B.LEAGUE U18 INTERNATIONAL CUP 2024決勝はドイツチームに北海道U18が挑んだ©B.LEAGUE
「世界に通用する選手やチームの輩出」をミッションに掲げるBリーグで、中でも力を入れているのがユース世代の育成と強化だ。2月10~12日には国立代々木競技場第二体育館で「B.LEAGUE U18 INTERNATIONAL CUP 2024」が開催され、新型コロナウイルスの影響が緩和された今大会は3年目で初めて、海外チームが参加。中国クラブとドイツクラブに、Bリーグ各クラブが相対した。
決勝はレバンガ北海道U18とドイツクラブU18の顔合わせに
Bリーグからは今年度の「U18 ELITE8 LEAGUE」上位3チームのレバンガ北海道U18(以下、北海道U18)、名古屋ダイヤモンドドルフィンズU18(以下、名古屋D U18)、千葉ジェッツU18(以下、千葉U18)に加えて、琉球ゴールデンキングスU18(以下、琉球U18)が参加。計6チームがまずは2グループに分かれて1日目に総当たり戦を行い、2日目以降は順位決定トーナメントが行われた。
2023年のワールドカップを制したドイツからやって来た、FRAPORT SKYLINERS U18(以下、FRAPORT U18)と北海道U18の顔合わせとなった決勝。メンバーの平均身長が194cmを超える相手に対し、サイズで劣る北海道U18は20-49で前半を終えた。齋藤拓也ヘッドコーチ(HC)は中心選手の内藤耀悠(てるちか)を第1クオーター(Q)の途中でベンチに下げ、「前半は選手たちのメンタルの部分が、ドイツチームよりも下回ってしまった」。ハーフタイムでは選手一人ひとりと話し込む様子が見られた。
「自分たちはトライしていかなきゃいけない」。そう確認し合うと、後半は北海道U18らしいプレーも見られた。阿部竜大、村上琥羽、赤根涼介のスリーポイントシュートが決まり始め、コートに戻った内藤も積極的に仕掛けてバスケットカウントを獲得。最終的に57-79で準優勝に終わったものの、齋藤HCは「ボールをもらってから何をするか考えるというのでは、もう通用しない。連動性の意識に加えて、シュート判断の早さが大事になると感じました」と振り返り、2023年のFIBA U19ワールドカップなどの国際舞台も経験している内藤は「第4Qの最後何分かは、やっと自分たちのやりたいことが少しできた。積極的に点数を取りにいく姿勢は少しずつでも出せたかなと思います」と話した。
海外挑戦を視野に入れる千葉U18関谷間がアピール
今大会にBリーグユースから参加した選手たちの中には、所属するトップチームの公式戦に出場できる「ユース育成特別枠」として選手登録され、すでにBリーグの舞台を経験している選手や、今年1月に開催された「B.LEAGUE U18 ALL-STAR GAME」に出場した選手も多い。
千葉U18の高校2年生、関谷間(せきや・あいま)は一風変わった経歴を持つ。高校1年のときはU18 川崎ブレイブサンダースに所属した後、「将来はNBAなど、海外で活躍しながら日本代表としてもプレーしたい」という夢に突き進むため、アメリカとのつながりがあり外国人選手とも体を合わせられるユースバスケットボール団体「Tokyo Samurai」へ。その後は「日本のプロとしても通用しないと、海外でも通用しない」という理由から千葉U18に移籍。いまはユース育成特別枠で選手登録されている。
千葉U18は今大会に参加したチームの中で、海外勢とは最も多い3試合を行った。グループリーグでFRAPORT U18に81-88で敗れたが、翌日の順位決定トーナメントで中国の広東宏遠U18に89-87で勝利。決勝進出をかけて再びFRAPORT U18に挑み、71-88。ドイツには2戦2敗だった。
「1日目にドイツと戦ったときは、相手が大きさの利点を使ってこなかったので、自分たちも攻めるときは攻め切れたんですけど、2日目のドイツは大きさでやられてしまったなと思います。中国はゾーンディフェンスで、アタックしづらかったので、カッティングを増やして、ゾーンを打開するようなオフェンスを意識しました。海外勢と試合ができるということは、自分たちの目標がより広がると思うので、すごくいい機会。素晴らしい大会だったと思います」と振り返った関谷。将来的に海外挑戦を視野に入れる中で、存在を思う存分にアピールした。
第一歩はユース出身選手が大学で活躍すること
琉球U18の須藤春輝や宜保隼弥といった高校3年生は、U18の1期生にあたる。ユースチームにはU15から参加しているが、高校進学の際は高校の部活動に進むか、琉球U18に進むか、悩んだこともあったという。
それでも須藤の場合は「プロに一番近い環境でバスケットができること、そして実際にプロを経験したコーチのもとで教わりたいという自分の気持ちを尊重して、ユースを選びました」。HCを務めているのは、琉球ゴールデンキングスのOBでキャプテンとしてチームを引っ張った経験もある与那嶺翼氏。今大会には「自分たちが3年間大事にしてきたコミュニケーション、アドバンス(進化)、エクスプレッション(表現)をもっと強調しよう」という思いで臨んだ。
格上の相手ばかりで勝利を挙げられず、海外勢とは広東宏遠U18と2試合を戦った。須藤が「中国チームにも世代の代表選手が数名いると聞きました。そのような選手とマッチアップして『フィジカルも結構強いなあ』と感じました。体の当て方もめちゃくちゃ上手でした」と振り返れば、宜保は「高さがあって、手も長いので難しかった部分があります。自分の持ち味であるシュートがなかなか打てずに迷ってしまった」と振り返った。ユースでの活動を終え、須藤は大阪体育大学へ、宜保は国士舘大学に進学して競技を続ける。
与那嶺HCは「高さがある相手にはフェイクを入れたり、体を当ててフリースローを獲得したり、国際試合で必要なスキルを体感できたことが一番の収穫だと思います。もしかしたら何年後かに、このメンバーが何らかの代表として再び対峙(たいじ)する可能性も十分にありますし、そのときに今回の経験が生かされると思います。本当に貴重な機会を提供してくださり、感謝しかないです」。大学に進むと、留学生のセンターもいる。「須藤が言っていた『三本柱』は、大学でそれまでも部活動を勝ち抜いたメンバーと対峙することで、より深みが増すと信じています。沖縄の県民性かもしれませんが、自分の思ったことをなかなか相手に伝えきれない『シャイ』な部分があります。その課題はU18での3年間で伝えてきたつもりです」。須藤がチームミーティングの場で「ユースが注目されるには、ユース出身のプレーヤーが大学で活躍することがまずは第一歩」と語っていたように、大学バスケ界ではまだまだ少数派となる先駆者たちが、今後どのような形で飛躍を遂げるかは、一つ注目すべきポイントだろう。
「ユースからプロに直結する仕組みを」
今回、中国チームとドイツチームを招聘(しょうへい)した理由は何か。Bリーグの強化育成・競技運営両グループマネージャーの黒田祐(たすく)さんは、まったく異なるバスケットボールのスタイルを肌で感じることを挙げる。「特にドイツがワールドカップで優勝した背景を調べると、国内の育成リーグがすごく盛んだったんです」
Bリーグでは2026年、「B.革新」を始動させる。トップチームの構造改革が行われるだけでなく、ユースでも選手たちの出口戦略を整えようと、その夢は膨らむ。「ユースからプロに直結する仕組みをもっと加速させる必要があると思っています。そのためには、高校の最後に海外勢との試合を経験するのではなく、もっと早い段階から、もっと多くのチームに経験させてあげたい」
来シーズンに向けて名古屋D U18の主力選手・高校2年生の今西優斗は「自分たちを信じて戦い続ければ、トップレベルの高校に勝てるチームがどんどん出てきて、それがユースとしてのスタンダードになると思っています」と誓った。Bリーグのミッション実現に向け、リーグ側も選手たちも挑戦の歩みを止めるつもりはない。(文・井上翔太)