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主将の永井は「U18日清食品トップリーグ」でのチームの成長を実感している

ウインターカップ出場の前橋育英 「U18日清食品トップリーグ」でチーム力を底上げ

2022.11.22

前橋育英は、今年度新設された「U18日清食品トップリーグ」を経験したことで、著しく成長したと言える。6月の全国高校総体(インターハイ)群馬県予選では、決勝で新島学園に敗れて全国を逃した。9月のトップリーグが、全国レベルを肌で感じる初の舞台。まだ勝ち星を挙げられていないものの、ウインターカップ予選では新島学園にリベンジを果たし、本大会出場を勝ち取った。

主将が大けがで離脱した中、トップリーグへ

トップリーグに出場する全8チームは、前年度のインターハイとウインターカップの成績をポイント化して選出される。しかし現在のチームに、前年度からレギュラーをつかんでいた選手はいない。加賀谷寿ヘッドコーチは「最初は、『ここに入っていいのか?』と正直、思いました。ただ彼らも先輩たちを見てきているので、ある程度は戦えるのではとも思っていました」と振り返る。

チームはこのとき、大きな柱を失っていた。主将を務めるポイントガードの永井学翔(3年)が、インターハイ予選の直後に左ひざの半月板を痛めて手術。3カ月間の離脱を余儀なくされた。トップリーグでは、それまで永井のバックアップ要員だった増田聖大(2年)を中心に回した。増田はポジティブだった。「自分がやらなきゃと、自信を持ってスタートしました」

永井の離脱中から先発を任されるようになった増田

ただ、簡単には勝たせてくれなかった。「高さでもフィジカルでも上回られて、全国レベルにも慣れていなかった。ゾーンプレスでも、厳しい部分がありました」と増田。初戦の中部第一(愛知)戦は62-105、次戦の東海大諏訪(長野)戦は65-116で圧倒された。

リーグ戦でしか経験できないことを選手に伝授

加賀谷コーチは、リーグ戦でしか味わうことができない経験を選手に積ませようと、心を砕いた。なるべくゾーンディフェンスを敷かず、基本はマンツーマンに。マンツーマンでのディフェンスは、日本バスケットボール協会が15歳以下のカテゴリーで「個人のスキルアップを図る」などの理由から推進している。目先の勝利以上に、選手の成長を促す策だ。「なんでゾーンをやらないんだ、と思う子もいたかもしれない。トーナメントなどの一発勝負では、『やられてはいけない』と最善の策を選びます。一方でリーグ戦は、『負けたくないけど、負けてもいい意味で次がある』というのが意義だと思っています」と意図を明かした。

現役選手時代は、アイシン精機シーホース(現・シーホース三河)に所属していた加賀谷コーチ。前橋育英の選手たちにも、自身の現役時代に近い経験をしてもらおうと心がけた。「上位のチームは1位、2位を狙うところですけど、うちは正直厳しい。リーグ戦では選手が将来、大学に進んだ後、Bリーグに入るかもしれない。そのときに覚えておいた方がいいことを伝えています」

試合を見つめる加賀谷コーチ(右)

選手たちも、少しずつリーグ戦の環境に慣れてきた。「最初は、他の選手の大きさや速さに戸惑っていました。けど(仙台大)明成戦は10点差に収めて、選手が自信を付けた試合でした」と加賀谷コーチ。新潟市内で行われた仙台大明成戦、新潟県長岡市出身の千原碧真(3年)が積極的なオフェンスを仕掛け、矢野匡人(3年)もチーム最多の20得点。実績のある相手に対して、物怖じする姿は、もう見られなくなった。

積極的なオフェンスが魅力の千原

加賀谷コーチが「成長している」と評価する矢野

トップリーグの経験が生きた一戦

一方で「みんなが変わろうとしていることが感じ取れて、うれしいんですけど、ちょっと焦りはありました」と振り返る選手がいた。主将の永井だ。開幕から5戦を終えた時点で、ベンチ入りはしているものの、試合には出ていない。10月下旬、チームの全体練習に合流したばかりで、ウインターカップの群馬県予選では、試合の途中から出場し、スタートの増田をフォローする姿が見られた。

トップリーグで経験を積んだことが、ウインターカップ群馬県予選にも生きているところがある――。加賀谷コーチがそう実感する一戦がある。準々決勝の高崎戦、24-14でリードしていた第1クオーター(Q)終盤に加賀谷コーチは「伸びてきている1、2年生も経験させよう」と主力選手を入れ替えた。しかし、いまいちかみ合わず、相手にも意地があり、26-24まで迫られた。ここで主力の一部選手をコートに戻し、第2Qを終えた時点では20点以上の差を付けた。「メンバーを戻したとしても、いつもなら追いつかれることがあるんですけど、そこから離せた。こういうパターンはなかった。明らかにトップリーグでの経験です」と加賀谷コーチは言う。

試合中、増田(14番)に声をかける永井

準決勝の樹徳戦は、前半を1点リードで折り返した。僅差(きんさ)だが、チームに慌てる様子は見られなかった。永井は「3Q目が始まる前、『0-0の気持ちで始める』ということを言っていました。結局やることは変わらないし、一人ひとりがやるべきことは、練習でやってきています」

第3Qが始まったとき、ポイントガードには増田が入った。永井が「トップリーグを経験して気持ちが芽生えてくれたのか、成長してくれているので自分的にも安心です」と評価する後輩。ここからチームは落ち着きを取り戻して完勝。新島学園との決勝も100-96という点の取り合いを制して、ウインターカップ出場を決めた。

永井が「一番の目標でした」という全国への切符をつかみ取った前橋育英。チーム力が底上げされたのは、トップリーグだったことは間違いない。(文と写真・井上翔太)

U18日清食品リーグバスケットボール競技大会