピックで日本代表は大きな財産を得た ©朝日新聞

パリからロサンゼルスオリンピックへ バスケ日本代表、高みを目指し新たなスタート

2024.08.30

5人制バスケットボールとしては、東京2020オリンピック(以下、東京大会)から2大会連続で男女そろって出場を果たしたパリ2024オリンピック(以下、パリ大会)。接戦もありながらいずれも予選ラウンド敗退に終わったが、4年後のロサンゼルス2028オリンピック(以下、ロサンゼルス大会)を目指すうえで貴重なステップとなった。ヘッドコーチ(HC)や選手に、パリ大会で世界と戦い感じたこと、そして4年後への思いを聞いた。

男子日本代表 成長を積み重ねて次はベスト8を

パリ2024オリンピックに挑んだバスケ男子日本代表 🄫日本バスケットボール協会

男子は、2023年のワールドカップ優勝国であるドイツとのゲームから始まり、オリンピック開催国のフランス、そして直前の世界最終予選を勝ち抜いてきたブラジルと対戦。フランス戦は、勝利をほぼ手中に収めながら、残り10秒で4点差を追いつかれ、延長戦で力尽きた。

しかし、それがオリンピックで世界と戦うということ。世界最高峰のスポーツの祭典で、誰もが世界一を目指すなか、ほんのわずかな隙が勝敗を分ける。それを実体験できたことは、日本のバスケ界にとって、大きな財産になったはずだ。

「負けて悔しいですが、選手たちはよく頑張りました。英語で言えば『I’m proud of them. I’m proud of the players.(彼らを誇りに思います。選手たちを誇りに思います)』です」。トム・ホーバスHCがそう振り返れば、リーダーとしてチームを引っ張った渡邊雄太も言葉を継ぐ。「僕もこのチームの一員だったことを誇りに思います。日本が今までよりも強くなったことは、これまでの日本代表でさまざまな負けを経験してきた僕からしても、成長を感じるものでした」

2023年のワールドカップの結果(3勝2敗)を思うと、パリ大会での3連敗は悔しさも大きいが、世界トップとの差は、試合内容を見ても確実に縮まってきている。ホーバスHCも「勝てなかったですが、ワールドカップよりも今回のオリンピックのほうが日本のバスケは良かったです。本当にステップアップしていると思います」と言い切る。

ブラジル戦で果敢に得点を狙った河村勇輝 🄫Getty Images

ポイントガードとして世界に名を知らしめた河村勇輝も「世界との差は縮まってきている」と感じた。「日本のバスケの進むべき道や、準備してきたことは間違っていないと思える大会になったと思います。だからこそ、これからの4年間、それを積み重ねていけば、ロサンゼルス大会では必ずベスト8、あるいはそれ以上の結果が出ると信じています」

女子日本代表 次は日本らしさを出してメダル獲得へ

パリ2024オリンピックに挑んだバスケ女子日本代表 🄫日本バスケットボール協会

オリンピックでの落差という点では女子のほうが大きかったかもしれない。東京大会では史上最高位の銀メダルを獲得したが、パリ大会では予選ラウンド3連敗という結果になってしまった。

初戦でオリンピック8連覇を達成したアメリカに敗れると、予選ラウンド突破のためには落とせなかったドイツ、ベルギーに連敗。これまで以上にアスレティックかつフィジカルにプレーしてくる相手を上回ることができなかった。

しかし、それは女子日本代表が東京大会からもう一段上のステージに上がろうと進化の道程に踏み込んだからこそ生まれたものだ。手に入れたい結果が得られなかったからといって、その過程が間違っていたとは決して言えない。

恩塚亨HCも選手たちの挑戦を認めている。「前回東京大会の銀メダリストというプレッシャーはありましたが、その中で世界一を目指し、全身全霊をかけて挑んでいました。その頑張りは世界一に値する努力だったと思います」

キャプテンの林咲希も悔しさでいっぱいのなか、「(オリンピックに臨む)練習は人一倍、どこの国よりもやってきた自負がありますし、スタッフ陣もどうやったらオリンピックで勝てるのかを日々考えてやってきました。そうした思いは本当に強かったです」といえば、東京大会のベンチメンバーから、今大会の正ポイントガードにステップアップした宮崎早織は「本当に楽しかったオリンピックでしたし、自分の成長を本当に感じられた大会だったと思っています」と言う。

初戦のアメリカ戦で脳震盪(のうしんとう)を起こし、残りの2試合を欠場せざるを得なかった山本麻衣は、次のロサンゼルス大会に向けて「Wリーグふくめ、日本のスタンダードなレベルをもっとあげていかなければと思いますし、今回代表選手が世界と戦い感じたことをリーグで表現することで日本のレベルがあがってくるのだと思います。その先のロサンゼルス大会では日本らしいバスケでメダルを再度目指したいと思います」と力強く話す。

アメリカ戦で躍動した山本麻衣(中央)と林咲希(右) 🄫Getty Images

応援を力に、ロサンゼルスでの飛躍を誓う

大会中は、SNSを通じてエールを送ってくれたファン、試合会場だったリールまで駆けつけたファンも数多くいた。そうした応援があったからこそ、彼女たちは最後まで自分たちのバスケを貫き通すことができた。林は感謝を込めて、こう話す。

「海外のバスケファンは熱い人が多いですが、日本のファンもそれに負けず自分たちにエールを送ってくれました。私たちと同じように悔しい思いをして、戦ってくれたと思っています。大会前から大会中、大会後まで、常に変わらず同じスタンスで応援してくれたファンの存在はすごく心強いものでした」

山本も、「時差もあるなか、リアルタイムで応援してくれた方々もたくさんいて、アウェイの中で試合をしていたんですけど、ものすごい力になったので本当に感謝しています。パリでも日本人の方が現地で応援してくださっているのをみると本当に心強くなっていました」と笑顔で話す。

ファンの存在と応援は、ファンが思う以上に選手の後押しとなっている。それはもちろん女子だけの話ではない。河村もいう。「遠くまで応援に駆けつけてくださったファンの皆さんや、また日本から画面を通して応援してくださった方もたくさんいて、苦しい状況ではありましたけど、皆さんの声が最後まで戦う僕たちに火をつけてくれました。本当に感謝したいですし、だからこそ次のロサンゼルス大会で、必ずファンの皆さんに勝利という形で恩返しができるように頑張っていきたいです」

まさに日本が世界で戦う上で掲げてきたのが、“日本一丸”。目指した結果は今回は得られなかったが、日本から遠いパリで戦う選手のプレーひとつひとつに日本中が一喜一憂し、手に汗握り、残り数秒に息をのむ。ここまで一丸となって日本バスケを応援する心は、選手に届き、4年後のロサンゼルス大会につながっていく。世界トップクラスとの距離は簡単に埋まるものではないが、手の届かない距離ではない。

ファンとともに日本一丸となって戦った 🄫日本バスケットボール協会

山本は「私はまだ24歳で、これからが楽しみな時期だとも自分でも思っています。これからも私の止まらない成長を見ていてほしいなと思います」と口にする。

今シーズンからアメリカに渡り、プロ入りに挑む河村はアメリカでの成長をこう告げる。「いろいろなバスケに触れて、たくさんの経験をすることが必要だと思いますので、アメリカでいろいろなコーチやチームメートとプレーしながら、バスケの感覚、ゲームの感覚、勝つための感覚をより研ぎ澄ましていきたいと思っています」

世界を肌であらためて感じ、目標も成長すべきところも明確になったバスケ日本代表は、4年後に向けてすでに走り出している。