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東海大・轟琉維、ルーキーが憧れのチームでぶつかった壁「波のないポイントガードに」

東海大に加わった注目ルーキーの最初の春を振り返る(すべて撮影・井上翔太)

今年3月、取材で東海大学の練習に訪れた際、陸川章監督が「今年のルーキーはすごく理解力があるんです」と言って目を細めた。「誰が」というところまでは話が進まなかったが、その日の練習を見た限り、轟琉維(とどろき・るい、1年、福岡第一)がその一人に入っているだろうことがなんとなく理解できた。

春先のオープン戦から出場機会は少なくなかった。スピーディーなドリブル突破、センスあふれるアシスト、アグレッシブなディフェンス。控えのポイントガードとして、先輩ガードたちとは異なる色をしっかり表現していた。

しかし、公式戦のデビュー戦となった第72回関東大学バスケットボール選手権大会は轟にとってほろ苦いものとなったようだ。

高校時代と異なる攻撃スタイルで課題が浮き彫り

「なかなかうまく攻められず、シュートも入らず、本当に課題が残った大会でした」

最終戦となった関東学院大学戦のあと、轟は言った。

同大会の序盤、轟はオープン戦と同様に控えとして試合に出場し、上級生たちが作った流れの中でプレーすることができた。ところが、準々決勝の専修大学戦で経験豊富な先発ポイントガードの黒川虎徹(4年、東海大諏訪)が負傷。順位決定戦の大東文化大学戦と関東学院大学戦で急きょスタメンに起用され、1年生ながら中心選手に代わってチームのオフェンスをコントロールするという難しい役割を任された。

先発ポイントガードの黒川の負傷により、順位決定戦で代役の司令塔に抜擢された

「虎徹さんはすごくリーダーシップがあるし、ゲームコントロールもしっかりしている。試合前は自分にできるか不安だったし、実際、まったくダメでした」

轟は大東文化大戦について苦笑いしながら振り返る。

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数カ月前までプレーしていた福岡第一は、選手の役割や選択肢をある程度限定し、その枠内でプレーの精度を高めていくチームだった。轟自身も年間を通してほぼ同じメンバーでコートに立ち、オフェンスではセットプレーをほぼ使わず、ディフェンスからの速攻で得点を重ねた。

しかし東海大は違う。様々なメンバーが様々な組み合わせで起用され、ポイントガードが選択する多数のセットプレーを駆使して得点を積み上げる。高校時代と大きく異なるスタイルに、入学したばかりのルーキーが苦戦しないわけがない。轟はこの大会で得た課題のひとつについて、こう話す。

「ゲームの流れに応じて、使うセットプレーは変わるんですけど、自分はまだまだセットのコール(どのプレーを使うかを周囲に伝えること)が遅くてチームに迷惑をかけているところがあるので、もっとそこを見極められるようにやっていかないといけないなって思っています」

苦境のなかで見せた轟らしい輝き

インターハイ優勝、U18トップリーグ全勝優勝、ウインターカップ準優勝、U18アジア選手権準優勝。高校時代にいくつもの輝かしい実績を重ね、華やかなプレーで見る者を魅了した轟は、早くから東海大への進学を希望していたという。

「東海大はディフェンスからのブレイクのところとかが福岡第一と似ていると思ったし、泥臭いプレーとかルーズボールへの姿勢も素晴らしい。あとは陸さん(陸川監督)のもとでバスケをやってみたいと思っていて、高2くらいから東海大に行きたいと思っていました」

ウインターカップの決勝はチーム最多の21得点を挙げたが、11本中3本成功に終わった3ポイントシュートに大きな悔いが残った。引退後は自ら体育館を借りてシュートを打ち込み、関西在住のスキル専門コーチに3ポイントシュートの技術指導を2週間かけて受けた。しかし、今大会は残念ながらその成果が現れず、5回戦以降の3ポイントシュート成功率は2割台にとどまった。

3ポイントシュートの成功率に課題が残った

「かなり準備してきたので悔しいです」と言った轟は、原因を次のように分析している。

「いざ戦ってみると、ディフェンスのプレッシャーにやられてしまったところがありました。大学生は高校生よりも脚力があるので、ちょっとマークをずらしてもすぐにチェックにくる。もっとズレを作って、ノーマークで打てるような工夫が必要だと思いました」

ここまで、轟がこの大会で感じた「課題」についてフォーカスしてきたが、もちろん手応えを深めた点もある。

高校時代からみっちり磨いてきたディフェンスについては「少しは通用できたかな」とコメント。同じように高校時代から繰り返してきた速攻のプレーでは、ゴール前で留学生センターが待ち構えていても、複数の上級生プレーヤーが追いかけていても一切ひるむ様子を見せず、ステップやタイミングで彼らを簡単にいなしてシュートを決めた。

持ち味の速攻でのプレーでは存在感を見せつけた

終始リードする展開だった関東学院大戦では、ノールックのパスなど華やかなオフェンスも披露した。何より、チームメートのサポートを受けながらではあるものの、突然の大役を大きなミスなくこなしきったことに、169cmの小さな体に宿る経験と胆力を感じた。

見据える課題克服と楽しみな対戦

次なる目標は、6月5日より開幕する新人戦の本戦。轟は「今大会は自分がリーダーシップをとらなかったことでゲームが壊れた部分があったので、虎徹さんのリーダーシップを見習ってやっていきたい」と話し、高校時代から仲がいいという中央大学のポイントガード・高山鈴琉(1年、東海大諏訪)との対戦が実現することを楽しみにしている。

加えて、6月末に開催されるU19ワールドカップの日本代表候補に入っている轟は、時期によってはこの強化合宿にも参加することになる。「授業を欠席することになるんで、去年この大会を経験したJJ(ハーパー・ジャン・ローレンス・ジュニア、3年、福岡第一)に話を聞いてうまくやっていけたらいいなと思います」と話した。

まず目指すのは、「波のないポイントガード」

将来的な目標は、日本代表に入ること。「高校では『自分、自分』であまり周りを生かしてなかったんですけど、大学では周りも生かしつつ、自分で点を取りに行くことや、ゲームコントロールをもっと意識して、波のないポイントガードになっていきたいです」と今後の抱負を語った。

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