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神奈川大の向奏瑠、“神大旋風”で異彩放つ 跳躍力を生かした豪快ダンクとリバウンド

昨年のリーグ戦全敗から躍進中の神奈川大で著しい成長を見せている向(すべて撮影・小沼克年)

昨シーズンの全敗から一転、今季の神奈川大学は「第98回関東大学バスケットボールリーグ戦」で早くも6勝目を挙げた。個性豊かなメンバーが束になって“神大旋風”を巻き起こそうとしているなかで、3年生の向奏瑠(かなる、前橋育英)はひときわ異彩を放っている。

去年の負けを経験した4年生を軸にチーム力で戦う

昨年の関東1部リーグ戦は0勝11敗で最下位。インカレ出場を懸けた一発勝負(インカレチャレンジマッチ)でも、当時2部1位の明治大学にオーバータイムの末に75-84で敗れた。

「今の上級生は去年の負けを経験していますし、今年は1部でも勝てるようなチーム作りをしています。(第4節の)早稲田(大学)戦で勝てたことで、自分たちのやってきたことが正しいと分かり、チーム全体で粘れるようになってきました」

幸嶋謙二監督がチームの現状をそう語るように、神奈川大は現在行われている関東大学リーグ戦で著しい成長を見せている。約2カ月半で26試合を戦う今シーズンは、12試合を終えた時点で6勝6敗。早くも昨年を大きく上回る成績を残し、この先もさらなる上積みを目指す。

今年のチームはキャプテンの横山悠人(4年、実践学園)を筆頭に、下級生の頃から先発起用されてきた工(たくみ)陸都(4年、高岡商)、工藤貴哉(4年、八千代松陰)ら4年生が主体。そこに、オフェンス力に長ける保坂晃毅(2年、飛龍)、山本愛哉(1年、飛龍)などの下級生ガードも台頭してきた。

PFとしては小柄な190cmの向だが、高い身体能力によるリバウンドを監督も高く評価している

そんな期待値の高い神奈川大において、3年生の向奏瑠もまだまだ伸び代を感じる1人である。身長は190cm。主戦場とするパワーフォワード(PF)の選手としては小さい部類に入るが、それを補える身体能力の高さが魅力だ。幸嶋監督も「彼は身体能力が高いですし、素直で真面目な子。リバウンドもすごいです」と向を評価している。

ずば抜けた跳躍力が武器の成長株

本人にも話を聞くと、向は自身の武器についてこう答えた。「オフェンスはドライブが得意で、リバウンドでもチームに貢献できるように頑張っています」。リーグ戦でもその長所と身体能力の高さを随所に発揮しており、第5節の拓殖大学戦では豪快なワンハンドダンクを叩き込み、第9節の明治大学戦では頭一つ以上抜けた跳躍力で10リバウンドをマーク。「あの時はリバウンドで負ける気がしなくて、絶対に取れると思っていました」と、明治大との延長戦では向がほとんどのディフェンスリバウンドをもぎ取って白星を手繰り寄せた。

日頃の反復練習で身につけた自慢のジャンプ力でポイントを量産する向(左の25番)

小学校2年の秋頃からバスケットを始めたという向だが、自身の身体能力の高さ、特に「他の人よりも跳べる」と気づいたのは「中学の終わりから高校の初めくらい」。高校時代もリバウンドが主な役割だったため、日頃の反復練習がさらにジャンプ力をアップさせたのではないかと分析する。「リバウンドの練習で何回も跳び続けていたので、そのおかげでジャンプ力も上がったのかなと(笑)」

ちなみに、彼がバスケを始めるきっかけとなった父・長年さんは、過去に実業団でプレーしていた選手。息子の証言によれば、「今で言う川崎ブレイブサンダースで、GM(ゼネラルマネージャー)の北(卓也)さんとかと一緒にプレーしていた」という。向が持って生まれた身体能力は、父からのプレゼントなのかもしれない。

最終目標は「インカレベスト4」

8月20日の開幕から週3試合の過密スケジュールで戦ってきたリーグ戦は、9月28日の試合で一巡目を終える。向はここまでの戦いぶりについて、「疲労があることはあるんですけど、僕の他にも4番(パワーフォワード)では工さんや三浦(拓、3年、日本学園)など、頼りになる選手がいるのでタイムシェアもできています。僕としても安心してプレーできているので、そういった意味ではうまく戦えているのかなと思っています」と、手応えを感じているようだ。

しかし、現在の勝率はあくまでも五分。ここからさらに激化する戦いで白星を積み上げるには、向個人としてもクリアしなければいけない課題が山積みだ。幸嶋監督からはアウトサイドシュートの向上に加え、入学当時から「能力任せにならないように」とアドバイスを受けていると明かす。

向は高い打点からのシュートやリバウンド、ブロックなどの“縦”の動きには目を見張るものがある。一方で、小刻みなステップを必要とする“横”の動きに関しては相手に振り切られる場面がしばしばあり、「試合では小柄な選手をマークすることもあるので、そういった選手を1人で抑えきれるようになりたいです。リーグ戦を通して身につけられればなと思います」とさらなる飛躍を誓う。

一つ上のポジション、SFに向けて「まだまだ勉強中です」とさらなる高みを目指す

近い将来、向は「バスケットの幅も広がりますし、マッチアップする相手によってプレースタイルを変えられるようになりたい」と、一つ上のポジションにあたるスモールフォワード(SF)でのプレーも視野に入れている。その思いは「将来、上のカテゴリーでプレーするのであれば本当は3番(スモールフォワード)に上げたいんです」と、幸嶋監督にも重なる部分がある。けれど、指揮官は彼の成長をもう少し長い目で見守るようだ。「ちょっとまだスキルが足りないですし、外のシュートはこれからといった具合。まだまだ勉強中ですね」

神奈川大が今シーズンの最終目標に掲げるのは、「インカレベスト4」。最後に笑えるよう、向奏瑠は今日も体育館で汗を流す。

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