日体大・小川麻斗 ジャンピを欠き、試練の3年目 後輩の活躍を刺激に「勝たせる」
「いかにチームを勝たせられるか」。日本体育大学で3年目のシーズンを送る小川麻斗(3年、福岡第一)が直面している課題だ。8月20日に幕を開けた「第98回関東⼤学バスケットボールリーグ戦」では、現在6連敗中と足踏みが続く。それでも小川は、「1試合ごとに成長できていますし、この経験が最後のインカレにもつながってくる」と言い切る。
リーグ戦では好スタートも、アクシデント
開幕3連勝。日体大は計14チームによる2回戦総当たりの関東⼤学リーグ戦で好スタートを切った。入学当初から日体大のスピーディーな攻撃型バスケの中心を担ってきた小川は、今季は得点、アシスト、そしてゲームコントロールと、攻撃においてはフル稼働してチームの先頭に立つ。リーグ戦が開幕した当初は「不調気味」だったようだが、シュートタッチが悪ければ鮮やかなアシストで得点を演出し、大黒柱であるムトンボジャンピエール(2年、東山)とともにオフェンスの起点となって白星をもたらしていた。
しかし8月27日の第4節、チームの歯車が狂い始めた。日体大は白鷗大学との一戦を延長戦の末に落とし初黒星。さらには試合終盤にジャンピエールが左足を痛め、次節以降を欠場する事態に。12試合を消化した現在もコートに戻れておらず、日体大の成績は4勝8敗で9位。206cmの高さを失ったチームは、いつの間にか黒い丸が星取表を占めていった。
「大黒柱がいない中で戦わなきゃいけないという予想外の展開になってしまいました。正直、ジャンピ抜きの練習はあまりしてこなかったので……」。このアクシデントには、小川もショックを隠しきれない。その後の試合では一層得点の意識が強まり、小川はチームを勝たせようと半ば強引にシュートを打つ場面も少なくなかった。中央大学との試合では1人で38得点を稼いだが、最終スコアは74-76。計7回リングをくぐった3ポイントシュートも、敗戦のあとではむなしかった。
「ジャンピがいない分、ボールが止まって自分だけの1対1が増えている状況です。もっと周りを生かすプレーもしなきゃいけないけど、この数試合はできていないですね。中央大戦も自分が点を取っても勝ちきれなかったことが悔しいです」
思うように結果が出ない日々。けれど、下を向いているわけでない。「負けてはいますけど、1試合ごとに成長できているので大丈夫です」。そう笑みを浮かべる小川からは、「次の試合へ切り替えなければ」という焦りではなく、少しの余裕さえ感じられた。
さまざまな刺激を力に変えて
「今シーズンは自分が主体のチーム。得点を取らないといけないですし、簡単なミスもできない。今はどれだけチームを鼓舞して引っ張れるかということを意識してプレーしています」。3年生の小川がそう強く自覚しているのには、チームの誰よりも豊富な経験を積んでいるからだろう。
“バスケどころ”の福岡県出身。ミニバス時代から全国レベルのチームで頭角を現し、中心選手として活躍してきた。福岡第一高校では2年生から先発ガードを担い、インターハイ優勝とウインターカップ2連覇。選抜チームによる秋の国体でも頂点に立った。
日体大進学後も、その歩みは着実に前へと向けられている。ルーキーシーズンからB2リーグに所属するライジングゼファー福岡の特別指定選手としてプロの舞台に立ち、昨年のインカレ後はB1のサンロッカーズ渋谷から声がかかった。
「サンロッカーズはディフェンスのチーム。自分はディフェンスが苦手なので、ボールマンへのプレッシャーのかけ方など学んだ部分がたくさんありました。練習ではベンドラメ(礼生)さんや渡辺(竜之佑)さんという素晴らしいガードの方たちとマッチアップできました。思うようにプレーできないこともありましたけど、バチバチのプレッシャーディフェンスを経験できたことは大きかった」
リーグ戦開幕前の7月には、U21の3x3日本代表にも選出された。白鷗大の脇真大(3年、岡山商科大附)、早稲田大学の星川堅信(3年、洛南)らとともに国際試合も経験し、オフボールの動きやメンタルの保ち方など、新たな気づきを得たという。
小川が受けた刺激はそれだけではない。夏には母校・福岡第一高校の後輩たちがインターハイ優勝を飾り、高校時代にともにチームを日本一へ導いた河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)は、同い年にもかかわらずフル代表の最終12人のメンバーに入り、輝きを放った。
小川が何よりも感化されたのは、今の後輩の活躍だ。1、2年生は6月の関東大学新人戦(ルーキーズトーナメント)で優勝し、実に21年ぶりの快挙を成し遂げた。小川はそんな後輩たちの姿に頼もしさを感じつつも、こう思った。「先を越された……」
悲願の大学王者へ「いかにチームを勝たせられるか」
ここまで順風満帆なキャリアを歩んでいる小川だが、「日体大に来て3年目ですけど、自分はまだ一度も勝てていない」と大学での優勝を渇望している。
「後輩に先を越されたので、今シーズンこそ勝ちたい」と意気込む背番号23は、「いかにチームを勝たせられるか。それが今シーズン試される部分なのかなと思っています」と自らの使命を胸に、これからの戦いを見据える。
「自分としては点を取るときは取る、周りを生かすときは生かすという時間帯を作っていかなきゃいけないと感じています。みんなが自信を持ってプレーできるように、一戦一戦チームで戦ってもっと成長したいです。ジャンピが戻ってくるまでは苦戦するかもしれないですけど、この経験が自分としてもチームとしてもプラスになっていますし、最後のインカレにもつながってくると思っています」
優勝への道のりは、決してたやすくないからこそ挑戦の甲斐(かい)がある。小川麻斗、そして日体大は、このままでは終わらない。