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中大・高山鈴琉「これからも1、2年生が重要」 新人インカレ優勝の勢いを全学年でも

新人インカレ男子優勝に大きく貢献した中央大学の高山鈴琉(すべて撮影・井上翔太)

大学1、2年生で構成される「第2回全日本大学バスケットボール新人戦」(新人インカレ)で中央大学が初優勝を飾った。今大会に先立って開催された「第64回関東大学バスケットボール新人戦」は4位。準決勝で敗れた東海大学、3位決定戦で敗れた専修大学に雪辱を果たして頂点に立った。チームの中心を担う高山鈴琉(れいる、2年、東海大諏訪)は「自分たちからアタックして、チャレンジャー精神でいけた」と振り返る。

【写真】女子は早稲田大学、男子は中央大学がともに初優勝! 第2回新人インカレ特集

準決勝の後、高校からの盟友のもとへ

高山は新人インカレで2度泣いた。

1度目は準決勝で対戦した東海大戦の後。第3クオーター(Q)を終えた時点で70-50と20点のリードを持っていたが、最終第4Qに東海大が怒濤(どとう)の追い上げを見せてきた。中川知定真(2年、東海大諏訪)や直井隼也(2年、北陸学院)の3ポイントが決まり、点差がみるみると縮まる。残り時間1分19秒で74-73と1点差まできたところで、タイムアウト。ここで高山は「プレーどうこうというより、チームを鼓舞できるような声かけを率先してやっていました」。

再開後、相手の手が高山の顔にぶつかり、ファウルをもらった。フリースローを2本とも冷静に沈め、76-73。その後もスコアをひっくり返されることなく、79-73で逃げ切った。

決勝進出が決まると、高山は両手で顔を覆う中川のもとに駆け寄った。これが涙の理由だった。「中川とは(高校で)ずっと一緒にやってきたんで、あいつが泣いているのを見てしまうと……。そういう仲間意識がある中、この大舞台で一緒に試合ができたというのも、お互いに頑張ってきた証しだと思います」。取材でこの場面について口にしている最中も、目が潤んでいた。

準決勝後、両手で顔を覆う中川(4番)のもとへと駆け寄った

「やりたいバスケ」を見つめ直した大会序盤

決勝の相手は、関東新人戦の3位決定戦で敗れた専修大学。「前日の東海さんの思いもありますし、これまで自分たちが練習試合でも勝てていなかった相手なので」と高山は強い思いを持って臨んだ。

専修大はエースの介川アンソニー翔(2年、開志国際)を欠いていた。U22日本代表に選ばれ、同時期に台湾で開催されているウィリアム・ジョーンズカップに出場しているためだ。その分、相手からは「自分がやらなきゃ」という気持ちを強く感じたと高山は言う。「91番の土屋(来嵐、2年、桜丘)だったり、28番の野﨑(稜太、2年、近大付)だったり。プレーで示せない場面でも、声で示していました」。理想の形とは程遠い展開となり、30-35と5点のリードを許して前半終了。それでも後半は、坂口大和(2年、北陸学院)が難しい体勢からのシュートを数多く決め、高山も第4Qでこの試合初となる3ポイントシュート成功。64-58で初優勝を収め、涙を流した。

「新人インカレのグループリーグのとき『自分たちのやりたいバスケは何なのか』をいま一度考え直しました。やっぱり中央大学って、すごく勢いがあって元気なところが持ち味。そこを上げていけたら、コートにいる5人だけでなく、ベンチもスタッフもトーンアップできる。苦しい時間帯には『辛抱、辛抱』という話をして、これだけ粘れるチームになった。そこは自分たちの成長だと思うので、これからも続けていきたいです」

専修大学との決勝は耐える時間も長かった

けがで離脱していた期間に学んだこと

京都精華学園中学時代に全国大会を制し、強豪の東海大諏訪高校でもウインターカップや全国高校総体(インターハイ)に下級生の頃から出場。ただ、大学ではルーキーイヤーの昨年8月、左ひざの大けがを負い、手術を受けた。リハビリを経て、復帰は今年の2月あたり。関東新人戦には「7割ぐらい」の状態で臨み、両足のひざ下にテーピングを巻いて出場していた。

離脱していた期間に学んだことがある。「ベンチ裏で試合を見ていて『出たいな』っていう気持ちもありました。でも、ベンチに入っていないからこそ、感じることもいっぱいあって。スカウティングや選手への声かけ、特にプレーの中で崩れたときに、どういう振る舞いをしたらチームがトーンアップでききるのか。昨年の4年生の偉大な背中を見ていました」。大事な場面でこそ、チーム全体で声を掛け合い、意思の統一が必要。今大会を勝ち抜いた背景の一つでもある。

新人インカレではそれまで両足に巻いていたテーピングが取れていた

これからも「3、4年生にプレーをすべて預けることなく」

中大には、選手たち自身がお互いを指摘し合う「学生主体」の文化がある。そこで求められる選手像は、東海大諏訪で過ごした高校時代が生きていると、高山は言う。「入野さん(貴幸、現・東海大学コーチ)から言われたことに対して、自分たちでまたコミュニケーションを取るみたいな。それが自分や石口(直、2年、東海大諏訪)には根付いていて、坂口もできる。ガード陣がセンター陣に伝えることで、全体のコミュニケーションにつながるということができています」。学生主体は弱みではなく、「自分たちでできる」という強みに変えている。

今後は、4学年がそろって関東のリーグ戦やインカレに挑んでいく。そこへつながりそうなところを尋ねると、「1、2年生がもっと試合に絡んでいかないと、チームの底上げにならない。3、4年生にプレーをすべて預けることなく、自分たちが率先して強気にプレーしていけたら、チームも強くなると思います。これからも1、2年生が重要」と返ってきた。創部100周年を迎えたチームに、2年生以下の選手たちが大きな勢いをもたらし、秋シーズンに向かっていく。

準決勝の試合前、東海大の入野コーチと握手を交わした

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