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特集:第1回バスケ新人インカレ

朝比奈あずさが「いない前提」のチーム作り 筑波大学・古谷早紀の成長を秋へつなげる

新人インカレ準優勝の筑波大を主将として引っ張った古谷(すべて撮影・井上翔太)

第1回全日本大学バスケットボール新人戦 女子決勝

7月16日@国立代々木競技場第二体育館
大阪体育大学 64-63 筑波大学

7月16日に幕を閉じた「第1回全日本大学バスケットボール新人戦」(新人インカレ)の女子で、筑波大学は大阪体育大学に惜敗し、2位だった。大黒柱・朝比奈あずさ(2年、桜花学園)が日本代表に選ばれ、一緒に練習する期間が大きく制限された状況で、1、2年生によるチーム作りを進めてきた。中でも特に、主将を務めた古谷早紀(2年、東京成徳大)の成長が見られた大会となった。

第4Q、一時は10点リードしたが……

決勝はどちらが勝ってもおかしくない大激戦だった。

第3クオーター(Q)終了時は50-42で筑波大がリード。最終第4Q開始後も安定してリードを保ち、一時は58-48と10点差をつけた。だが、ここから大阪体育大が猛烈な追い上げを見せた。三次真歩(1年、広島皆実)のシュートや主将・升田木花(2年、八幡南)のスリーポイントなどで一気に点差を詰め、筑波大は60-61で逆転を許してしまった。古谷は当時の状況を「安心していたわけではないけど、少し気が緩んでしまって……。そこはキャプテンとして自分がリードしていかないといけなかったんですけど、甘かった」と悔やむ。

残りの試合時間が1分を切ったところで、筑波大も意地を見せた。上野心音(1年、聖和学園)のスリーポイントが決まり63-61。ベンチからは大歓声が上がった。だが、それもつかの間。試合終了間際、升田にスリーポイントを許し、熱戦に終止符が打たれた。バスケットボールの難しさや怖さを思い知る試合展開に、池田英治監督は「1点差ですから、判断が結果的に間違っていたということです。『こうすれば、ああすれば』と思うことはあります。それを次に生かすというと、言葉は軽い。(敗戦を)重く受け止めたいと思います」と悔しさをあらわにした。

随所に鋭いドライブで切り込み、得点のチャンスを多く生み出した

下級生がいい顔でプレーできるように声がけ

1、2年生の選手たちで戦う今回の新人インカレと、出場権を争う関東大学新人戦は、筑波大にとって、日本代表の朝比奈がいない前提でのチーム作りを求められた。5月から代表の強化合宿や強化試合、6連覇をめざした「FIBA女子アジアカップ2023」といった代表活動が続いたためだ。

関遥花(2年、安城学園)や八十川ゆずゆ(2年、小林)といった中心となる2年生選手にもけがやコンディション不良が相次ぎ、「小中高でも経験したことがない」という古谷が主将を任された。「もともと朝比奈という絶対的な存在がいるので、チームをまとめることも任せていたんですけど、代表に選ばれて抜けることが多いということで。消去法的に『自分がやるしかない』となって、自分なりのキャプテンというものを考えました」

自分なりの主将としての姿を模索し続けた

唯一、試合開始からコートに立つ2年生として、1年生の選手たちがプレーしやすい環境を作ることに心を砕いた。「自分はプレーで引っ張るというよりも、下級生がいい顔でプレーできるように声がけするというのが自分の仕事だと思っています」。池田監督は古谷について「キャプテンタイプではなく、めちゃくちゃシャイです。勤勉なんですけど、あんまり我が強くない」。ただ朝比奈の代表活動が終わり、新人インカレの約1週間前になってチームに戻ってくるとなったときも、選手たちからは「古谷がキャプテンですよね」という声が、池田監督のもとに寄せられた。決勝を終えた後は、泣き崩れる上野を慰める姿も見られ「チームメートからも認めてもらえた存在」と池田監督は古谷の成長をひそかに喜んでいる。「3、4年生と合流したときに、この色を消さないようにしてほしいですね」

スリーポイントを決めた上野(右のユニホーム姿)に駆け寄る古谷

筑波での取り組みが成果として表れたスリーポイント

朝比奈も大きな存在感を示した新人インカレの一戦があった。準決勝の山梨学院大学戦。激しい点の取り合いとなる中、81-81で迎えた第4Q終盤にスリーポイントを決め、ここから一気に引き離し、91-86で決勝進出を決めた。朝比奈本人には代表活動でチームを離れたことについて「迷惑をかけた」という思いがあったと振り返る。「いろんな形で自分が練習に参加できていないときが多くて。プレーではしっかり自分が引っ張ろうという気持ちで臨んでいたので、あの場面で決め切れたのはすごく良かったです」

代表活動は一人の選手として何物にも代えがたい経験となった。国内トップ級の選手たちや海外選手たちの高さ、フィジカル面の強さを思い知った。その中で「チーム全体としてどのように攻めていくか」を学び、筑波大に戻った後も、たとえば留学生選手の相手センターに対するときに生かしている。「今までよりは結構自信を持って『こういうことをやればいいんだ』と思えるようになってきています。ただ『40分間徹底しきる』ということができていなくて、そこはまだレベルアップできるところだと思っています」

高校時代にウインターカップで3連覇に導いた朝比奈も、すっかり筑波のバスケになじんでいる。「うちは基本的に『中のポジションの人は中だけをやりましょう』という練習はしません。ビッグであっても他の選手と同じようなスキル練習をしています。またスリーポイントを打つことは、昨年途中からのテーマです。朝比奈もうちがめざしている形を体現してくれている」と池田監督。準決勝終盤での活躍は、その一部分が見られた場面と言っていいだろう。

代表を経験し、さらに強さが増した朝比奈

新人インカレが終わり、チームは再び4学年そろった状態で秋シーズンへと向かっていく。「先輩たちに負けない気持ちを持って、チーム力を上げていきたい」と言う古谷がリーダーシップを継続し、国際舞台を経験した朝比奈がチームへ還元したとき、筑波はさらに強くなる。

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