バスケ

特集:第1回バスケ新人インカレ

筑波大学・副島成翔 サッカーで培ったメンタル生かす「相手をイライラさせたら勝ち」

試合終盤、貴重なスリーポイントシュートを沈めた筑波大の副島(すべて撮影・井上翔太)

第1回全日本大学バスケットボール新人戦 男子決勝

7月16日@国立代々木競技場第二体育館
筑波大学 73-66 専修大学

7月16日に決勝が行われた「第1回全日本大学バスケットボール新人戦」(新人インカレ)の男子は、筑波大学(関東2位)が専修大学(関東7位)に73-66で勝ち、初代王者に輝いた。筑波大は最終第4クオーター(Q)を迎えるまで、終始劣勢の展開を強いられたが、最終盤に副島成翔(1年、福岡大大濠)が活躍し、逆転に成功した。

【写真】男子は筑波大学が初代王者に! バスケの新人インカレ、準決勝と決勝を特集

「リバウンドを奪えたことが信頼を生んだ」

筑波大にとっては、準決勝で計45点を稼ぎ、チーム全得点の半数以上を挙げた専修大の大型センター、ジョベ・モハメド(1年、高知中央)をいかに抑えるかが、最大のミッションとなった。吉田健司監督は言う。「ジョベにボールが入ったら、まずはダブルチームで行く。外にいったとき、スリーポイントは打たせていい」。副島もセンターの岡川久輝(2年、北陸)とともに、同じことを打ち合わせていた。

加えて、シードだったために決勝が3試合目の筑波大に対し、グループリーグから勝ち上がってきた専修大は7試合目。相手に疲れがたまっていることも、筑波大は見逃していなかった。「たぶん相手は、足にきていた。相手がディフェンスにこないこともあったので、自分たちがそういう勝てるところで引き離していこうと」と副島。ただジョベを中心とした専修大の選手たちにも意地があり、第3Qを終えた時点では専修大が2点をリードしていた。

専修大のジョベを抑えることが筑波大にとって大きなテーマだった

副島が筑波大の優勝を決定づける輝きを放ったのが、第4Qだった。56-55と一進一退の攻防が続く中、連続でスリーポイントシュートを成功させてリードを広げた。今大会で最優秀選手に選ばれた福田健人(2年、中部大第一)とのコンビもさえた。副島は「自分がリバウンドを奪えたことが信頼を生んだと思います。チームメートが自分を信じてくれて、打てる場面で打てて良かった」。スリーポイントを放つときは、身長204cmを誇るジョベの腕が伸びてくる。「怖いという気持ちはあるんですけど、それ以上に勝ちたかった。びびっているだけじゃ何も始まらないんで」

試合が終わると、相手をリスペクト

高校時代、チームは3年連続でウインターカップに出場。2年のときには頂点に立つなど、同じ福岡県内の強豪・福岡第一としのぎを削りながら、華々しい成績を残してきた。ただ意外にも、競技歴は浅い。「もともとクラブチームでサッカーをやってたんですけど、中学3年の春からバスケと両方をやるようになりました」。当時の身長は180cm台後半。午後4時から6時までバスケをした後、午後7時から9時まではサッカーをする生活を送り、「自分ではできると思ってたんですけど、体がついていかなくて、『どっちにする?』ってなったらバスケになりました」。中学の友人がバスケ好きで、感化された面もあった。

サッカーでの経験が、バスケにも生きていると感じている。「サッカー選手は気持ちが強いんです。確か槙野智章選手が『相手をイライラさせたら勝ち』と言ってて、メンタル的に成長できたのは、サッカーのおかげです」

サッカーで培ったメンタルをバスケにも生かしている

試合中の副島を見ていると、たまに「怒ってるのでは?」と感じることがある。ただ本人によると、そんなことはなく「相手をちょっと威嚇というか、『食ってやろう』と思ってるんです。留学生に対してもどれだけイライラさせて、メンタルを落とせるかが大事だと思っていて。相手が『うっ』っとなったときに、こっちがどれだけ攻められるか。これはNBAを見て、学んでいます」。

一方で試合が終わると「敵味方に関係なく、人間としてリスペクトを持って『ありがとう』という気持ちで接しています」。留学生側にとっても、これだけ試合中にバチバチと火花を散らし、本気でぶつかってくる日本選手は珍しいのかもしれない。普段は明るく勝負どころで力を発揮する「お祭り男」。6月の関東大学新人戦で、私が黄雄志(2年、聖光学院)を取材するために待っていると、初対面の副島が「取材、自分ですか?」と声をかけてきた。

筑波大学・黄雄志 医学部で学びながらチャンスつかんだPG、新人戦で「MIP賞」
ひょうきんな性格も副島の魅力の一つ

証明した「留学生がいなくても勝てる」

大学の進学先に筑波大を選んだのは「ピンときた」から。岩下准平(2年)や大澤祥貴(2年)ら高校時代から一緒にプレーしている仲間も多く、筑波には留学生選手がいないことも後押しとなった。「留学生頼みになると、リバウンドに対する意識が下がってしまう。リバウンドはもともと自分の持ち味でもあるので、そこはなくしたくなかった」

筑波大は今回の新人インカレで、得点王やスリーポイント王、リバウンド王、アシスト王といった個人賞とは縁がなかった。「自分たちはチームで戦っている。平等に全員で戦えた末の優勝です」と副島。そして初代王者の栄光は「留学生がいなくても勝てる」と信じてきた思いを証明する舞台にもなった。

個人賞とは縁がなかった筑波大だが、チーム全員で頂点をつかみ取った

in Additionあわせて読みたい