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特集:第75回全日本大学バスケ選手権

筑波大学・平田航大 受験生の頃、日本一のチームに心打たれ入部「自分の代で優勝を」

チーム初得点を挙げ笑顔を浮かべる筑波大の平田(すべて撮影・井上翔太)

第75回全日本大学バスケットボール選手権大会 男子2回戦

12月8日@大田区総合体育館(東京)
筑波大学75-73 日本体育大学

オーバータイムに入り、残りの試合時間はわずか30秒ほど。75-71で4点をリードしていた筑波大学は日本体育大学に攻め入られ、小澤飛悠(1年、中部大一)に3ポイントシュートを狙われた。リングで弾み、決まらなかったもののファウルを取られた。

小澤に3投与えられたフリースローは、1投、2投と成功。3投目はあえて外してオフェンスリバウンドを狙いにいったように見えた。ただ確保しきれずにラインを割り、日体大ボールに。再び小澤が逆転シュートを狙ったところ、そのリバウンドをムトンボ・ジャンピエール(3年、東山)が捕りきれなかった。ゴール下に飛び込んできた筑波大の小川敦也(3年、洛南)がはたいたためだ。ボールは筑波大ベンチの前にいた福田健人(2年、中部大一)がキャッチ。ここで試合終了となり、コート上の選手たちも控えの選手たちも、優勝したかのような喜びを見せた。

「常にハラハラしていた」オーバータイム

「この試合で引退になるかもしれない、と思いながら見ていたオーバータイムでした。『あのメンバーだったらやってくれる』と本当にチームメートを信じていました。僕たちが決めても、相手がすごく食らいついてきて、『勝てるかな』と思ったのに、なかなか簡単にはそうさせてもらえず、ゴール下でもファイトされました。常にハラハラしてました」

そう語るのは、大事な一戦でスタートから試合に出場し、持ち前のディフェンスでチームに貢献した平田航大(4年、寝屋川)だ。チームの主力は推薦で入部する選手が多い中、平田は一般入試から入部。平田が「スター選手3人」と評する同学年の推薦組、主将の三谷桂司朗(4年、広島皆実)、木林優(4年、福岡大大濠)、横地聖真(4年、福岡大大濠)を陰から支えてきた。

平田は一般入試からバスケ部の門をたたいた

大阪府立寝屋川高校のバスケ部は、平田によれば「無名」。全国大会には縁がなく、個人的にも大阪府選抜などに選ばれた実績はない。

平田が筑波をめざしたのは、高校3年の受験生だったとき。チームがインカレで優勝したことがきっかけだ。当時の主力は牧隼利(現・琉球ゴールデンキングス)や増田啓介(現・川崎ブレイブサンダース)ら。世代トップ級の選手たちが集まるだけでなく、一般入試から入って活躍している選手もいたことが、平田の心に火をつけた。

「自分の実力がどれだけ通用するのか、挑戦してみたいっていう気持ちが強くて。それまで僕は強豪校にいたことがなくて、全国の舞台で優勝を経験したことがなかったので、それをつかめるのが筑波だと。一般の先輩方もいて、そういった姿を見て自分も挑戦しようと決めました」

「唯一、通用する」と磨いたディフェンス

いざ入部すると、圧倒されることの方が多かった。Bチームからスタートしたが、「そもそもBチームの先輩方がうまい人たちばっかりで……。一般とはいえ、もともと高校時代にすごいうまい人たちが入学してくるので、そこでまず『こんなにすごいのか……』と思ってしまいました」。2年生になるときにAチームに上がったが、そこにいたのは半澤凌太(現・京都ハンナリーズ)や二上耀(現・千葉ジェッツふなばし)といった錚々(そうそう)たる面々。「バスケを辞めたくなるぐらいでした(笑)。自分より大きくてフィジカルが強いのに、技術もある。どうやって勝てばいいのか分からなかったです」と苦笑する。

最終学年となった今でも「そもそも試合に出られると思っていなかった。何が起こるか分からないですね」と言う。確かに、ポジションを争う岩下准平(2年、福岡大大濠)や黄雄志(2年、聖光学院)がけがで離脱中のため、出番が巡ってきている面はある。ただ、Aチームで「唯一、通用する」と感じたディフェンスを磨き、普段はU22日本代表メンバーの小川と練習を積んでいることが、本人に大きな自信を与えている。

磨いてきたディフェンスでチームに貢献する

推薦組のサポートや後輩との橋渡し役も

推薦組3人のサポートや、後輩たちとの橋渡し役も平田の大事な役割だ。「下級生も『あの3人には言えない』っていう部分があると思うんです。たぶん僕は立ち位置的に言いやすいので、後輩の意見を聞いていますね」。また秋のリーグ戦序盤は、大黒柱の三谷がけがのため不在。最上級生としてのリーダーシップも求められた。

オーバータイムにもつれ込み、最後まで勝敗の行方が分からなかった日体大との大熱戦。前半は終始、押され気味だった筑波大に流れを持ってきたのは、三谷だった。第4クオーター残り3分あまりで投入され「ベンチにいるときからずっと『最後に自分の出番が来る』と思っていたので、そこに向けて集中していました」。時には勢い余って審判と接触してしまいながら、躍動感あるプレーで得点を量産。辛くも逃げ切れるだけのリードを手にした。

試合後「最後まで筑波らしい姿を見せたい」と三谷が言えば、平田は「日本一になりたいと思って入学しているので、絶対に最後、自分の代で優勝したい」。大学バスケ生活に、まだまだ終止符を打つつもりはない。

大熱戦の最終盤でチームを勢いづかせた主将の三谷

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