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神奈川大・長谷川比源 コロナ禍を機に競技始めたルーキー「4年間で穴がない選手に」

ルーキーながらスタートから出場をつかんだ神奈川大の長谷川比源(すべて撮影・井上翔太)

神奈川大学「期待のルーキー」が公式戦デビューを果たした。長谷川比源(ひげん、1年、横浜清風)は高校まで全国大会の経験はないものの、強豪が集まる関東1部校でスタメン出場。父は元プロバスケットボール選手で、そのスケールの大きさを大いに感じさせるデビュー戦だった。

将来を見据えてパワーフォワードに挑戦

第73回関東大学バスケットボール選手権初戦の西武文理大学戦。身長199cmの「背番号34」が、スタートからコートに立った。試合開始直後から積極的にボールを呼び、果敢にリバウンドに絡むだけでなく、効果的な3ポイントシュートを沈める場面も。外からも内からも、多彩な攻撃パターンを披露した。チームは105-60で勝利。長谷川は前後半とも点差が開いたところでベンチに下がった。

「自分は今、4番(パワーフォワード)をやらせてもらっているので、外から攻めたり、自分でドライブに行ったり、パスしたり。リバウンドを意識しながらも、オフェンスは結構自由にさせてもらっています」

高校時代はその長身を生かして、センターを任されていた。ただ大学では、将来的なことも見据えてパワーフォワードに挑戦している。これは本人の志願でもあった。「4番や3番(スモールフォワード)をやりたいとチームに伝えて、そのための練習をずっとしてきました。今はサイズがあっても、スリーを打ったり、ドライブで回ったりすることが求められていると思うので」

3ポイントを狙ったり、ドライブで切り込んだりと多彩なオフェンスが光る

神奈川大でスタートから出るにあたっては、特にディフェンス面を磨いてきた。「ヘルプディフェンスは得意だったんですけど、一線のディフェンスはそれまでそんなにやってこなかったので、幸嶋(謙二)監督からもそういうところを求められて、練習で身につけてきました」と長谷川は言う。

中学1年で170cm弱、高校入学時は195cmに

父は香川ファイブアローズで活躍した元プロ選手。小さい頃から父の試合を観戦し、もともとバスケには興味を抱いていたが、通っていた保育園はサッカーが盛んだったこともあり、中学の途中まではサッカーをしていた。

転機となったのは、コロナ禍だった。「ちょうど中3が始まるタイミングに、コロナで学校がなくなって、部活もなくなったので『バスケを本格的にやろうかな、やりたいな』と思いました」。そのとき、身長も伸びた。中学1年では170cm弱だったが、高校に入学するタイミングで195cmほどに。「コロナの間は、本当にやることがなかったんで、寝てたら伸びちゃいました」と振り返る。

コロナ禍を機に、本格的にバスケを始めた

長谷川はバスケに初めて本格的に取り組む場所として、将来的にNBA選手の輩出をめざす「GLOBALLERSプロジェクト」を選んだ。「ハンドリングを重点的にやっていました。このときから『これからはサイズが大きくてもこういうことができないといけない』と思っていたので」

横浜清風では、知る人ぞ知る存在だった。U16日本代表候補に選出されたことはあったものの、神奈川県内では桐光学園などが壁となり全国高校総体(インターハイ)やウインターカップといった全国大会に出場した経験はない。

全国大会未経験という事実は、長谷川にとってモチベーションを高める要因の一つにもなっている。「特に自分と同じポジションで全国で活躍してきた選手に関しては、倒したいという気持ちで常に試合に臨んでいます。高校のときから常に全国を意識して練習していたので、自分も1部の大学でできるという自信はあります」

サイズに関係なく全員がハードワークをこなし、速攻を仕掛けるようなスタイルは横浜清風と神奈川大に共通している。長谷川のプレースタイルにも合っている。ただ高校時代は自身を中心にセットオフェンスをしていたのに対し、大学では「特に4年生が1対1で打開できる分、自分のやることにフォーカスできる」とより自由度が高くなっている。

高校まで全国大会未経験でも、その伸びしろは計り知れない

一気に増えた攻撃のバリエーション

ルーキーがチームに及ぼしている影響も大きいようだ。幸嶋監督は言う。「前のチームから4番ポジションの子が2人卒業してしまって、その穴を埋めるのはきついなと思っていたんです。しかし、そこへ長谷川比源が来てくれました。もちろん足りないところもありますけど、プラスの方が大きいですね」

サイズがあるからリバウンドを取ってくれる。ディフェンスでもブロックを諦めない。加えてシュートもうまい。「これまでは阿部(千寛、4年、美原)のところで止まってしまうと、そこでリバウンドを取られて終わり、みたいなところがあったんですけど、長谷川が絡めるようになったので、オフェンスのバリエーションが一気に増えました」

本格的なバスケ歴が5年目となった長谷川の目標はまず、大学で世代別の代表に選ばれ、Bリーグで活躍できる選手となることだ。将来的には日の丸を背負う選手をめざす。「一線のディフェンスをもっと磨いて、神大での4年間でディフェンスもオフェンスも穴がない選手になりたいです」

比源という名の由来は映画「ラスト サムライ」の登場人物「飛源」から来ているという。4年間でどこまで飛躍できるか、注目していきたい。

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