筑波大学・岩下准平 2度目の大けがから復帰、小川敦也が抜けても「自分の持ち味を」
高校時代にキャプテンとしてチームをウインターカップ優勝に導いた後、筑波大学ではけがに苦しみ続けてきた岩下准平(3年、福岡大大濠)がコートに帰ってきた。3月26日、筑波大の学生たちが中心となって企画・運営を行うホームゲーム「TSUKUBA LIVE!」で約11カ月ぶりの実戦復帰。まだプレータイムは限られていたが、登場時や得点時には会場を沸かせた。
復帰戦に「諦めないで良かった」
昨年12月の第75回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)で準優勝に輝いた強豪・東海大学シーガルスとの一戦。岩下が第2クオーターの最初にユニホーム姿でコートに入ると、復帰戦だったことを知っていたのだろう。会場内は大きな拍手に包まれた。
「久々で楽しかったっすね。3分、3分と計6分のプレータイムだったんですけど、1年ぐらいの時を経て戻ってこられたんで、諦めないで良かったなって思いました」
昨年4月23日に開催された日本体育大学との「日筑定期戦」で、高校時代にも経験した左ひざの前十時靱帯(じんたい)断裂に加えて、内側側副靱帯の断裂と半月板の損傷も判明する大けがをした。復帰戦では「見られたくなかった」と両足ともタイツを履いて登場。シュートを決めると、両腕を横に広げて喜びを表現し、歓声を全身で浴びた。試合は第1Qこそ東海大にリードを許したが、第2Qで筑波大が逆転。そのまま62-53で勝ちきった。
バスケを辞めたいと思ったときに支えてくれた人たち
前述の通り、岩下は高校2年の夏にも左ひざ前十時靱帯断裂の大けがを負い、復帰に約10カ月かかった。それでも高校最後のインターハイに間に合わせ、チームは3位入賞。冬のウインターカップはインターハイで敗れた中部大第一(愛知)を3回戦で退け、決勝では帝京長岡(新潟)に競り勝ち、28年ぶり3回目の優勝にキャプテンとして貢献。大会のベスト5にも選ばれた。
「文武両道でもありますし、自分は留学生が(相手に)いるチームとやり合いたい」と選んだ筑波大でも、順調にバスケキャリアを築いていた矢先、再びの大けが。当時の心境をこう振り返る。「なんで2回目、やったんだろう……という気持ちが強くて。素直に受け入れられませんでした」
一時はバスケを辞めたいとも考えた。このときに支えてくれたのは筑波大のチームメートや福岡大大濠時代の同期、両親、親族といったバスケを通じて出会った身近な人たちだったという。落ち込む岩下に連絡をくれたり、実際に会いに来てくれたりした。
「同情はできないし、簡単に『頑張れ』とも言えないけど、頑張ってほしいということを言われて、自分もまだ頑張りたいなって思えました。仲間に感謝したいなと思います」
リハビリ開始直後は、昨年の「インカレに出たい」という気持ちが強く、下半身をメインに、3度目の大けがだけはしないよう筋肉で補うようなトレーニングをしていた。当初は7、8カ月で復帰できる可能性を見込んでいたが、足のエラー動作などによってはまだ痛むこともあり、無理することはできず、インカレのベンチ入りは見送られた。「去年の4年生とできなくなる。それを受け入れることが一番つらかったです」と岩下。けがから数カ月経つと、当時を思い出し「その前のプレーで別のことをしていたら防げたのではないか」と後悔することもあった。
自分は自分、あっちゃんはあっちゃん
練習はすでにフルメニューをこなせている状態だと明かす。約1年間のブランクを感じることは? と尋ねると「練習中からコミュニケーションを取り続けられて、他の選手ともだいぶ合ってきているので、大丈夫だと思います」と答えてくれた。今後は練習試合や4、5月の第73回関東大学バスケットボール選手権大会(スプリングトーナメント)で徐々にプレータイムを伸ばし、秋季リーグ戦あたりから100%の状態で臨めるコンディション作りをめざす。
岩下が復帰するまでの間に、チームにも変化があった。同じポイントガードで昨年のFISUワールドユニバーシティゲームズにも選ばれるなど、世代を代表する選手の一人である小川敦也が、B1の宇都宮ブレックスと特別指定選手としてのプロ契約を結び、チームを離れた。岩下はキッパリと言う。「自分は自分、あっちゃん(小川)はあっちゃんなんで。自分ができることとか、自分の持ち味をチームに浸透させて、多くの勝利を挙げられるように頑張っていきたい」
東海大との一戦では、医学部在籍の黄雄志(3年、聖光学院)がスタートから出場。昨年のウインターカップで準決勝まで進んだ土浦日大(茨城)のキャプテン・北條勇吹も加入し、岩下が完全復帰を果たせば、小川がいた頃とはまた違ったオフェンスが見られるだろう。
「今はまだ雄志の方が全然いいです。チーム内で切磋琢磨(せっさたくま)して頑張っていけたら。自分の持ち味は、自分がやるべきところと周りを生かすところの判断。まずはけがなく1年を終えて、チームの目標であるインカレ優勝に向け、トーナメントやリーグ戦で経験を積んで強くなりたいと思います」