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東海大学・西田陽成 「兄にも負けない3P力」のシューター、今後はリーダーシップも

プロになった2人の兄を持つ東海大の西田陽成(すべて撮影・小沼克年)

シーズン最初のタイトル獲得を狙った大会で、早くも四冠の夢が崩れた。東海大学は5月5日に幕を閉じた第73回関東大学バスケットボール選手権(スプリングトーナメント)で早々に敗退となり、結果はベスト16。ラストイヤーを迎えた西田陽成(4年、福岡大大濠)は悔しさをかみ締め、再起を誓った。

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ルーキーたちが活躍する裏で、主力にアクシデント

山梨学院大学との一戦は第1クオーター(Q)で11-20。このビハインドを最後までひっくり返すことができず、タイムアップを迎えた。今大会は佐藤友(1年、東山)、赤間賢人(1年、藤枝明誠)、さらには留学生ビッグマンのムスタファ・ンバアイ(1年、福岡第一)といった期待のルーキーたちが早速コートに立った。一方、本来主力を担うはずのハーパージャン ローレンスジュニア(4年、福岡第一)、小林巧(4年、神戸村野工業)、中川知定真(2年、東海大諏訪)らがベンチ向かいの応援席で声援を送っていた。

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東海大はケガ人やコンディション不良の選手が相次ぎ、ベストメンバーで臨むことができなかった。それでも、信条とするディフェンス・リバウンド・ルーズボールを武器に戦えば、勝てる自信はあった。だが、最後まで歯車がかみ合わず、オフェンスではターンオーバーが15。山梨学院大には合計12本の3ポイントを浴びて84失点。先発として約30分間コートに立ち続けた西田は、視線を下に向けながら試合を振り返った。

「山梨学院さんは3ポイントが強みだということはチームで話していました。多少決められても自分たちが我慢してプレーし続ければ大丈夫だと思っていたんですけど、我慢しきれなかったことが敗因だと思います」

山梨学院大学の得点力に「我慢しきれなかった」

1年前はケガで立てなかったスプリングトーナメントの舞台

記者向けに配布された資料には、『兄にも負けない3Pシュート力を持つシューター』という一文で西田が紹介されている。2人の兄はともに東海大のOB。長男の優大はシーホース三河のエースとしてBリーグでプレーしており、2023年のFIBAワールドカップのメンバーにも選ばれた。自身と一つ違いの公陽とは昨年まで一緒にプレーし、彼も優大の背中を追うように特別指定選手として三河に加入した。

山梨学院大との試合で、西田はチームトップの16得点をマークした。しかし、3ポイントは13本中4本の成功にとどまった。「前半はなかなか決めることができなかったんですけど、後半はシュートタッチが良くなった部分はありました」。第4Q終盤、追い込まれた東海大は西田にボールを集めて最後の反撃を試みたが、この場面では3ポイントを決め切ることができず、西田のターンオーバーで攻撃を終えたシーンもあった。

シューターとして決めきれなかったことに反省の言葉を口にした

「託されたにもかかわらず、あそこで決めきれないのは自分の実力不足です。これからまた練習します」。そう口にしたものの、西田がこの春からコートに立ってフル稼働できたことは、本人だけでなくチームにとっても大きなプラスだった。昨年は2月に肩を脱臼。手術と半年間のリハビリを余儀なくされ、スプリングトーナメントは経験していない。大学生活最後の1年となる西田は、「自分の良さをもっと出していきたいですし、出していかないといけないと思ってます」と意欲を燃やす。ケガでチームに迷惑をかけることなく、最後の1試合、ラスト1秒まで悔いなく駆け抜けるつもりだ。

陸川章HC「これからもっと熱量を持って」

スプリングトーナメント、新人インカレ、秋のリーグ戦、そしてインカレ。今シーズンの東海大はこの四つのタイトル獲得を目標に掲げた。いきなり未達成となってしまったが、陸川章ヘッドコーチは、選手たちに下を向いてほしくないと話す。「負けてしまったことは悔しい。でもこの春、自分たちが(大会に向けて)取り組んできたことに対して不安を持ってしまったら、このまま崩れていくだけ。自分たちがやってきたことを信じて、これからもっと熱量を持ってやっていこう」。試合後のミーティングでそう声をかけられた西田も、「ここで気持ちを落とさず、切り替えられるかが大事だと思ってます」と前を向く。

四冠を逃したが「ここで切り替えられるかが大事」と話す

日本人選手のみで構成される福岡大大濠高校出身の西田にとって、留学生とプレーするのは初めてのことだ。東海大の新たな武器になるであろう210cmのムスタファとの連携も「まだまだ」といった具合で、「彼との連携を高めていけるかがこれからの練習でのポイントになってくる」と話す。とはいえ、高さを生かしたバスケットが最優先になるわけではない。あくまでベースは「ディフェンス・リバウンド・ルーズボール」。チームの伝統を全員で徹底し、東海大は次の大会に照準を合わせる。

「自分がもっとリーダーシップを」

雪辱に向け、西田も選手としてもう一段階上を目指そうとしている。口にしたのは「リーダーシップ」という言葉だ。同じ4年生にはキャプテンに就任した大久保颯大(東海大浦安)やハーパーがリーダーシップに優れた選手として名前が挙がるが、スプリングトーナメント後の西田は「主力の4年生がケガでいない中、自分がもっとリーダーシップを持ってプレーすべきでした」と悔やんだ。

最上級生として今後はよりリーダーシップを意識する

「正直言うと、今までは先輩たちがいましたし、ジュニアもいるので『自分の役割はシューター』という感じで頼りきりになっている部分がありました。でも、今年は自分もリーダーシップを持ってプレーしなければいけないと思っています」

3兄弟の中で一番おとなしいタイプ。少なくとも筆者はそう認識している。これから殻を破ろうとしている西田陽成が一層楽しみであり、本人の言葉を信じるだけだ。

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