立教大学・常陸匠「程よく」から「やるしかない」へ 新人インカレ出場つかんだ立役者
6月9日に閉幕した第64回関東大学バスケットボール新人戦で、立教大学が7位に入り、7月に予定されている第2回全日本大学バスケットボール新人戦(新人インカレ)への出場権をつかんだ。昨年から狙っていたという今大会。ゲームキャプテンとしてチームを引っ張ったのが常陸匠(ひたち・たくみ、2年、桐光学園)だ。
最後の出場権を争った山梨学院大学戦
山梨学院大学との7位決定戦。勝った方が新人インカレへの出場権を獲得する一戦は、白熱した展開となった。36-37と立教大が1点を追いかける形で前半終了。第3クオーター(Q)に常陸が立て続けに3ポイントシュートを沈め、60-47と13点のリードを奪った。
最終第4Qは山梨学院大が猛攻を仕掛けた。高校時代にU18日本代表に選ばれ、B2福島ファイヤーボンズの特別指定選手としても2カ月間活動した菅野陸(1年、帝京安積)にボールを集め、菅野が深い位置からも果敢に3ポイントを狙い、成功。立教大は残り時間12.3秒で73-70まで詰められ、タイムアウトを取った。マイボールで再開したものの、相手の厳しいディフェンスに遭い、残り10.9秒で山梨学院大ボールへ。その後、何とかリードを守り切り試合終了となった。
「自分たちは『チャレンジャーの精神で挑もう』とやってきたので、点数は勝ってましたけど、最後まで逃げないで攻め続けようと思っていました」とチーム最多の28得点を稼いだ常陸。昨年までは関東大学リーグの3部で戦い、今季は2部に昇格。今回の新人戦では大東文化大学や中央大学、日本大学と1部常連のチームとばかり対戦してきただけに、追われる重圧はあったものの、焦りはなかったと振り返った。
入学したら「いいメンツがそろい過ぎた」
チームは「ベスト4に入って新人インカレに出る」という目標を立てて、新人戦に臨んだ。トーナメントの2回戦で昨年王者の大東文化大に64-61で競り勝ち、続く江戸川大学戦は82-73で勝利。だが、ベスト4進出をかけて挑んだ中央大戦は72-91で敗れ、順位決定戦に回ることとなった。中大戦の後半には常陸が右足首を捻挫してしまうアクシデントもあった。主将の西村亘(2年、都立駒場)が「ここで決めたかった」と言う日大戦も71-87で敗戦。試合後、選手たちは悔しさをあらわにし、常陸は杖をついて引き上げる姿があった。
「ベスト4には進めなかったけど、新人インカレはまだ目指せる。これまで応援してくれている方々やOB、先輩たちの期待に応えるためにも、自分たちは最後までやらなきゃいけない」。試合後に選手たちでそう確認し合い、大会最終日に山梨学院大と最後のイスを争った。常陸は痛み止めを飲んで臨んだ。「日大戦にかけてる思いは結構大きかったんで、気持ちを切り替えるのが大変だった選手もいたと思います。でも、もともと自分たち2年生の世代は、仲が良くて、ふざけてばっかりで、みんな気分屋。そういう意味では、寝たら忘れるタイプも多いので、声を掛け合ったら切り替えられました」
常陸の世代には、田中祥智(2年、正智深谷)や石渡央尚(2年、前橋育英)、佐藤拓海(2年、帝京長岡)らバスケ強豪校からの部員が多く集まった。自身もウインターカップやインターハイへの出場経験がある常陸は「勉強とも両立させながら、バスケも程よくやろうかなぐらいに思っていたんですけど、入学してみたらいいメンツがそろい過ぎちゃってて……『これは、もうやるしかない!』という思いでした」と語る。
高校時代、教育実習に来てくれた先輩に憧れて立教大への進学を決めたという西村も、「毎年部員は6人程度だよ、と聞いていて、入ってみたら10人以上いて、びっくりしました」。出身校を調べたら強豪校ばかりで、YouTubeで常陸や田中らの名前を検索して、プレー集動画を見ていたという。「こんなにすごい仲間たちとやれるんだ、というわくわく感がありました。自分たちの代は強いから、絶対に勝ち上がれると思いましたし、そのために練習から引き締めていました」。ルーキーイヤーだった昨年から「来年の新人インカレには出よう」という話をしてきて、日々の練習を積み上げてきた面もあった。
学生コーチが指揮を取ることも強みの一つに
学生主体で取り組んでいることも、立教大の大きな特徴だ。今大会に限らず、全学年のメンバーがそろって戦う昨年の関東大学リーグ戦途中から、学生コーチが指揮を執り、タイムアウト中は選手たちが意見を出し合っている。「学生コーチに対して自分たちも考えを言える。それは外部コーチとはまた違った良さがあると思うので、強みの一つにしています」と常陸。コート上ではゲームキャプテンとして、オフェンスのプレーをコールするだけでなく、プレー以外の面でもチームを鼓舞することに徹している。
ラストチャンスでつかんだ新人インカレに向けて、常陸は「実感できていないというか、チームとしてもまだ気持ちが浮ついちゃってると思うので、オフをもらった後、またイチから頑張っていきたい。関東という激戦区を戦い抜いて出るからには、結果を残さなきゃいけない」と語った。関東から出場する7チームの中では、唯一の2部所属。とはいえ、今回の新人戦で1部チームと連日対戦し、大きな自信を得た立教大は侮れない。